書評『決定力! 正解を導く4つのプロセス』
(チップ・ハース、ダン・ハース/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 意思決定の四つの罠
第2章 視野の狭窄を避ける
第3章 マルチトラックする
第4章 自分と同じ問題を解決した人を見つける
第5章 逆を考える
第6章 ズームアウトとズームイン
第7章 ウーチングする
第8章 一時的な感情を乗り越える
第9章 核となる優先事項を貫く
第10章 未来を“幅”で考える
第11章 アラームをセットする
第12章 プロセスを信じる
著者:チップ・ハース
スタンフォード大学ビジネススクール教授。専門は組織行動論。GoogleやGapなどの世界的企業のコンサルティングを行なう。シカゴ大学ビジネススクールやデューク大学フュークアビジネススクールでも教鞭をとった経験がある。

著者:ダン・ハース
デューク大学社会起業アドバンスメント・センター(CASE)シニアフェロー。ハーバード大学ビジネススクールでMBA取得後、同学の研究員を務める。オンライン教育大手Thinkwellの共同創設者。

ハース兄弟の共著『アイデアのちから』(2007年)は150万部を超える全米ベストセラーとなり、25カ国語以上に翻訳された。2作目の『スイッチ! 』(2010年、邦訳は早川書房刊)も《ニューヨーク・タイムズ》のベストセラー・リストで1位を記録し、47週にわたって同リストにランクインし続けた。3作目にあたる本書(2013年)も、発売されるや《ニューヨーク・タイムズ》と《ウォール・ストリート・ジャーナル》のベストセラー・リストにランクインを果たしている。

書評レビュー

意思決定を補強する「WRAP」プロセスとは

本書『決定力』は、人間の意思決定の不正確さを分解し、どうすれば正しい決断が導けるのかに迫った一冊。私たちは日々、意思決定に直面していますが、本書では意思決定のステップを丁寧に解きほぐし、陥りがちな罠(傾向)と対策を提示してくれます。

意思決定をより正確にするプロセスとして、題名にもある「4つのプロセス」として紹介されているのが、「WRAP」プロセスです。WRAPプロセスは以下の通りで、4つのそれぞれの頭文字からとられています。

(W)選択肢を広げる(Widen Your Options)
(R)仮説の現実性を確かめる(Reality-Test Your Assumptions)
(A)決断の前に距離を置く(Attain Distance Before Deciding)
(P)誤りに備える(Prepare To Be Wrong)

これらの前提となる、意思決定の各段階における「罠」は以下の通りです。

1.選択に直面する→「視野の狭窄」によって選択肢を見逃してしまう
2.選択肢を分析する→「確証バイアス」によって都合の良い情報ばかり集めてしまう
3.選択する→「一時的な感情」によって間違った選択をしてしまいがちになる
4.選択の結果を受け入れる→未来の出来事について「自信過剰」に陥りやすい

無意識で陥りがちな罠を、意識的にWRAPプロセスで再点検しようというのが、本書の主張です。

たとえば「なぜあの時この選択肢に気がつかなかったのか…(視野の狭窄)」や、「まさかこんな展開に…(未来のシナリオの見落とし)」ということはビジネスシーンにおいても経験がある方が多いのではないでしょうか。

この書評では「(P)誤りに備える」テクニックのひとつである、「未来を幅で考える」という対処法を紹介します。

「未来を幅で考える」

正しい(と思われる)意思決定のあと、誤りに備える(準備する)ためには、未来におこる可能性を幅広くとらえる必要があります。そこで薦められているのが、「未来を幅で考える」手法です。

これは文字通り、未来を点ではなく、「幅(上限/下限)」の両面から予測することです。もともとは、ある投資家の株価評価手法からとられたもので、未来を両端がある「ブックエンド(本立て)」と見立てて、以下のように評価します。

「ブックエンディングでは、会社にとって事態が悪く進む悲劇的なシナリオ(左側のブックエンド)と、次々と幸運が舞い降りるバラ色のシナリオ(右側のブックエンド)のふたつを想定する。

たとえば、計算をしたところ世界的な石油市場の状況に応じて、エクソンモービルの株価が一株あたり50~100ドルの隅に収まると予測したとする。現在の価格が90ドルなら、彼は投資を行わない。右側のブックエンドに近すぎるからだ。

 上がる余地は少ないのに、下がる余地は多い。彼は中間の価格(一株あたり75ドル)でもリスクが高すぎると考えている。『私が探しているのは、起こり得る結果は幅広いのに、株価が予想範囲の左端に近い企業です』」

「未来を幅で予測する」概要はつかんでいただけたかと思います。著者はさまざまな調査から、「幅」で予測(範囲の上限と下限を個別に考える)することで、持てる知識を総動員させることができ、より正確な予測が可能になると説明しています。

これはもちろん株価だけでなく、事業戦略や新規事業のシナリオ検討にも使うことができます。最高のシナリオをも想定しておくことで、自分の予測の緩さや予期せぬ出来事(好調すぎて生産が追い付かない、など)にも備えることができる簡単で優れた手法ではないでしょうか。

まとめと感想

本書では、上記のようなWRAPステップの詳細やセルフチェックの質問(例:「今考えている選択肢がすべて選べないとしたらどうするか?」)などが多く掲載され、仕事や生活面ですぐに役立てられる一冊です。

WRAPステップが有効なのは、特に「決断まで5分以上かかるようなタイプの意思決定」と書かれているように、重大な「意思決定」に関わることが多い方は一読して損はない内容だと思います。

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