書評『成功は“ランダム”にやってくる!』
(フランス・ヨハンソン/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
1.予測不可能な世界(成功の法則は、ある。
‐セリーナ・ウィリアムズ強さの秘密
‐ノキアはなぜ迷走したのか?
‐空前のベストセラー小説『トワイライト』が生まれた理由
‐ランダム戦略
2.チャンスをつかめ!
‐ダイアン・フォン・ファステンバーグの三つのランダム戦略
‐クリック・モーメントとは何か。
‐クリック・モーメントを起こす方法
‐目的ある賭けとは何か。
‐目的ある賭けをする方法
‐複雑エネルギーとは何か。
‐複雑エネルギーを利用する方法
著者:フランス・ヨハンソン
 スウェーデン出身。アメリカ東部のブラウン大学を卒業後、ソフトウェア会社を設立。CEOを務めた後、ハーバード・ビジネススクールにてMBAを取得。医薬品会社、ヘッジファンド、そしてイノベーション企業であるメディチ・グループを設立した。現在はアメリカ最大の企業の重役から発展途上国の村人まで、世界中の人々を前に講演を行うだけでなく、執筆・コンサルティングを行う。

書評レビュー

「偶然」や「運」を科学的に味方につける

本日紹介するのは、コントロール不可能と考えられている「偶然や運」を戦略的に取り込むための手法を科学した一冊。著者はハーバード大学MBAなどを経て複数の企業を設立、現在ではコンサルタントとして活躍しているフランス・ヨハンソン氏で、イノベーションを説いた「メディチ・インパクト」という著書もあります。

本書のテーマは大きくは以下の二つであると書かれています。「一つは、成功は私たちが考えているよりはるかにランダムに起こるということ。もう一つは、個人や組織がランダムに起きる成功をつかみ、うまく利用するためにできることはあるということだ。」

実は、いわゆる「成功物語」の多くが、「偶然」や「運」によってもたらされたものであるということが豊富な事例を用いて紹介されています。

それゆえ、成功を狙って計画するよりも、「偶然のチャンス」を最大限活用するほうが、賢い戦略である、というのが本書の趣旨になります。

このような考え方自体は、「セレンディピティ」やキャリア理論の「計画された偶発性」やなどで目にしますが、本書では多くの企業や成功者の事例から、より理論立てて解き明かそうとしている点が特色です。

ランダムにおこる成功を意図的に起こすには

著者は、ランダムな成功を意図的に起こしていくために、以下の3つのステップが必要であると述べています。

1.「クリック・モーメント」を生み出す
2.「目的ある賭け」をする
3.「複雑エネルギー」を利用する

この書評では特に重要と思われる、クリック・モーメントについての概要を紹介します。

クリック・モーメントとはなにか

クリック・モーメントとは聞きなれない言葉ですが、以下のように定義されています。

「私たちは毎日たくさんの人と出会い、さまざまな印象を持つが、人生が大きく変化することはほとんどない。(中略)

しかし、たとえそのときは気づかなくても、新しいものに目を向けさせ、違う道を選ばせ、すべてを変える決断を下させる瞬間が、わずかだが存在する。(中略)私はこのような瞬間をクリック・モーメントと名づけた。」

クリック・モーメントを意図的に起こすには

ではどうすれば、このクリック・モーメントを意図的に起こしていけるのか。著者はそのひとつとして「好奇心」を重視することを挙げています。

「なぜ好奇心はこれほどクリック・モーメントを生み出しやすいのだろうか。それは何かおもしろいことが起こっていると直感があなたに告げる時の手段が、好奇心だからである。

『何かおもしろいこと』が何なのかはわからない。だから好奇心は、ピースがつながるまで探索しつづけろとあなたを駆り立てる。スティーブン・ジョンソンは著書『よいアイデアはどこから生まれるのか(Where Good Ideas Come from)』のなかで、これを予感と呼んでいる。」

よく言われる「好きなことを追求したほうが大成する」ということも、このような裏付けがあると考えると納得できるものだと思います。

また、詳細は本書に譲りますが、クリック・モーメントを起こした後の「2.目的ある賭けをする」という章では、賭け(トライアル)していく中で「何度も賭ける」「小さく賭ける」ことの重要性が説かれています。

そして、「3.複雑エネルギーを利用する」では、複雑系の考え方に近いものですが、まったく予期できない出来事の特徴と、それらを利用する手法が語られています。

まとめと感想

この書評では駆け足で概要を紹介しましたが、さまざまな成功事例が、実は意図せぬ成功であったというエピソードが多く、読み物としても面白い内容です。

たとえば、Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグが、ユーザーが1,000万人を超えた段階でも、実はFacebookではなく、同時期に進めていた「ワイヤーホグ(ファイル共有)」というサービスの方に事業的価値を感じていたというエピソードがあり、驚きました。

また、小さく賭ける、何度も賭ける、という内容はリーン・スタートアップやアジャイル開発にも通じる考え方だと思います。いかに成功するかという自己啓発的内容もありますが、新規事業やイノベーションに興味関心がある方にも参考になる一冊だと思います。

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