書評『世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』
(戸塚隆将/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
Chapter1.人との「つながり」に投資する
Chapter2.自分の内面と外見を磨く
Chapter3.時間に支配されずに働く
Chapter4.決定的なコミュニケーションで成果を出す
Chapter5.利益を生む資料と会議で貢献する
Chapter6.世界に打って出るキャリアを高める
著者:戸塚隆将
 1974年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックスにて、日米欧アジア企業のM&A(事業譲渡)アドバイザリー業務に5年間従事。その後、ハーバード経営大学院(HBS)にてMBA取得後、マッキンゼー&カンパニーに転じ、多国籍企業の戦略立案、組織改革、事業譲渡、事業提携等の戦略コンサルティング業務に従事。2007年、シーネクスト・パートナーズ株式会社を設立し、代表取締役に就任。同社にて企業のグローバル事業開発およびグローバル人材開発を支援する他、HBSのケーススタディ教材を活用した短期集中型実践ビジネス英語プログラム「CLUB900」を開発・運営する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

書評レビュー

グローバル・エリートに共通する仕事の基本を紹介

 本書は、ゴールドマン・サックス、マッキンゼー、ハーバードビジネススクールというグローバル・エリートの王道的なキャリアを持つ著者が、そこで学んだグローバル・エリートに共通する仕事術の「基本」を解説した一冊。

 実行しやすい具体的な仕事のコツや「基本」が網羅されている印象で、若手向けの内容かと思いますが、中堅の方も自分の仕事術の総点検・整理に使えるのではないでしょうか。著者は、世界のトップエリートが共通して意識している「常識」「価値観」「ルール」として以下の4つを上げています。

①人との「つながり」を大切にする
②「自分磨き」を一生継続する
③「日々の成果出し」に強くこだわる
④「世界的な視野」を常に意識する

 どれも、「王道」という感じですが、実際にこれらを極限まで突き詰めている人が冒頭の「グローバル・エリート」達であるも言えそうです。この書評では、それぞれの内容から印象に残った仕事術をいくつかご紹介します。

グローバル・エリートの仕事テクニック

1.人間関係は名前を覚えるところから

 著者は、ハーバードビジネススクールの教授が、学生の名前を必死で覚えているエピソードを紹介しながら、このように説明しています。

「HBSの教授に限らず、できるビジネスパーソンは、人の名前を覚えるのが得意です。そして、そういう人に限って、他人から尊敬される実績を有していることが多いのです。

尊敬される人でありながら、自分の名前を憶えてくれるのだ、と私が人気教授に抱いたような感激、期待値超えによって、その人への評価はさらに高まります。結果、その人の人脈は広がっていきます」

 そして、「相手の名前を覚える3つのコツ」を紹介しています。
①口に出す(自己紹介時に相手の名前を口に出して、自分の口と耳で必ず確認)
②名前を読んで質問する(「○○さんは、どちらのご出身ですか?」など)
③別れの際にも名前を言う(「〇〇さん、本日はありがとうございました」など)

2.新聞は、「世間の反応」を考えながら読む

 著者はまた、情報収集について、ゴールドマン・サックスに勤めて養われたスキルの一つに、「マーケット感覚」をあげています。そして、情報があふれている現代において、「不要論」もささやかれる新聞やTVニュースについて、逆に入手が容易だからこそ意味があるとして、このように言及しています。

「テレビのニュースや主要新聞で取り上げらえる情報は、知っていて当たり前、知らなければ決定的にハンデとなる情報です。より重要なことは、ニュースや新聞で取り上げられた情報に、世の中がどう反応するか、を見極めることです。世の中の動きに対して自分なりの意見を持つことではじめて、情報を活用し、差別化できます。」

 そこで、新聞やテレビニュースに関しては、「読んだらその情報に人々がどう反応するか考える」「必ず紙で読み、各ニュースの取り上げ方に気を配る」「最低2紙に目を通す」といったクセ付けをしながら収集することを薦めています。

3.上司へのホウレンソウは先手必勝

 「仕事の基本」といわれる、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)についても、著者はさらに具体的なアドバイスを述べています。

「ホウレンソウの基本は、上司に聞かれる前にすることです。上司に聞かれてから報告するのでは遅いのです。自ら先に報告をしにいくことで、ポイントを整理し論理立てて伝えることができます。準備がしっかりできているため、自身を持った受け答えができます。」

 逆に、「例の件どうなってるの?」から始まった時の状況を考えると、矢継ぎ早の質問にしどろもどろになってしまうであろうことが想像できると思います。

4.「愛国心」をパワーの源に変える

 ここまでの内容と少し毛色が違いますが、著者は「健全な愛国心は必要と考えています。時に自分に大きな力や自信を与えてくれます」と述べて「愛国心」の効用を評価しています。具体的には「英語力」の重要性についての文脈なのですが、その真意がエピソードとともに紹介されています。

 ハーバードの学生と研究者が集まったHBSの講義で、当時のハーバード大学学長であり、米国経済の重鎮であるローレンス・サマーズ教授が「日本経済」についての講義を行いました。そこではひたすら「いかに日本経済のシステムが駄目か」、そして「これまでの私の持論がいかに正しかったか」という内容が語られたそうです。

 それを受けて著者は、質疑応答でまっさきに「解決策としてのアイデア」を質問するものの、うまくかわされ続け、明確な回答がないまま終わってしまいます。

 結果、今後グローバな影響力を持つであろう学生たちに、「日本経済がいかにダメか」が強く印象づけられてしまいました。これは長いスパンでみれば、今後の世論も「日本=ダメ」という方向に誘導されてしまうことになります。

 これを受けて、著者は「日本語でいくら声高に意見を発しても誰も聞いてはくれないと痛感」したそうです。そして卒業後帰国してからも、自分の英語力を高める努力を続けたそうです。つまり、健全な愛国心が英語の重要性を再認識させる結果となったのです。

 いかがでしたでしょうか。本書では上記のようなスキルが48個取り上げられており、王道的な仕事術が「基本」を中心にまとめられています。グローバルエリートも「基本」を徹底しているということがわかる本であり、管理職の方が若手社員に「これ読んどいて!」と渡すのにも便利そうです。

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