書評『アグリゲーター 知られざる職種』
(柴沼俊一、瀬川明秀/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 個人と企業の問題は一度に解かなければならない
第2章 企業経営を変える三つの武器I・C・M
第3章 硬直化した企業組織をどうやって壊せばいいのか
第4章 アグリゲーターが活躍する時代
第5章 アグリゲーターを生み出す組織
第6章 イノベーションパワーを拡大する七つの要素
第7章 「人財育成」と「イノベーション」は同時に進めよ
第8章 2030年 社会、企業、働くワタシ
著者:柴沼俊一、瀬川明秀
 シグマクシス パートナー。1995年東京大学経済学部卒業。2003年ペンシルバニア 大学経営大学院ウォートンスクール卒業。日本銀行。マッキンゼー・アンド・カンパニー、ファンド投資先企業など経て現職。日本経済の産業政策の立案から企業マネジメントの実務までこなす希有な存在、まさに経営のプロにして、リアル・アグリゲーター。コンサルティング及び事業開発・再生を専門とする。グロービス経営大学院准教授。著書に「『コンサル頭』で仕事は定時で片付けなさい!」(PHP出版)がある。

著者:瀬川明秀
 日経ビジネス副編集長 日経BPビジョナリー経営研究所主任研究員。1990年早稲田大学大学院理工学研究科修了後、日経BP社入社。日経ビジネス、日経新聞産業部、日経ベンチャーなどを経て、複数の媒体の立ち上げをしてきた。現在は日経ビジネス、日経ビジネスオンラインで編集・執筆。研究所での専門分野はデジタルコミュニケーションとスタートアップ。翻訳書に「顧客開発モデルのトリセツ」(DLmarket)がある。

書評レビュー

ドラッカーでさえも予見できなかった新たな働き方

 著名経営学者・社会学者である「ピーター・ドラッカー」は、1980年代から、「工業社会」の次にくるのは「知識社会」であると洞察していました。そして、この「知識」をサービスとする企業の元となる、いわゆる「ホワイトカラー」と呼ばれる人間が活躍するようになると予見していました。

 その後確かに、このドラッカーの予見はあたり、大手企業を中心に「ホワイトカラー」が採用され、ビジネスを遂行する状況になりました。しかし、昨今のIT技術やSNSの進歩により、誰しもが「情報」を自由に入手し、取扱うことができるようになります。

 その結果、ドラッカーでさえも予見できなかった「個人の進化」が起こり、「アグリゲーター」という職種・働き方が生まれることになったと筆者は述べています。

「情報格差はこれまで社内の地位とリンクしていたのだが、いつのまにか、個人の情報リテラシーの格差と取って代わられてきたのだ。感度が高いライフスタイルを持つ個人ほど豊富な情報を得て、自由に情報発信ができて、人とつながる可能性がある。個人が見ている風景は変わりつつある。」

 一方で、企業はどうかと言いますと、筆者曰く、「驚くほど変わっていない」そうです。

「現在企業の大半が、いまだに従来の工業社会のモデルを前提に運営されている。変化しつつある個人に対して、旧来型の枠組みに押し込めようとしている。それがゆえに、企業内の至るところで齟齬が生まれている。」

 本書『アグリゲーター 知られざる職種 5年後に主役になる働き方』では、この「個人」と「企業」のギャップに注目し、現代「企業」の問題点を明らかしていきます。そして、情報社会の中で新しい働き方を見つけた「個人」=「アグリゲーター」を活かすことで、この問題を解決することができると解説しています。

アグリゲーターとは何か

 筆者は、「アグリゲーター」を解説する際に、まずは「サラリーマン」と「プロフェッショナル」を比較の例として解説しています。筆者は、「サラリーマン」を、組織の中で、与えられた職責・権限の中で忠実に職務を遂行する人間としています。

 そして、「プロフェッショナル」を、企業の定めるゴールを達成するために、課題に対して自発的に考え、結果を出す人間としています。それでは、「アグリゲーター」はどうでしょうか。筆者は、まず「アグリゲート(aggregate)」という言葉をこのように解説します。

「短期間に社内外の多様な能力を集め・掛け合わせて、徹底的に差別化した商品・サービスを市場に負けないスピードで作り上げる。」

そのうえで、「アグリゲーター」を次のように定義しています。

「自分のやるべきことを見いだし、それをいかなる環境においても最後までやりきる『力』とモチベーションを持つ人々である。」

 筆者は、自身の経験から、この「アグリゲーター」は5つの特徴を持っていることに気付いたとのことです。

アグリゲーターの持つ5つの特徴

特徴1:将来やってくる社会を具体的にイメージし、自分たちならどのような貢献ができるのか考えてしまうし、プランを書かずにはいられない

特徴2:既存事業の枠組みに囚われず、その瞬間に最も適切と思われる事業モデル・アプローチを設計・実行する。

特徴3:事業を実現するために必要な能力を見極めることができる。それを集めるだけのネットワークを持っている。

特徴4:状況に応じて、自分の古いスキル・成功経験・能力をいとわず捨てることができる。

特徴5:強烈なビジョニング力を備えている。

 ビジネス環境の変化が早い現代では、「スペシャリスト」のような働き方ではなく、「アグリゲーター」のような環境適応能力を備えた働き方が適していると解説しています。

 本書では、従来の枠組みに収まった企業では、せっかく「アグリゲーター」が生まれてきても、その能力を活かすことができない、と説かれています。結果として両者が不幸になってしまうのです。

 そのような状況を打破するための方法として、個人と企業の在り方・関係性や、人材育成といった組織論も解説されていますので、マネジメントを学ばれているビジネスパーソンにとっても参考になる一冊です。