書評『絶対話力 』
(土岐 大介/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
< プロローグ>外資系金融グループで学んだ大切なこと
【PART1】つかむ、伝える、決めさせる―3つのステップ
ステップ1:心をつかむ――信頼関係を築く五つの段階
ステップ2:大切なことを伝える―相手に役立つ情報とは何か
ステップ3:決めさせる――「クロージング」=詰めの技術
【PART2】絶対話力を鍛える―「1分話力」トレーニング
「絶対話力」=「1分話力」+「10秒話力」
「1分話力」+「10秒話力」の三段活用トレーニング
【PART3】絶対話力をチームに広げる―営業マネージャーの役割
< エピローグ>最も大切な5つの軸――営業の本質
著者:土岐 大介
一橋大学大学院国際企業戦略研究科客員教授、東北大学特任教授(客員)、金沢工業大学知的創造・経営研究所客員教授、筑波大学大学院システム情報工学研究科非常勤講師、株式会社FPG顧問
1961年千葉県生まれ。市立習志野高校1年生の時、米国に1年間留学。筑波大学第三学群・社会工学類卒業後、米国オハイオ州ケース・ウエスタン・リザーブ大学院に留学、修士号取得。日本鋼管、日興證券を経て、90年ゴールドマン・サックス証券会社東京支店入社。株式先物などのデリバティブ営業で金融機関を担当。
2000年から株式部門の共同責任者となり、経営委員会に参加。2001年から1年間は共同東京支店長兼務。
2002年から2011年までゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの代表取締役社長として、年金基金、金融法人向けの運用や個人投資家向け投資信託などの提案営業を手がける。
98年ゴールドマン・サックスグループ マネージング・ディレクター、2006年同グループ パートナーに就任。

書評レビュー

今回ご紹介するのは、世界有数の投資銀行ゴールドマン・サックス・アセットマネジメントの元トップにして、過酷な外資系金融機関の営業の第一線で20年以上も活躍した著者による、営業話術(トークスキル)と営業の心得を解説した一冊です。

外資系金融機関で成功を収めた秘訣 「絶対話力」

ゴールドマン・サックスと言えば、ニューヨークの「ウォール街」やロンドンの「シティ」といった世界の金融マーケットを代表する外資系金融機関として有名です。

著者は、そんなゴールドマン・サックスの中でも花形である投資銀行部門ゴールドマン・サックス・アセットマネジメントで代表取締役社長を務めた人物。

また、外資系金融機関の中でも特に業務が過酷と言われる営業畑で、20年以上も一貫してキャリアを積み成功を収めてきたというのですから、そこには何か秘訣がありそうですよね。

本書は、著者自身のセールパーソンとしての経験や営業心得を紹介した上で、その成功の秘訣である、営業話術(トークスキル)「絶対話力」を解説するという構成になっています。

「絶対話力」=「1分話力」+「10秒話力」

外資系金融機関で20年以上も営業を経験していた著者ですが、意外なことに、営業に配属された当初は、人見知りな性格から人と話すことに苦手意識を持っていたそうです。

そんな筆者の転機となったのは、非常に多忙なファンドマネージャーの営業担当になったときでした。

毎日20分しか話すことができない、かつ、多忙なため自分に有用な情報がないと何も言わずに10秒で電話を切られてしまうという厳しい状況の中で、著者は相手が知りたいであろう3つのポイントを「10秒間」の会話に入れることにしました。

このファンドマネージャーのケースだと、「①いま何が起きているか」、「②なぜ、それが起きたのか」、「③ではどうすればいいのか」となります。もっとも、なかなか通常のビジネスシーンにおいて、「10秒間」で3つのポイントを伝えるのは難しいですよね。

そこで著者は、クライアントとの日常的な会話から、公式なプレゼンテーションなどのビジネスシーンでは、「1分間話力」を活用した方がいいと述べています。この「1分間」で、ただ単に3つの論点を解説すればいいというわけではありません。「1分間話力」のもつ2つの重要な働きを意識する必要があるのです。

『一つ目の働きは、発信するための「1分話力」です。つまり、提供する商品やサービスに関する情報やお客様が必要としている情報をこちらから伝えるための「1分話力」で、ここではわかりやすさや簡潔さが重視されます。』
『二つ目の働きとして、推測するための「1分話力」があります。(中略)それは言ってみれば、相手の考え方や嗜好、そして決め方のクセなどを推測するための「1分話力」です。』

なお、詳細は本書に譲りますが、「10秒間話力」は商談で重要なクロージングの時に最も力を発揮します。

本書では、他にもセールスパーソンを3つの類型に分けた「1分話力」の参考例や、明日からでも実践できるように、具体的なトレーニング方法も紹介されています。

まとめと感想

表題でもある「絶対話力」に加え、「営業の3ステップ」をはじめとする営業の心得・ノウハウもしっかりと紹介されていますので、営業スキル全般を幅広くカバーした一冊と言えると思います。

「もっとも大切な5つの軸-営業の本質」などを読むと、外資系金融会社だからといって特別なことをしているのではなく、むしろ、クライアントに信頼してもらい、「WIN – WIN」の関係を築くという、まさしく「営業の本質」に苦心している様子が見て取れます。

本書で紹介されている「絶対話力」ですが、これは小手先のテクニックではなく、営業の3ステップ「心をつかむ」「伝える」「決めさせる」を円滑に進めるための重要なスキルです。そしてその本当の目的は、やはり会話を通じたクライアントとの信頼関係の構築にあるのではないでしょうか。

さまざまなステークホルダーとの信頼関係の築き方に参考となる内容でもありますので、営業・セールスに携わる方のみならず、ほぼ全てのビジネスパーソンに参考になる一冊となっています。

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