書評『戦略読書日記 〈本質を抉りだす思考のセンス〉』
楠木 建/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
序章 時空間縦横無尽の疑似体験 『ストーリーとしての競争戦略』楠木建著
第 1章 疾走するセンス 『元祖テレビ屋大奮戦! 』井原高忠著
第 2章 「当然ですけど。当たり前ですけど」 『一勝九敗』柳井正著
第 3章 持続的競争優位の最強論理 『「バカな」と「なるほど」』吉原英樹著
第 4章 日本の「持ち味」を再考する 『日本の半導体40年』菊池誠著
第 5章 情報は少なめに、注意はたっぷりと 『スパークする思考』 内田和成著
第 6章 「バック・トゥー・ザ・フューチャー」の戦略思考 『最終戦争論』 石原莞爾著
第 7章 経営人材を創る経営 『日本の経営を創る』三枝 匡、伊丹敬之著
第 8章 暴走するセンス 『おそめ』石井妙子著
第 9章 殿堂入りの戦略ストーリー 『Hot Pepper ミラクル・ストーリー』平尾勇司著
第10章 身も蓋もないがキレがある 『ストラテジストにさよならを』 広木隆著
第11章 並列から直列へ 『レコーディング・ダイエット決定版』岡田斗司夫著
第12章 俺の目を見ろ、何にも言うな 『プロフェッショナルマネジャー』ハロルド・ジェニーン著
第13章 過剰に強烈な経営者との脳内対話 『成功はゴミ箱の中に』レイ・クロック著
第14章 普遍にして不変の骨法 『映画はやくざなり』笠原和夫著
第15章 ハッとして、グッとくる 『市場と企業組織』O・E・ウィリアムソン著
第16章 日ごろの心構え 『生産システムの進化論』藤本隆宏著
第17章 花のお江戸のイノベーション 『日本永代蔵』井原西鶴著
第18章 メタファーの炸裂 『10宅論』隈 研吾著
第19章 「当たり前」大作戦 『直球勝負の会社』出口治明著
第20章 グローバル化とはどういうことか 『クアトロ・ラガッツィ』若桑みどり著
第21章 センスと芸風 『日本の喜劇人』小林信彦著
特別収録:ロング・インタビュー「僕の読書スタイル」
著者:楠木建
 一橋大学大学院 国際企業戦略研究科教授。1964年東京生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、 『経営センスの論理』(新潮新書)、『知識とイノベーション』(共著、東洋経済新報社)、監訳書に『イノベーション5つの原則』(カーティス・R・カールソン他著、ダイヤモンド社)などがある。

書評レビュー

「戦略や経営の本質」を抉り出す「非・経営戦略本」

本書は、「ストーリーとしての競争戦略」や「経営センスの論理」などの経営戦略系の著書で有名な「楠木建」氏が、自身が影響を受けた数々の本を紹介した「本を紹介する本」です。もっとも、経営戦略系の著書を執筆している筆者のお薦めの本だからといって、いわゆる「戦略本」ばかりを紹介しているわけではありません。

紹介されているさまざまなジャンルの本(口述の目次に一覧があります)に共通している点、それは「戦略や経営の本質を抉りだす」ことができること。

これらの本から僕が受けた衝撃や知的興奮、僕が得た気づきと洞察を読者の方々と共有したい。その先に、戦略をストーリーとして構想し実行する経営とはどういうことか、そのために必要となる思考のセンスとは何か、そうしたことの本質を浮かび上がらせることができれば、という目論見である。

「ストーリーとしての競争戦略」や「経営センスの論理」でもそうですが、筆者が特に重要視しているのは、この戦略的な「思考センス」を身につけることといっても過言ではありません。今回は、筆者が取り上げている21冊のうち、『スパークする思考(内田 和成/著)』をご紹介します。

『スパークする思考』~情報は少なめに、注意はたっぷりと~

筆者が「情報収集・整理の方法論について書かれた本は数多くあるけれど、この1冊(続編をいれて2冊)を読めば他にはいらない」とまで言い切っている一冊、それが『スパークする思考(内田和成/著)』です。著者は本書を次のように紹介しています。

よくある情報整理術の本と決定的に違うのは、「情報」(information)そのものではなく、むしろ人間の「注意」(attention)を相手にしているところだ。

とあるノーベル賞経済学者は、こう言ったそうです。「情報の豊かさは注意の貧困をつくる」。つまり、情報が増えれば一つ一つの情報に向ける注意量は必然的に減る、ということなのですが、これは人間の頭のキャパシティが劇的に増えることはないということからきた発言でしょう。

筆者は、あらゆる仕事は、インプットではなく、アウトプットを向いていなければならないが、情報と注意のトレードオフを考えれば、情報のインプットを増やすことでアウトプットが減少してしまう、と解説しています。

そのため、情報を集め、整理することに力を入れるのではなく、自分のフィルターに引っかかるものだけに注目し、それ以外の情報を遮断することが、もっとも正しい情報整理だと述べているのです。

前述の通り、筆者である楠木氏の著書に共通する主張は、経営に必要なのは「スキルではなくセンスである」ということ。「本書を読んでも、すぐに役立つビジネス・スキルは身につかない」とまで言い切っているのは、その裏返しだと思います。

本書では、目次にあるように、多岐にわたるジャンルの本のエッセンスが紹介されていますので、まずは手に取ってみて、自身に必要な一冊を探されてはいかがでしょうか。読み物としても非常に面白い一冊です。

新刊ビジネス書を「要約」でチェックできるプレミアム版も人気です

book-smartとは