書評『ダボス会議に見る 世界のトップリーダーの話術』
(田坂 広志)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1話 世界のトップリーダー2500名が鎬を削るダボス会議という場
第2話 プロフェッショナルの世界では、言葉を発する前に勝負が決まる
第3話 社会貢献家としての人格で壇上に立つビル・ゲイツ
第4話 当意即妙に聴衆に語りかけるブレア・イギリス元首相
第5話 一瞬で場を制したサルコジ・フランス大統領
第6話 聴衆の不評を買ったメドベージェフ・ロシア大統領
第7話 鮮烈なデビュー戦を飾ったキャメロン・イギリス首相
第8話 ボディ・ランゲージで敗れたプーチン・ロシア首相
第9話 「思想的リーダー」を演じる温家宝・中国首相
第10話 リラックスして人を惹きつけるクリントン・アメリカ元大統領
第11話 最後は情熱的スピーチで終わるゴア・アメリカ元副大統領
第12話 聴衆の涙を誘ったブラウン・イギリス首相
第13話 一言で相手を切るサッチャー・イギリス元首相
第14話 英語でのスピーチが批判されたユドヨノ・インドネシア大統領
第15話 聴衆の目から魅了するラガルド・IMF専務理事
第16話 素朴な英語で説得力を感じさせるムハマド・ユヌス
第17話 世界の尊敬と信頼を集めるシュワブ・世界経済フォーラム会長
第18話 「話術」の8割は「言葉を超えたメッセージ」
著者:田坂 広志
1951年 生まれ。1974年 東京大学工学部卒業。1981年 東京大学大学院修了。工学博士(原子力工学)。同年、民間企業入社。1987年 米国シンクタンクBattelle Memorial Institute客員研究員。1987年 米国Pacific Northwest National Laboratories客員研究員。1990年 日本総合研究所の設立に参画。取締役・創発戦略センター所長等を歴任。現在、同研究所フェロー。2000年 多摩大学大学院教授に就任。社会起業家論を開講。2000年 21世紀の社会システムのパラダイム転換をめざす、シンクタンク・ソフィアバンクを設立。代表に就任。2003年 社会起業家の育成・支援を行う、社会起業家フォーラムを設立。代表に就任。2005年 米国Japan Societyより、US-Japan Innovatorsに選ばれる。2008年 ダボス会議を主催するWorld Economic ForumのGlobal Agenda Councilのメンバーに就任。
 2009年 この年より、TEDsterとしてTED会議に毎年参加。2010年 4人のノーベル平和賞受賞者が名誉会員を務める世界賢人会議Club of Budapestの日本代表に就任。2011年 東日本大震災と福島原発事故の発生に伴い、内閣官房参与に就任。総理大臣の特別顧問として、原発事故対策、原子力行政改革、エネルギー政策転換に取り組む。2012年 民主主義の進化と深化をめざす、デモクラシー2.0イニシアティブの運動を開始。代表発起人に就任。2013年 経営者やリーダーが「変革の知性」を学ぶ場、「田坂塾」を開塾。

書評レビュー

世界のトップリーダーが品定めされる「ダボス会議」

本書は、リーダーシップ教育で著名で、社会起業家大学も主宰する田坂広志氏が、世界のトップリーダーが集う「ダボス会議」でのスピーチから、リーダーが学ぶべき「話術」を解説した一冊。

ダボス会議は、年に一回、スイスのダボスで数日間に渡り開催され、政・財・官界、市民団体、アーティスト、思想家など世界のトップリーダー2,500名が一同に会し、公式、非公式問わずさまざまなセッション(会議)を行う場として知られています。

著者はこのダボス会議が、ただの講演や商談、会合の場ではなく、「世界のトップリーダーが、値踏みされ、品定めされる品評会」にもなっているという点を指摘しています。

例えば、あるCEOがパネルディスカッションに参加すれば、観客にはジョージ・ソロスのような投資家からエコノミスト、アナリストまで世界的に影響力のある人物がそろっています。

「パネル討論での発言が高い評価を得るならば、その経営者の評価だけでなく、企業の評価や株価にもプラスの影響がある。しかし、もしその発言を通じて評価を落としたならば…。その怖さは口に出して言うまでもないだろう。いわんや、企業のリーダーではなく、国家のリーダーであれば、このことの意味は、さらに大きい」

本書では、このような真剣勝負の場であるダボス会議で、世界のトップリーダー達(ビル・ゲイツ、ブレア首相、ラガルド、温家宝中国首相など)のプレゼンテーションをもとに、「人格」「位取り」「胆力」「余韻」など、スキルにとどまらない「15の話術」が解説されていきます。

ビル・ゲイツに見る「多重人格のマネジメント」

たとえば、本書でビルゲイツのスピーチが例に挙げられています。著者はビル・ゲイツのスピーチから学ぶべきものとして、「多重人格のマネジメント」というコンセプトを挙げています。

これは、ビルゲイツ自身が、かつての冷酷なマイクロソフトの辣腕経営者としての人格と、現在世界最大の基金を有する「ビル&メリンダ財団」での社会貢献家(フィランソロピスト)としての人格を使い分けている、という指摘です。

よくスピーチでは「演じる」ということが言われますが、実はスピーチにおいては、この「人格の使い分け」が極めて重要であるとして、次のように語っています。

一流の話者は、ただ演じるのではなく、「その人物の人格」が、自分の中から現れてくる。そして、その人物になり切っていく

これを著者は「多重人格のマネジメント」と呼び、「話術」のみならず、「経営」や「リーダーシップ」におけるこの能力の重要性も実例をあげながら解説していきます。

まとめと感想

本書では世界のトップリーダー達の「話術」を切り口にしていますが、上記のように、トップとしてのマインドや立ち居振る舞い、胆力やスタンスなどまで踏み込んだ内容が特徴となっています。

著者は、聴衆が見ているのは、実際にその人物の話を聴きながらでしかわからないもの(=スピーチや発言をするトップリーダーの「人物」)であると指摘しています。

そこで求められているのは「言葉でメッセージを伝える技術」ではなく、「言葉を超えたメッセージを伝える技術」であり、「何を話すかではなく、誰が話すか、そこでは人格のすべてが問われる」という指摘は言い得て妙だと思います。

それほど分厚い本ではなく、スピード感をもって読み進められ、スピーチやプレゼンテーションだけでなく「経営」や「リーダーシップ」に興味がある方にもヒントの多い一冊です。

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