書評『福島屋 毎日通いたくなるスーパーの秘密』
(福島徹/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 町のスーパー福島屋が強い理由
第2章 失敗から学んだ「商売で大切なこと」
第3章 「売り場づくり」はスーパーの要
第4章 実践で学んだ「吟味」する力
第5章 生産者さんとの連携で「共存共栄」
第6章 「講座ビジネス」が小売り業の核になる
第7章 これからの小売業の在り方
木村秋則さんとの特別対談
著者:福島 徹
1951年東京都生まれ。東京都羽村市にある食品スーパーマーケット「福島屋」代表。株式会社ユナイト代表取締役社長、農業法人「NAFF」の取締役を兼務。大学卒業後、家業のよろず屋を継ぎ、酒屋、コンビニを経て、34歳のとき、現在の業態へ。その後、東北の生産者から直接、米を仕入れるなど農業との距離を縮め、コラボレーションによる福島屋オリジナル商品を多く開発。ユニークな経営方法が注目を集め、「福島屋」には全国から視察者が訪れている。2014年1月には森ビルが開発する「アークヒルズ サウスタワー」(六本木)に「FUKUSHIMAYA TASTING MARKET」を出店。

書評レビュー

お客様から支持される経営の秘密

本日紹介する一冊は、「カンブリア宮殿」「プロフェッショナル仕事の流儀」などにも取り上げられ、非常に話題を呼んだスーパー「福島屋」が、なぜお客様から支持され続けるのか、その経営の秘密を説いた一冊。

今年の1月に、六本木「アークヒルズ サウスタワー」にも出店するなど話題先行型企業なのかと思いきや、本書を読むと非常に地道な創意工夫を続けてきた経営であることがわかります(創業以来40年間黒字とのこと)。

「福島屋」は東京西部の羽村市という人口6万人ほどの都市にありますが、ほかの中堅都市と同じく大手スーパーや競合店がひしめく立地でもあります。

そこでユーザーの心をつかんだ「福島屋」の売り場の一番の特色は、「オリジナルな品ぞろえとコミュニケーションを大事にした運営管理」であると書かれています。

実際はどのような品ぞろえなのかというと、無農薬かつ自然栽培、「旬」の青果、そして調味料や加工品も、大手メーカーのものより、品質にこだわった地方メーカーやオリジナルブランドを扱っているとのこと。

ここまでならば他の少し高級志向のスーパーなどとあまり変わらないかもしれません。では、さらに福島屋が他店と差別化できている点はなんでしょうか。著者は上述の「コミュニケーションを大事にした運営管理」について次のように説いています。

「生産者とお客様を巻き込みながら、売上の磨き上げを行っているというのも、福島屋の大きな特徴です。私たちは生産者の方々を仲間と考え、一緒になって商品の開発に取り組んでいます。利益が出れば、協力してくださった方々にも還元しています。さらにお客様も仲間と考え、店舗の運営や商品開発などにもスタッフの一員として加わってもらっています」

これを著者は生産者、加工業者、流通、お客様、などかかわるすべての人のことを考えたうえで商売していく「編集能力」と表現しています。

真のニーズに応えるために開始した「講座ビジネス」

本書ではお客様とコミュニケーションするさまざまな打ち手が紹介されていますが、ここでは「講座ビジネス」を紹介します。

これは、野菜の旬や食材の特徴を活かした調理法をお客様に学んでいただくことで、豆腐教室、野菜料理教室、豆料理教室などを行てきたとのこと。

これは、良い商品を並べ、その魅力を最大限「伝える」だけでは商品の魅力の伝達には限界がると考えたことがきっかけだったそうです。

この「わかる人にはわかる」という状態から脱し、実際にお客様に「わかる」人になっていただくというのは、逆転の発想ともいえますが、非常に面白い取組ではないでしょうか。

売り場改善のためのグラフィック・ワークショップ

また、安売り競争はせず、チラシも打たないという、福島屋では、商品の魅力を最大限訴求するための売り場改善「グラフィック・ワークショップ」というものを定期的に行っています。

詳細は本書に譲りますが、これは売り場や棚の写真をもとに、部門主任、リーダー、スタッフ全員で見ながら意見を交わし、「売り場がお客様目線になっているか」どうかを評価・改善していくもの。

売り手都合の棚作りとは、例えばよくスーパーでは古い商品が前のほうに陳列されているという話がありますが、これに対して著者は次のように説きます。

「お店が仕入れに失敗して売れ残りを出してしまったのに、それらを前に並べて、先に古いほうを買ってほしいというのは、虫のいい話。ですから、私は新しい商品を棚の前に出せと言います。売れ残ったものは、はっきりと売れ残ったものだと表示し、その分少し値引きして販売すればいいという考え方です」

このワークショップは人材育成の場としても機能していると著者自身書いている通り、このようなPDCAの仕組みを継続していること自体が他店と違う売り場を実現している要因なのだと思います。

まとめと感想

本書ではほかにも店頭POPやお客様、生産者、スタッフを巻き込むのノウハウや、事業ミッションの浸透、「仕入れる」「並べる」「伝える」といった基本動作を極限まで追求する考え方などが紹介されています。

小売り業界に携わる方に限らず、発想や事業運営上ののヒントが得られる内容だと思いますので、ぜひ手に取ってみてください。

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