- 著者プロフィール
CHAPTER 2【事例】「唯一化」で顧客を獲得する海外ECサイト
CHAPTER 3【実践】「唯一化」の前提条件
株式会社ネットコンシェルジェ 代表取締役。1977年、東京都出身。明治大学経営学部を卒業後、99年より米・ニューヨークに留学。1年半で帰国し、父親の経営するアパレル会社を手伝いながら専門学校でデザインを学ぶ。この頃から、ウェブデザインの世界に可能性を感じ、ウェブデザイナー、エンジニアの経験を重ねながら、個人でECサイトの制作を請け負うようになる。2002年、国内有数のウェブコンサルティング会社の(株)キノトロープに入社。同社にて、ウェブアプリケーション開発およびウェブサイト構築運営ディレクションに従事する。03年、同社の関連会社 (株)コンポレクスの立ち上げに参加し、取締役に就任。また同年、現在のネットコンシェルジェの前身となる、(有)ネットコンシェルジェを立ち上げ代表取締役に就任、現在に至る。10年間でプロデュースしたECサイトの数は、スタートアップから大企業まで、およそ140にのぼる。
(著者のフェイスブックアドレス≫http://fb.com/amaguchi)
書評レビュー
成功するECサイトの共通点「唯一化」
本書は、10年で140ものECサイトのプロデュースを手掛けた著者が、海外EC事例を通じて「価格競争」に巻き込まれない成功するEC戦略を解説した一冊です。
YahooがECサイトの出店料無料化に踏み切るなど、eコマース業界の今後の動向に注目が集まっていますが、著者は成功するECサイト(値引き合戦に巻き込まれない)は、「唯一化」に成功しているサイトである、として、以下のように述べています。
「唯一化とは、商品はもとより、サービスやコンテンツ、ファン同士のコミュニティ、付加価値などの面で独自の魅力を身につけることで、競合サイトと比べて唯一無にの存在になる状態を指す」
そして、「唯一化」されたECサイトは、お店を応援してくれるファンをつくり、顧客が顧客を連れてくる好循環サイクルに突入する、というのが本書の趣旨です。
つまりは商品の「ブランディング」「熱狂的なファンづくり」という考え方ですが、本書の特長としては、ECサイトの「価格」「集客」「商品」「デザイン」「コンセプト」の5つについて具体的な戦略が解説されている点。
また、紹介されている25もの海外EC事例紹介(ストーリーとしてまとめられています)も非常に面白いのですが、この書評ではECサイトに直接携わっている方以外にも役立つであろう内容を紹介していきます。
ECサイトの「唯一化」を実現する、4つの心構え
著者は、ECサイトの個々の施策の前に、そもそもサイト運営者が持っておくべき心構えとして、以下の4つが必要であると説明しています。
1.顧客の顔を見定める
2.自分自身がそのサイトの1番ファンになる
3.模倣されないサイトをつくる
4.とにかく継続する
ではひとつずつ見ていきます。
1:顧客の顔を見定める
まず1つ目は、マーケティングの王道とも言えますが、「何を売るか」より「誰に売るか」が重要であるという点です。著者は次のように説きます。
「一番最初に着手すべきなのが、顧客の顔を見定めることである。自分たちのサイトの顧客とはいったい誰なのか、どんな人を相手にしようとしているのか、まずは顧客の顔を見定める。唯一性のあるECサイト作りのファーストステップは、ここに尽きる。」
ECサイトでもウェブメディアでも、顧客の顔が思い浮かばないまま、商品(あるいはコンテンツ)を揃えていっても、「誰の心にも響かない」サービスになることは目に見えています。
2:自分自身がそのサイトの1番ファンになる
著者は成功しているECサイトには、「既存の店や品ぞろえには納得がいかなかったから、自分が満足できる店を開いてみた」というパターンが多いことも指摘しています。
「もし、顧客の顔を見定めることがどうしても難しいようであれば、視点を『自分自身』に置いてみよう。自分だったらこういう商品を買いたい、こういう店でこんな風に商品を買い求めたいといった具合に、『自分』を起点にして店作りをしていく方法だ。」
3:模倣されないサイトをつくる
こちらもECサイトのみならず、ウェブサービス全般にいえることですが、「模倣」や「競合」に対する重要なアドバイスが紹介されています。
著者も、ファッションECサイトのリニューアルを手掛けて数ヵ月後、大手企業によってトップページからほとんど区別がつかないほどの「模倣」を受けたことがあるそうです。
「もしあなたのECサイトが話題を集め、多くのファンをつかみ、順調に売り上げを伸ばしていけば、いつか必ず模倣される。(中略)結局、本当の意味で模倣されないためには、模倣が難しい土台を確立するしかない。
なぜこのECサイトを立ち上げたのか、どういう思いでこの商品を扱い、このデザインにし、このサービスを提供しているのかという、サイトの根幹に関わる哲学の部分である。この哲学がしっかりしてさえいれば、追随する模倣サイトが登場しても、決して恐れることはない。」
競合サイトを気にしているヒマがあったら、顧客に自分たちの「哲学」を伝える方法を考え続けるべき、とまで言っています。
4:とにかく継続する
こちらはファンづくりの起点となる、情報発信におけるアドバイスです。やはりこちらもソーシャルメディアでも言われることですが、一言で「継続」に尽きるとのことです。
『ファンとのコミュニケーションにしても、情報発信にしても、カギは「続けること」にある。使い占された言葉だが「継続は力なり」なのだ。こう言うと、「どれくらいで効果が出てくるのか」「続けることに意味があるのは分かっても、なかなか実行できない」と思う方が多いかもしれないが、成果は意外に早く実感できる』
まとめと感想
ここでは紹介していませんが、取り上げられている25事例は、いくつかは既知のものもありましたが、どれもアイデアフルで、ECやウェブサービスを考える上で直接的にヒントになる事例でした。
サービスにおけるストーリーの重要性を痛感できると思います。ECサイトやウェブサービスに携わる方だけでなく、入門書として異業種の方にもお薦めです。
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