- 著者プロフィール
第2章 仕事に向き合う
第3章 新たな価値を生む
第4章 発想する力
第5章 「術」で終わらない
第6章 リーダーが考えること
第7章 私が関心を持っていること
1915年島根県生まれ。京都大学工学部卒業。神戸工業(前身・川西機械製作所、現・富士通)取締役を経て、シャープ(株)副社長、顧問を歴任。「経営の分かる技術者」の先駆けといわれている。
現在、NPO法人・新共創産業技術支援機構の理事長を務め、そこには技術や経営の情報プラットホームとして、多数の企業が参加している。
電卓の生みの親であり、シャープを日本有数の家電メーカーに育てあげた。液晶、太陽電池など常に日本の先端電子技術の開発に携わり、半導体産業の礎を築いた一人。
100歳になる現在も、経営者、技術者、学者などからの相談にのるなど忙しい日々を送っている。若い人への期待が高く、ベンチャー企業の指導育成に力を注いできた。ソフトバンク孫正義社長からも、「一番苦しい創業期を支えてくれた恩人」として感謝され、孫社長が毎年主催する「恩人の日」に招かれている。
米国アポロ功績賞、ドレスデン工科大学第一等功績賞、勲三等旭日中綬賞など内外の著名な賞を多数受賞。
著書に『「力強い指導者」になる46の伝言』(かんき出版)、『原点は夢~わが発想のテクノロジー』(講談社)、『人がやらない、人がやれない』(経済界)など多数。
書評レビュー
100歳現役の経営論、人生論
本日ご紹介するのは、数え年100歳にして現役で、経営者や技術者からの相談にのる忙しい日々を送るシャープ元顧問の佐々木正氏が、ビジネスや人生においてこれからの日本を背負う人に伝えたいメッセージをまとめた一冊。
著者は「電卓の産みの親」としても知られ、1915年に生まれ、現在の富士通取締役、シャープ副社長、顧問などを経て、現在はNPO法人 新共創産業技術支援機構の理事長を務める人物。
著者は全編を通して、大きく3つのことを伝えたいと語っています。これらが多くの成功と失敗を見つめてきた著者が重要だと考える人生の要素です。
「価値観が違うから、価値がある」
「自分を高める心を、忘れない」
本書では上記の3つの考え方を通じて、88のメッセージが、一つずつ見開きでまとめられています。それぞれのメッセージは短いながら、一言一言が味わい深い内容となっています。
「独創」から「共創」へ
著者は特に、上記2つ目でも語られている、価値観が違う人間同士が「共創」しあうことが重要だといいます。「共創」は著者が半世紀以上も言い続けてきたという概念で、次のように定義してています。
著者はこの「共創」こそが日本を活性化させる思想であるといいます。これがタイトルでもある「生きる力」や「活かす力」にもつながり、それこそ人間づくりから、組織づくりまで応用できるものです。
また、体力や思考力が衰えたとしても「共創」することで生涯現役でいられるなど、人生全般を通じて影響力の大きな考え方であることが示されています。
孫正義氏との出会い
本書ではまた、著者と時代をともにした経営者たち(松下幸之助やシャープ創業者の早川徳治、孫正義など)のエピソードも随所に盛り込まれています。
著者はベンチャー企業の支援・育成にも早くから取り組んでおり、その薫陶を受けた人物にまだ創業間もない時期のソフトバンクの孫正義氏がいます。
孫正義氏の自伝などを読まれた方はご存じかもしれませんが、21歳だった孫氏は、大学在学中に開発した、電子式翻訳機を当時の松下電器産業、シャープなどに売り込みをかけていました。
そしてシャープはそのソフトを高く評価し、2,000万円で購入しています。その時孫氏が営業をかけた人物がほかならぬ著者でした。この技術はのちの電子手帳や電子辞書へと進化していくことになります。著者は孫正義氏と出会った日のことは生涯忘れることはないとして、次のように語っています。
そしてその目力は、将来の姿をイメージし、そこにたどり着くまでのシミュレーションを繰り返して生まれた信念によるものだと語っています。
まとめと感想
本書では特に「共創」というキーワードをもとに、それらを経営や組織づくり、場づくりに生かすヒントがちりばめられています。
そもそも100歳にもなる人物の人生訓を学ぶ機会は多くありませんが、さらにビジネスという観点ではなおさらだと思います。その意味でも非常に興味深く読むことができる一冊です。
また、人生の後半に入ったときにどうすればよいのかについても言及が多い一冊ですので、本書のターゲットである若い読者以外にも参考になる一冊だと思います。ぜひ手に取ってみてください。
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