- 著者プロフィール
第2章 ビジネスで成功するために人間を知る
第3章「行動観察」とは何か
第4章 高齢者が本当に求めているもの
第5章 中国人観光客のまだ見ぬニーズを探る
第6章 飲食業のサービスのスタンダードを作る
第7章 工事職人さんのCS(顧客満足度)を上げよう
第8章 行動観察を実践するために知っておくべきこと
第9章 イノベーションを起こす組織とは
大阪ガス行動観察研究所所長。株式会社エルネット技術顧問。サービス学会監事。
1966年、大阪府生まれ。神戸大学工学部環境計画学科卒業、神戸大学大学院工学研究科修士課程修了後、1992年に大阪ガス株式会社入社。
基盤研究所に配属され、生理心理学、人間工学関係の研究活動に従事。アメリカ・コーネル大学大学院にて修士号(Master of Science)取得ののち、和歌山大学にて博士号(工学)を取得。
2005年、行動観察ビジネスを開始。2009年に大阪ガス行動観察研究所を設立すると所長に就任し、現在に至る。
著書に『ビジネスマンのための「行動観察」入門』(講談社)、編著書に『ヒット商品を生む 観察工学』(共立出版)がある。
書評レビュー
本書は、マーケティングや製品の企画・開発といったすべてのビジネス活動の本質である人間の「行動」を「観察」することで、様々なシーンにおいてソリューション(問題解決策)を提供しようという、マーケティングスキルについて解説した一冊です。
著者の松波氏は長年「行動観察」の研究を行ってきた人物であり、今までにのべ500件以上のソリューション提案を行ってきた、「行動観察」ビジネスの第一人者でもあります。
また、「ガイアの夜明け」をはじめとするメディアでも紹介されるなど、「行動観察」は現在非常に注目を集めているビジネススキルとなっています。
「行動観察」とは何か?
「行動観察」と聞くと、なんとなく人間の行動を観察する、という漠然としたイメージは持つことができそうですが、それをどうやってビジネスに活かしていくのかを具体的にイメージできる人はあまり多くないのではないでしょうか。
この「行動観察」の「キモ」となるのが、「問題を発見」するだけでなく「本質を理解」するために「人間の無意識下の行動」を観察し、様々なケースに対するソリューションを提供する、という考え方です。
著者は、「行動観察」をこのように定義づけています。
この「行動観察」はまだ新しい分野ではありますが、インテルやP&Gといったグローバル企業でも既に採用されるなど、「潜在的なニーズ」を探るためのマーケティング手法として、現在、注目を集めています。
「行動観察」がなぜ必要なのか?
では、なぜこの「行動観察」が必要とされているのでしょうか?グローバリゼーションや情報技術の進歩により、昨今のビジネス環境の変化のスピードは目を見張るものがあります。
この間まで好評だった製品・サービスがあっという間に陳腐化してしまい、一瞬でも気を抜けば競合他社に追い抜かれてしまうという状況が当たり前になってしまいました。
こんな状況下でも現在成功をおさめている企業は、この環境の変化、つまり、ユーザーニーズの変化に適応している企業と言えると思います。
同時に、このユーザーニーズが変化する時こそが、大きなビジネスチャンスが生まれる時でもあり、アップル、グーグル、アマゾンといったイノベーションを起こし続ける企業は、ユーザーニーズの変化をうまく捉えている企業と言えるのではないでしょうか。
そしてこれらの真のユーザーニーズは、アンケートやグルインと言った従来のマーケティング手法ではなかなか浮き彫りになりません。だからこそ、著者は次のように「「より深く、人間について知るべきである」と述べています。
詳細は本書に譲りますが、「行動観察」において大切な要素として紹介されている「FIRE」(Fact Insight Reframe Extensive knowledge)などで具体的なビジネスシーンへの応用の参考となります。
まとめと感想
本書では、「行動観察」の重要性を解説した上で、実際のケーススタディや、ビジネスパーソンが個人的に行動観察を実践するための要点などが具体的に解説されていますので、「行動観察」のみならず人間行動のエッセンスを学ぶ上で、参考になる良書だと思います。
著者も、日本人の性格、特に、粘り強さや他者への配慮は「行動観察」に向いていると述べているように、本書を読んで共感できる部分も多いと思いますので、実践しやすいビジネススキルとも言えるのではないでしょうか。
特にマーケティングや企画などに従事されている方にお勧めしたい一冊としてご紹介させていただきました。
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