書評『歴史という武器』
(山内昌之/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
はじめに 今後の日本と世界はどうなるか―「歴史という武器」から学ぶ
第1章 競争、嫉妬、憎しみの宰相論―国内政局編
第2章 グローバル権謀術数の裏を読む―国際情勢編
第3章 動乱と戦争から叡智を学ぶ―熾烈な歴史編
あとがき バヤズィト一世から小松帯刀、そして野田佳彦から安倍晋三まで
著者:山内昌之
1947(昭和22)年、札幌生まれ。歴史学者。東京大学名誉教授。国際関係史とイスラーム地域研究で、サントリー学芸賞、毎日出版文化賞(2回)、吉野作造賞、司馬遼太郎賞などを受賞。2006年、紫綬褒章。2012年まで東京大学大学院教授。現在、明治大学特任教授、三菱商事顧問とフジテレビジョン特任顧問も務める。

書評レビュー

本日紹介する一冊は、古今東西の歴史から学ぶ「歴史的思考法」を武器にビジネスパーソンが学ぶべき歴史的教養を解説した一冊。著者の山内昌之氏は、国際関係論、イスラーム研究などを専門とする歴史学者で、東京大学名誉教授、明治大学特任教授、三菱商事顧問なども務める人物。

第一章は、岸信介から菅直人、安倍晋三といった国内政治を、そして第二章では国際情勢編として、オバマからアラブの春まで、グローバルな政治シーンの裏表を専門家の著者ならでの視点から解説していきます。

そして最終章は、日本、特に明治維新から太平洋戦争に至るまでの歴史をひもとき、その教訓から現在に何を生かすべきかを論じています。

「歴史という武器」とは

著者はまず、「歴史という武器」というタイトルの真意ともなっている、ビジネスパーソンが歴史を学ぶ意義について以下のように説明しています。

『日本人にとって大事なのは、抽象的な理屈や議論がともすれば空理空論やソフィスト的な修辞に終始するのを警戒し、「空言」よりも具体的な事実つまり「行事」に即して考える歴史的思考法である。

これは社会人として歴史を学ぶことで人間に深みと教養を与えるからだけではない。こうした一般的な意味を超えて、経営力や企画力の基盤となる発想の根拠を豊かにする武器こそ、歴史的思考法だからである。』

そして、高等教育で必修となっている世界史の知識は最低限度必要であり、なおかつ日本人が日本史を知らずして世界史(イスラム史やフランス史)を学ぶことは不自然でさを感じざるを得ない、として

「高校で日本史を履修しなかったという言い訳は、国際舞台で活躍する人材にはふさわしくない」とある種手厳しく論じています。

学生時代、「歴史」というものからそっと距離を置いた人間にしてみると、どきっとさせられる内容です。

そして、昨今も話題にあがることが多い、日中韓の歴史認識の相違に関しては、「歴史」とはそもそもイデオロギーや価値

観と不可分であり、共通認識が成り立つのは政治イシューから離れた文化史など、限定された領域であろうと看破しています。

首相の器量

本書で印象に残った内容をひとつ紹介します。首相の資質に言及した部分で、首相の「器量」ともいうべきものです。著者は、ひとかどの首相には「自らの政策の結果や影響に対する畏怖心」が必要であるとして次のように説明しています。

「どれほど国家と国民の未来のために必要な施策であろうと、それで不幸になる人々が出るかもしれない。こうした畏怖や逡巡をもちつつ『それでも自分が責任をもって決断する』という苦しい使命感が首相の職にはつきまとう。」

そして政治家のそのような熟慮はおのずから哲学的風貌として顔に現れると説き、小泉元首相からはこのような苦渋に満ちた雰囲気があまり感じられないとも指摘しています(たしかに透徹した表情の印象が強いです)。

これは政治の世界だけでなく、ビジネスでもスポーツでも本当にリーダーシップのある方から感じる「凄味」や「責任感」、「意志の強さ」などの源泉なのではないでしょうか。

まとめと感想

本書では一遍一遍はエッセイ的にまとめられていますが、古今東西の箴言や、歴史的事象などが随所で紹介されており、通読するとマクロな歴史・政治認識が得られる一冊です。

歴史上の人物のリーダーシップについての内容も多く、歴史や政治、またリーダーシップを学びたい方にお薦めできる内容です。

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