書評『TEDトーク 世界最高のプレゼン術』
(ジェレミー・ドノバン/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
TEDの使命
第1部 内容・ストーリー・構成
・トピックを選ぶ
・キャッチフレーズを作る
・スピーチを成功させる「紹介」の秘訣
・スピーチのはじめ方
・スピーチの本論とつなぎ
・スピーチの締め方
・ストーリーを語る
第2部 伝え方とスライドデザイン
・スピーチを成功させる言葉の使い方
・スピーチにユーモアを盛り込もう
・身体を使ったコミュニケーション
・印象的なビジュアル効果
・恐怖心を克服しよう
・本を置いて話しはじめよう
著者:ジェレミー・ドノバン Jeremey Donovan
 米国コネチカット州スタンフォードに本拠を置くIT分野のリサーチ・アドバイザリ企業、ガートナー社(Gartner)のマーケティング担当副社長。TEDxイベントのオーガナイザーであり、講演家でもある。トーストマスターズ・インターナショナルのメンバー。著書に『What Great Looks Like: Leadership Best Practices for General Managers』(未邦訳)がある。

翻訳:中西真雄美
 翻訳家、大阪外語大学卒、主な訳書に『ザ・プレゼンテーション 人を動かすストーリーテリングの技法』(ダイヤモンド社)がある。

書評レビュー

世界中の人を動かす「TED」のプレゼンテーション・テクニック

TED(テッド)といえば、TVやウェブでご存じの方も多いと思いますが、テクノロジー(T)、エンターテインメント(E)、デザイン(D)の3分野からインパクトあるアイデアを広める活動をしており、プレゼンの最高峰としてお馴染みです。

今回の一冊は、そのTEDで好評を博したプレゼンターたちのスピーチから、人を動かすスピーチのテクニックをハウ・ツー形式で抽出した実践的な一冊。著者は、TEDイベントオーガナイザーのジェレミー・ドノバン氏なので、「公式TEDトーク解説本」でもあります。

本書の特長としては、TEDならではですが、解説されているテクニック(特に文章では伝わりにくい「間」など)を、実際に動画で見て確認できることではないでしょうか?この書評でも紹介していますので、ぜひ実際のスピーチに触れてみてください。

紹介されているノウハウは、コアメッセージの決め方や準備から、スピーチ中のフィジカルな注意点まで多岐にわたりますが、この書評では、第5章「スピーチのはじめかた」から「成功をもたらすスピーチのオープニング(冒頭部)の3手法」を紹介します。

着実に成功をもたらすオープニングの3手法

聴衆がもっとも注意を働かせているのは、最初の10秒~20秒です。それゆえ、冒頭部で、いかに聴衆を引き付けるか、が重要になります。

そこで紹介されている主な手法は(1)個人にまつわるパーソナル・ストーリーではじめる、(2)ショッキング・ステートメント(聴衆をドキッとさせる)、(3)インパクトのある質問からはじめる、の3つですが、それぞれをご紹介します。

1.個人にまつわるパーソナル・ストーリーではじめる

まず、個人的なストーリーから始める手法について、以下の5つの要素をうまく織り込むことがポイントとなります。

・あなた自身に関するもの
・パーソナル・ストーリーがスピーチのコアメッセージと直接関係していること
・ストーリーは聴き手の感情をゆさぶるもの
・五感に訴えるもの
・そして会話をふんだんに盛り込んだもの

これら5つのポイントがうまく織り込まれた例として、下記のプレゼンの冒頭部が挙げられています。続きを是非聞きたくなる導入部ではないでしょうか。

これは、高校生を相手に2時間のプレゼンを行った内容です。でも、ここでは3分でお話ししましょう。7年前、TEDに向かう飛行機の中での出来事です。

私のとなりに座っていたのは女子高生、つまり10代の少女でした。彼女の家はまずしかったそうです、だから、成功したいと願っていた。そこで、私に素朴な質問をぶつけてきました、「どうすれば成功できるの?」…(以下略)
※TED 2005:リチャード・セント・ジョン『成功者だけが知る、8つの秘密」

2.ショッキング・ステートメント(聴衆をドキッとさせる)ではじめる

次に著者はショッキング・ステートメント(衝撃的な事実の提示)という手法も紹介しています。その際、大切なのが、「聴衆の何らかの感情の動きを誘発するものでないといけない」ということです。

その成功例として、有名なシェフで食育家のジェイミー・オリバーのスピーチの導入部を紹介しています。

痛ましいことですが、私がここで話をしている18分のあいだに、アメリカ人の4人が食が原因で亡くなるでしょう。私はジェイミー・オリバー、34歳です。イギリスのエセックス州の出身で、ここ7年ほどは私流のやり方で人の命を救う活動に休む暇もなく取り組んできました。私は医者ではありません。シェフです。

ここで、オリバーシェフは、食事が原因で人がどんどん死んでいるというショッキングな事実(しかもいわゆる先進国で起こっている)を伝えることで聴衆の関心を引き付けています。こちらのスピーチも、ウェブ上で見ることができますので、ぜひ確認してみてください。

3.「なぜ?」という質問からはじめる

3つ目として、インパクトのある質問からはじめることについて説明されています。

インパクトのある質問で聴衆の心をつかみたいなら、「なぜ(Why)」や「どうすれば(How)」からはじめる質問が効果的です。「なぜ」ではじまる質問は、聴衆の注意を引くという意味では断然効果的です。自分のまわりの世界がいまどうなっているかを知りたい、そんなごく自然な好奇心を引き出せるからです。

そして、「なぜ」それが起きているのかを知れば、次に「どうすればよいのか?」という感情を自然に知りたくなり、それが聴衆を引き込むことができるのです。(2)で挙げたのオリバーのショッキング・ステートメントを、「Why」と「How」で下記のように始めることもできます。

「あなたの食べたものが原因で命を落とす危険を避けるには、どうすればよいでしょうか?」
「みなさんのような普通のアメリカ人が毎日320も食が原因でなくなっているのはなぜだと思いますか?」

こちらの「質問」のテクニックを最も効果的に使ったスピーチとして、サイモン・シネック(『Whyから始めよう』の著者」)の例が挙げられています。

物事が思い通りに進まなかったとき、みなさんはそれをどう説明しますか?あるいは、誰かが常識をすべてひっくり返すような偉業を成し遂げたとき、みなさんはそれをどう説明するでしょう?

たとえば、どうしてアップルはああも革新的でいられるのか?毎年毎年、ライバル企業のどこよりも革新的であり続けています…

ほかにも、「オープニングでやってはいけないこと」なども紹介されていますので、気になる方はぜひ本書を手に取ってみてください。ここでは紹介しきれませんでしたが、上記のような実践的なスキル・ノウハウが、多数掲載された、実践的な一冊です。

また、日本人が実践する際に、注意したほうがいい英語スピーチの特性についても、訳者の方があとがきで、注意点を補ってくれていまうs。人前でスピーチする機会がある方だけでなく、文章をよく書く方など、多くのビジネスパーソンにお薦めの一冊です。

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