書評『「社長」を狙うか、「社畜」で終わるか。』
(吉越 浩一郎/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
序章 サラリーマンは「社長」を目指すとうまくいく
第1章 社長を目指して得られたもの―「19期連続増収増益」を達成するまで
第2章 社長を目指すと働き方はこう変わる
第3章 社長を目指すと自然に身につく「9つの仕事術」
第4章 社長を目指すと「逆境」に強くなる
第5章 社長を目指す人の世の中の見え方
終章 日本人とアントレプレナーシップ―『2050年の世界』を破り捨てるとき
著者:吉越 浩一郎
1947年千葉県生まれ。ドイツ・ハイデルベルク大学留学後、上智大学外国語学部ドイツ語学科卒業。極東ドイツ農産物振興会、メリタ・ジャパン、メリタ・カフェを経て、1983年にトリンプ・インターナショナル(香港)に入社。1987年にトリンプ・インターナショナル・ジャパンの代表取締役副社長、1992年に同社の代表取締役社長に就任。代表取締役在任中に19期連続増収増益を達成。2004年に「平成の名経営者100人」(日本経済新聞社)の1人に選出される。2006年に退任し、現在は吉越事務所所長。

書評レビュー

社長を目指せ!

元トリンプ・インターナショナル社長吉越浩一郎氏が、全てのビジネスパーソンは社長を目指すべきである、という持論と、それに必要なスキルとスタンスを説いた一冊。著者の吉越氏は、在任時の19期連続増収増益や、残業ゼロ、デッドライン仕事術など(参考:『残業ゼロの仕事術』)、仕事術への評価も高い方ですが、本書は特にマインド面への言及も多い「檄文」ともいえる一冊です。

本書のメインメッセージは「すべてのビジネスパーソンは(企業で働く以上は)社長を目指せ!」というものです。ではなぜ「社長を狙って働く」必要があるのか?

まず著者は「出世したくないという社員が6割」という調査結果をあげて、いわゆる「草食系」の若者が増えていることを危惧し、「立身出世を望むというのは、動物としてごく自然なことである」と説いています。

また、本人の成長の上でも、安定志向の人こそ社長を目指すべきである理由として、以下のように述べています。

「偉くならなくてもそこそこ仕事のできる部下でいれば、安定だけは手に入ると考えるのは、とんでもない誤解である。そこそこの仕事ができても、会社の業績が悪ければ、安定もへったくれもないからだ。究極の安定がほしいなら、社長が務まるだけのリーダーになって、自分で会社全体の業績を継続的にあげていく以外にはない」

「社長」に不可欠な要素

では、社長を目指すためには何が必要となってくるのでしょうか。それを吉越氏は「アントレプレナーシップ」「倫理観」の2つであると述べています。

・アントレプレナーシップ
著者は「アントレプレナーシップ」をいわゆる起業家精神ではなく、以下のように定義しています。

「常に全体最適を考えて最適なジャッジメントをくだせる人間」

つまり、「部分最適」を求める社員を説得し、あくまで「全体最適」という社長にしかできない判断を実行し続ける力です。たしかに、短期目標と中長期目標など、相反する理屈を「止揚」させて、最適解を出すことは、経営者視点がなければできないものだと思います。

・倫理観

また「倫理観」については、吉越氏が経験した「権力を自分のために使ってしまい失敗した」経営者たちのエピソード紹介しながら、以下のように述べています。

「人間というのは弱い生き物である。性悪説ではなく『性弱説』こそ人間の本質であると誰かが言っていたが、そのとおりだと私も思う。だから、すべてのビジネスパーソンは、誘惑に負けないよう日ごろから自分を律しなければならない。そして、社長を目指す人は、その何十倍も厳しくあることが求められる。」

社長を目指すと身に付く仕事術

そして、社長を目指すと自然に身に付く力が「9つの仕事術」として挙げられています。

1.リーダーシップ
2.マネジメント力
3.問題解決力
4.危機管理能力
5.交渉力・コミュニケーション力
6.先見性
7.判断力
8.秘書活用力
9.大局観

詳細は本書に譲りますが、それぞれエピソードを交え、かみくだいて説明されており、「アントレプレナーシップ≠起業家精神」だったように、リーダーシップ=いかなる時も結果を出す力」と定義するなど、独自の解釈が特長的な内容です。

まとめと感想

本書ではほかにも「自分の仕事をPL(損益計算書)で管理する」「20代は上司への不平不満をストックしておく」「30代は教えない」など、リーダーシップ・マネジメント観点からも参考になる内容。一貫して流れる「ハングリー精神」と、歯に衣着せぬ物言いが爽快感のある好著です。ぜひ手に取ってみてください。

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