書評『知の英断』
(ジミー・カーターほか/著、吉成真由美/編集)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第一章 戦争をしなかった唯一のアメリカ大統領―ジミー・カーター
第二章 50年続いたハイパーインフレを、数か月で解消した大統領―フェルナンド・カルドーゾ
第三章 「持続可能な開発」と「少女結婚の終焉」―グロ・ハーレム・ブルントラント
第四章 「人権のチャンピオン」と「世界一の外交官」―メアリー・ロビンソン&マルッティ・アハティサーリ
第五章 ビジネスの目的は、世の中に“違い”をもたらすこと―リチャード・ブランソン
著者:吉成真由美(よしなり・まゆみ)
 サイエンスライター。マサチューセッツ工科大学卒業。ハーバード大学大学院修士課程修了(心理学部脳科学専攻)。元NHKディレクター。著書に『カラフル・ライフ』(文化出版局)、『やわらかな脳のつくり方』(新潮選書)、『知の逆転』(インタビュー・編、NHK出版新書)等。

書評レビュー

 本書は故ネルソン・マンデラのもとに集まった6人の現代最高の「知の実践者」(エルダーズ)が、世界の“困難”にどう立ち向かうのか、現在の課題と解決策についてのインタビューがまとめられた一冊です。

「エルダーズ」とは何か

 本書の登場人物である6名は、みな「エルダーズ」という組織の構成メンバーです。「エルダーズ」とは、南アフリカ共和国において初めての黒人大統領となったネルソン・マンデラ氏が設立したグループです。

 2007年、マンデラ氏は本書に登場するジミー・カーター(アメリカ合衆国元大統領)ら6人のほか、コフィ・アナン(元国連事務総長)、ムハマド・ユヌス(グラミン銀行総裁)を含む12名の世界的リーダーを招聘して、「エルダーズ(The Elders)」を結成しました。

 彼らは、公務で得た知識と独立した思考を問題解決に役立てることによって「恐怖があるところに勇気をもたらし、紛争のあるところに協調をはぐくみ、絶望が支配するところに希望を生む」という使命を果たすべく、いまなお精力的な活動を行っています。

戦争をしなかった唯一のアメリカ大統領 -ジミー・カーター

 本書は、「エルダーズ」のメンバー6名それぞれによる、世界的な緊急課題に関する様々な問答の内容が収められています。ここではでは、マンデラ氏と最も親交の深いひとりである、ジミー・カーター元大統領のインタビュー内容を一部ご紹介します。

カーター氏といえば、第二次世界大戦後の歴代大統領の中で唯一戦争をしなかった人物として有名です。就任期間当時は「弱腰外交」と揶揄され国民からの評価も決して高くありませんでしたが、後にそれが「勇気ある決断」であったとして、ノーベル平和賞を受賞しました。

 同氏は『「防衛予算が少ないほど、戦争する可能性も低くなる」』と述べ、戦争と軍備について、独立国家の基本構造として軍事は必要であるとの見解を示す一方、軍事費の割合が少なければ少ないほど国民にとっては良く、戦争をする可能性も低くなるとしています。

 また、同氏は第二次世界大戦後にアメリカが積極的に仕掛けたほぼすべての戦争を「不要であった」と批判した上で、私たちは戦争に対してもっと慎重になるべきであり、最終手段としてのみに選択すべきであると述べています。

すなわち、世界の戦争や紛争を減らしていくには「基本的な平和の向上」と「人権の向上」を常に優先順位リストのトップにすえておくことが必要であり、それによって戦争や憎しみというものを低いレベルに抑えておくことが出来ると語っているのです。

本書に収められたインタビューの内容は、上述したカーター氏一人をとっても非常に多岐にわたります(北朝鮮に関する問題、ウィキリークスに対する見解など)。このような様々なテーマでのインタビューが6名分ということで、相当な読み応えがあるはずです。

 また、一国のリーダー級の人物から発せられる言葉は、明快ながらやはり非常に重みがあります。グローバルリーダーたちが、現在の世界について何を考えているのか。世界の英知ともいえる彼らの考えや知恵をじっくり学べる貴重な一冊としてぜひ手に取ってみてください。

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