書評『その科学があなたを変える』
(リチャード・ワイズマン/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 その科学が幸せを変える
第2章 その科学が愛を変える
第3章 その科学が悩みを変える
第4章 その科学がやる気を変える
第5章 その科学が説得力を変える
第6章 その科学があなたを変える
著者:リチャード・ワイズマン
1966年生まれ。英国ハートフォードシャー大学教授。プロマジシャンとして活動後、ロンドン大学を卒業。エディンバラ大学で心理学の博士号を取得した。心理学を広く一般に啓蒙し、超常現象の謎を科学的に解明する研究で国際的に知られる

翻訳:木村博江
東京都生まれ。国際基督教大学を卒業。翻訳家

書評レビュー

自分を変える「アズイフ(as if)の法則」

 本書は、どうすれば自分を変えることができるのかを、人間の「行動が感情に影響を与える」という性質に着目した「アズイフの法則」から解説した自己啓発的一冊。著者のリチャード・ワイズマン博士は『その科学が成功を決める』などの著書も執筆し、自己啓発を心理学で解き明かす人気教授です。

 本書で説かれているのはいわば逆転の発想で、まず、幸せであるか「のように(=as if)」、行動すると、本当に幸せを感じる、というもの。みなさんも胸を張って歩くと、元気が出る、というような話を耳にしたことがあるのではないでしょうか?

 では、『アズイフ(as if…=…のように)の法則』とはどういうものか、著者は以下のように説いています。

 「人はあたかもそれを体験したかのように行動しさえすれば、いかなる感情でも望み通りに作り出せるはずである。
 ジェームズの言葉を借りるなら、『幸せになりたければ、すでに幸せであるかのように行動すればいい』のだ」

つまり、

  • 幸せを感じる → 笑う
  • 恐いと感じる → 逃げる

と常識的には考えられている順序を、次のような順序で考えるものだともいえます。

  • 笑う → 幸せを感じる
  • 逃げる → 恐いと感じる

アズイフの法則からわかる「報酬」と「やる気」の関係


 本書ではさまざまな実験や科学的な調査が書かれていますが、人間の「やる気」に関して「報酬」が与える影響を明らかにしたものを紹介します。

 この実験では、被験者の半数に金銭的報酬を与えて(半数には報酬なし)、難しいパズルを解いてもらいます。そして、その後席をはずし、彼らが自発的にパズルを再び解き始めるかをみたものです。そこでは意外な結果が導かれています。

「パズルに対する力量とは関係なく、報酬を約束”されなかった”参加者は部屋に一人きりにされたあいだもパズルをした割合がはるかに高かった。」

 なぜでしょうか?著者はアズイフの法則からこのように説明しています。

 「パズルをして金銭的報酬を約束されたものは、無意識にこう考える。『人がお金を払うのは、いやな仕事をさせたときだけだ。このパズルでもお金をくれるという。つまり、これがつまらない仕事だからだ』」

 つまり、報酬を約束されたものはパズルが楽しくないかのように行動し、報酬を約束されなかった者はパズルが楽しいかのように行動したことになったのです。そして、何かを推奨したり禁止したり(禁煙など)する際の「報酬」の効果について以下のようにまとめています。

 『子ども、喫煙者、車の運転者にいくら報酬をあたえても、結果としては彼らに読書、禁煙、シートベルトの着用が嫌なことであるかのように行動させてしまう。

そのため報酬が出されなくなると同時に、目的の行動は終わりを告げるか、以前より状態が悪化する。』

 もちろんすべてのケースがこのモデルに当てはまるわけではないでしょうが、給与インセンティブなど、報酬をともなう仕組みの設計にとって示唆にとんだ内容言えるのではないでしょうか。

 少し怪しげに思えるかもしれませんが、本書では上記のアズイフの法則が、多数の実験調査や論文から証明されていきます。自己啓発的内容は、読者がその理論をいかに信頼できるかも重要だと思いますので、その意味では信頼感おける内容が語られています。

 取り上げられているテーマも「愛を獲得するには」「不安やうつを克服するには」「喫煙やダイエットを成功させるには」など、多岐に渡り、抽象論ではなく、具体的な自己啓発書を読みたい方には参考になる内容です。

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