- 著者プロフィール
第1章 どうして値上げが必要か
第2章 値下げの麻薬にはまっていませんか
第3章 人はなぜ値上げに抵抗があるのか
第4章 値段のメカニズムを知る
第5章 中小企業が実践できる値上げの技術
第6章 値上げのための心構え
おわりに──値上げで一番大切なこと
有限会社ともえ産業情報取締役社長。1969年京都府生まれ。立命館大学法学部卒業後、大和証券、東京都中小企業振興公社を経て、中小企業診断士として活動した後に、社会調査、市場調査事業を行う同社を設立。数多くの中小・中堅企業の現場を調査した経験から、利益確保のための積極的な「値上げ」方法を研究し、多くの企業や店で値上げを実現させてきた。2013年3月、専修大学大学院商学研究科博士課程を単位取得退学。2011年度より千葉商科大学商経学部で非常勤講師として「流通経済論」等を担当。著書に『なぜ繁栄している商店街は1%しかないのか』(阪急コミュニケーションズ)、『独立開業マニュアル これだけは知っといてや』(岩波アクティブ新書)がある。
書評レビュー
規模が大きくなくても幸せな会社の特徴とは?
企業収益を改善させるキモである「値上げ」がもたらす本当の効果と、実際に「値上げ」をする際に必要なテクニック・思考法を紹介した一冊です。皆さん、ユーザーの観点からサービスや商品の「値上げ」と聞くと、どのように感じるでしょうか?おそらく、一般的には、「値上げ」をポジティブに捉えることは少ないのではないかと思います。
そのため、サービスなどを提供する企業サイドとしても、「値上げ」に抵抗をおぼえる企業も少なくありません。むしろ、例えば、大手家電量販店のように「値下げ」をしてでも総売上高を伸ばそうとする企業が多いのではないでしょうか。
しかし、この「値下げ」が常態化すれば、価格競争による粗利の低下や企業イメージの低下を招き、結果として、企業の体力を大きく消耗させてしまうことに繋がりかねません。また、取引先などからすぐに「値引き」を求められることで、従業員のモチベーションを低下させる原因にもなるでしょう。
そんな状況を憂いつつ、中小企業診断士として様々な企業のコンサルティングに従事してきた著者は、ある時、会社規模が大きくなくても、自社の商品やサービスに自信をもって働き、毎年安定的な利益を計上している企業には共通点があることに気がつきました。
簡単に言うと、「値上げ」が受け入れられ、それでもお客さんに愛されている会社が、幸せになれる会社だということです。』
このような理由から著者は「値上げ」を肯定していますが、同時に述べているように、闇雲に「値上げ」をすれば、当然ユーザーは離れていってしまいます。
そのため、著者は、スムーズな「値上げ」には、まず「値段のメカニズム」を知ることが必要だと解説します。
値段のメカニズムから見る値上げの方法
値段のメカニズムを見てみると、いろいろな場所で売られており、かつ、値段が知れ渡っている商品やサービスについては、なかなか「値上げ」ができないことが分かります。
この場合、一番安い値段、つまり、一番「値引き」をしている企業や店舗に売上が集中してしまうため、薄利多売の価格競争に巻き込まれてしまいがちです。そして、この戦略のもとでは、体力のある一部の大企業に分がありそうです。
中小企業が同様の戦略を採用することは可能だと思いますが、大企業とガップリ四つで組み合った時は、明らかに不利と言わざるをえません。
一方で、商品やサービスの値付けにあたっては、ユーザーがその商品やサービスの価値を正確に把握することが難しいので、今まで見たことがないものについては、ユーザーはついている値段をそのまま受け入れる傾向にあります。
この値段のメカニズムを踏まえ、著者は「値上げ」の基本的な方法について、このように述べています。
そして、そのために商品やサービスを、「お客さんが見たことがなく、価値が高く感じられるもの」として演出することが必要です。』
まとめと感想
本書では、上記の基本的な方法に基づいた「値上げ」のステップが、事例を交えながら具体的に解説されていきます。また、われわれが「値上げ」への抵抗感を抱く理由や「値上げ」を実行するに持つべき心構えなどもわかりやすく紹介されています。
本書は中小企業を対象として書かれた本ではありますが、収益に直結する価格設定を深掘りした一冊として、大企業/中小企業問わず、マーケティングに携わるビジネスパーソンには多くのヒントがつまった一冊です。
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