書評『世界がもし100億人になったなら』
(スティーブン・エモット/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
・地球には何百万という種の生物がすんでいます。それをたったひとつの種が支配しています。わたしたちです
・わたしたちの人口はどうやってこれだけ増えたのでしょう
・わたしたちが依存している、 そしてわたしたちが急激に変えつつある、 このすべてがつながりあったシステムに、今何が起きているのか、よりくわしく見ていく必要があるでしょう
・食料の需要が増えていることはべつに意外ではありません。意外なのは、食料需要の増加のペースが、人口増加のペースを大きく上回っていることです
・現在、10億人以上の人々が、深刻な水不足の状況のもとで暮らしています
・2013年に製造される自動車の総数は、約1億台に上る見込みです
・現在、気候変動は加速しています
・人口が増え、人間の活動も増えた結果、わたしたちは今後、どのような困難に見舞われることになるのでしょうか、ほか
著者:スティーブン・エモット
 マイクロソフト・リサーチ計算科学研究所所長。オックスフォード大学計算科学客員教授、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ計算生物学客員教授、英国国立科学・技術・芸術基金栄誉フェロー。英ケンブリッジで様々な分野の研究者からなる学際的チームを率いて幅広い科学研究を指揮し、科学の基本問題に取り組む先駆的アプローチを開発している。
 研究分野は、分子生物学、免疫学、神経科学、植物学、気候学、生物地球科学、陸上・海洋生態学、保全生物学から、人工生命プログラミングや人工光合成まで多岐にわたる。

書評レビュー

人口の増加により我々が経験することになる困難とは

本書は、かのマイクロソフト・リサーチ計算科学研究所所長であり、科学者としても著名な筆者による、科学的見地から地球や我々の生活の在り方を考察した一冊です。同研究所では、気候や生態系を含む様々な複雑系について、人間が地球に与える影響を研究しています。

特に、この地球を取り巻く「複雑系」のシステムが、私たち人間がもたらした変化に対して地球がどのように反応するのか予測しようとしているそうです。

 まず、私たち人間がもたらした変化の前提として、筆者は確実な未来を次のように予測しています。「今世紀の終わりまでに、地球の人口は少なくとも100億人に達するでしょう。」それでは、人口が増え、人間の活動が増えてゆく結果、今後我々はどのような困難に見舞われることになるのでしょうか。

筆者が述べる、今後われわれ人間が経験するであろう困難とは、主に以下の5つになります。「土地問題」「食糧問題」「水問題」「エネルギー問題」「気候問題」。筆者はそれぞれを以下のように説明しています。

「土地問題は単純です。わたしたちはすでに、地球上に存在する農地を使いつくしているということです。にもかかわらず、食糧生産のための土地の需要は、二〇五〇年までに少なくとも2倍になるのです。」

「食糧問題も単純です。現在の農業のやり方で、そして現在の消費ペースで、100億人の人口を食べさせられる手段は、今のわたしたちにはありません。」

「今世紀末までに、地球上のかなりの場所で、使える水が満足に手に入らなくなってしまします。」

「エネルギー問題は単純です。予測される需要をまかなうには、今世紀末までに、エネルギー生産を少なくとも3倍に増やさやなくてはなりません。」

他の問題とはスケールの違う「気候問題」

筆者は、私たちが今まさに直面しつつある気候問題については、まったくスケールが違うと解説しています。これからの地球では世界の平均気温が4~6℃上昇する可能性が指摘されていることを受けて、筆者はこう述べています。

「世界の平均気温が4~6℃も上昇すれば、間違いなく大変な事態です。制御不能の気候変動が起こり、地球を全く違う状態に、それも急激に変えてしまいかねません。地球が地獄と化すでしょう。

そして、そうなるまでの間に、私たちは過去に類を見ないような異常気象、火災、洪水、熱波、農作物の不作、森林破壊、水ストレス。壊滅的な海面上昇などに見舞われることになるでしょう。」

衝撃的ですが、今世紀末にはバングラデシュが水没しているという予測すらあるそうです。本書は、読者をいたずらに怖がらせするために出版されたわけではありません。こうした今後の地球に関する予測は、多くの有識者によって議論されていますが、その議論の中身については漠然としか理解できていない部分も多くあると思います。

解決策に関するくだりでは、「わたしたちはもうダメだと思います。」と書かれたりもしていますが、これは単なる皮肉なのではなく、私たちに行動を促すための言葉です。本書では、現在の地球が抱える問題点がわかりやすく解説されていますので、地球の在り方について関心をもつにはちょうどいい一冊だと思います。

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