書評『ヤバい予測学 ― 「何を買うか」から「いつ死ぬか」まであなたの行動はすべて読まれている』
(エリック・シーゲル/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
序章 予測効果―何のために人間の行動を予測するのか
第1章 予測分析の始動―株取引の予測システムに全財産をつぎ込んだら
第2章 プライバシーの攻防―小売企業も雇い主もあなたの秘密を推測している
第3章 データ効果―個人のブログから集団の感情を予測する
第4章 学習する機械―チェース・マンハッタンの住宅ローン予測の内幕
第5章 アンサンブル効果―おすすめ映画とクラウドソーシングと過熱する予測
第6章 人工知能の実現―IBMの「ワトソン」がクイズ王に挑戦する
第7章 数字による説得―マーケティングを革新するアップリフトモデリング
著者:エリック・シーゲル
元コロンビア大学教授。予測分析(プレディクティブ・アナリティクス)業界の第一人者として、講演や教育活動などで活躍。世界各地で開催される予測分析カンファランス「プレディクティブ・アナリティクス・ワールド(PAW)」と「テキスト・アナリティクス・ワールド」の創設者で、プレディクティブ・アナリティクス・タイムズの編集主幹。

書評レビュー

「予測分析」とは何か

本書『やばい予測学』は、データから未来の事象を予測する「予測分析」について、多くの事例をもとに解説した一冊です。昨今、ビッグデータが世を賑わせるようになり、統計学に関する著書も多数出版されるようになってきました。

本書で紹介される「予測分析」とは、この統計学とコンピュータサイエンスを基盤とした未来予測技術であり、筆者は『経験(データ)から学習して個人の未来の振る舞いを予測し、よりよい決断に導く技術。』だと定義しています。

筆者は、この決断の積み重ねがさらなる個人の経験的決断を促し、それが集まることで、より大きな(社会的な)予測分析につながっていく、と主張しています。そして、あらゆることが予測可能となるのです。

『私たちは毎日、無数の決断を下す。電話をかける、メールを送信する、承認する(中略)、予測分析は、データに導かれて個人の決断を経験的に促す手段、とも言えるだろう。日常の無数の小さな質問に答えることによって、社会の大規模な機能の効率をどうすれば向上させるかという、最大の質問に答えているのだ。』

「予測分析」と「予想」の違い

上記の考え方を踏まえ、筆者は、「予測分析」と「予想」は、下記の観点から異なるものだと解説しています。

『予想は、経済はどのように動くかや、オハイオ州ではどちらの候補者がより多くの票を獲得するかなど、マクロレベルで予測を統合したものだ。

予想がネブラスカ州で来月アイスクリームがいくつ売れるかという総数を推測するのに対し、予測技術はネブラスカの住民の誰がアイスを頬張る可能性が高いかを、ひとりひとりについて判定する。』

つまり、予測分析は確かな経験的証拠をもとに、さらに精緻に「データ主導」の意思決定を目指すものと言えます。

「予測分析」の5つの効果

また筆者は、この「予測分析」には、以下に紹介する5つの効果に注目する必要があると解説しています。

①予測効果
小さな予測は大きな効果をもたらす

②データ効果
データは常に予測する

③帰納効果
人間の技が機械学習を機能させる。人間の創造性を加えて設計した戦略を、コンピュータのプログラムで補完すれば、未知の事例に対してもパフォーマンスを発揮する予測モデルを構築できる

④アンサンブル効果
アンサンブルに参加した予測モデルは互いの限界を補い、アンサンブルを構成する個々のモデルより、全体として正確な予測をする

⑤説得効果
個人を説得できるかどうかは観察できないが、アップリフトモデリングによって予測できる。アップリフトモデリングは、2つの相反する働きかけの結果を記録した2つの訓練データセットをもとに、予測モデルを構築する

詳細は本書に譲りますが、まさに「ビッグデータのその先」としての「予測分析」の可能性が理解できる内容となっています。

まとめと感想

本書は400ページ超の本ですが、上述の「予測分析」の5つの効果も含め、事例を用いわかりやすく解説されています。

序文に『定量的な思考に慣れていない「非定量的な」人にこそ本書を読んで欲しい』とあるように、データ分析に触れたことがない方にも、読み物として理解が進む内容だと思います。マーケティング観点からも、「ビッグデータのその先」と目される「予測分析」を理解するにはピッタリの一冊です。

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