書評『「自分」で考える技術』
(鷲田 小彌太/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
思考の技術 基礎篇
第1講 自分で考える時代が始まった
第2講 情報時代は、考える人間をつくる
第3講 教養‐普通知‐の時代が始まった
第4講 歓迎、「モラトリアム」の時代
第5講 「アート」から「テクノロジー」へ)

思考の技術 実践篇
第6講 考えるための読書術
第7講 話すと書くとはおお違い
第8講 書く技術
第9講 マニュアルで考える
第10講 飛んで考える

著者:鷲田 小彌太
1942年、札幌市生まれ。大阪大学文学部哲学科卒業。同大学院文学研究科哲学・哲学史専攻博士課程満期退学。三重短期大学教授を経て、札幌大学教授。専門は、哲学、倫理学。2012年退職。

書評レビュー

情報が氾濫する現代において重要な「自分で考えること」

今回ご紹介するのは、思考のプロである哲学者 鷲田小彌太氏が、世の中に溢れている情報を整理し、考えを的確にアウトプットするための思考整理術を紹介した一冊です。

スマートフォンやタブレットをはじめとする情報機器の発達によりインターネットがより身近になったことで、我々を取り巻く情報環境は大きく変わりました。

世界各国、様々なジャンルの情報がオンライン上で自由に入手できるようになり、何か分からないことがあったらその場でスマートフォンを利用し必要な情報を検索する、これはもはや日常の光景となっています。

一方で、この状況を「情報の氾濫」と称し、批判的な論調をとる人も少なくありません。しかし、哲学者として「思考」することの重要性を知っている著者は、この「情報の氾濫」自体は悪いことではないといいます。

むしろ、今まで私たち人間が書物などを利用しながら苦労して行っていた、「深く」「広く」考えることを機械が代行してくれることになったため、より優れたアイデアを生み出すことができるようになったと述べています。

つまり、母数が多ければ多いほど、思考が広がる可能性も高まっていくという考え方ですね。

もっとも、ただ単に情報が氾濫している状況では、思考は広がりをみせません。そこで必要になるものを著者はこのように述べています。

『思考する人間に一番必要なのは、そのデータを的確迅速に利用することです。的確・迅速な利用が今日最も必要とされる思考技術なのです。利用などというと、思考とは別物と思われてしまいます。しかし、そうではないのです。』

考えるための読書術

また、著者は、思考力を高める上で、「読書」の重要性は依然として高いと述べています。最近では、情報ソースの多様化や手軽さ・迅速さなどの点で、「読書」の魅力が以前と比較して低下しているのは事実かもしれません。

もっとも、私たちがインターネットなども含め情報に触れる時は、その情報を「読み取る」という行為が発生しており、この「読み取る」という行為を強化するためには、「読書」の影響力を無視することはできないと著者は述べています。

『聞くにせよ、見るにせよ、触れるにせよ、味わうにせよ、何事かを「読み取る」(reading)のです。その意味でいえば、考えることと読むこととの距離は、いぜんとして一番近いといっていいのです。

いまなお、読書、とりわけ書物を読むこと(reading books)でなければ、えることのできない思考の技術は絶大なのです。(中略)いい書物は呼吸しています。それが書物の中から抜け出して、私たちの魂をとらえるのです。そこに思考のドラマが展開されるということです。』

たとえば「忘れる読書」など、詳細は本書に譲りますが、哲学的な観点から「思考」を深めるためのユニークな読書術が紹介されているため、読書に対する新しい発見を得ることができるのではないかと思います。

まとめと感想

本書では著者が哲学者ということもあり、「思考の技術 基礎編」では哲学者としても名高いソクラテスやデカルトの思考法を紹介するなど、教養としての哲学にも触れることができる内容になっています。

また、「思考の技術 実践編」では、「書く」ことによる思考の整理術や思考を一段高いところに飛躍させる方法など、すぐにでも始められる思考整理術が数多く紹介されています。

哲学的なアプローチという新しい切り口から「考える技術」を解説した一冊で、これまで「思考整理術」に関する類書を多く読んできた方でも楽しめる一冊だと思います。ぜひ手に取ってみてください。

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