書評『ジェフ・ベゾスはこうして世界の消費を一変させた』
(桑原晃弥/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 挑戦 アマゾンのように、すべては小さな源流から始まる
第2章 顧客志向 アマゾンのように、多くの恵みを与えよ
第3章 変化 アマゾンのように、激流であれ
第4章 組織 アマゾンのように、生態系をつくれ
第5章 精神 アマゾンのように、絶えず流れ続けよ
第6章 創造 アマゾンのように、唯一無二であれ
第7章 時間 アマゾンのように、悠久であれ
著者:桑原晃弥
 1956年広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者、不動産会社、採用コンサルタント会社を経て独立。人材採用で実績を積んだ後、トヨタ生産方式の実践と普及で有名なカルマン株式会社の顧問

90以上に及ぶジェフ・ベゾスの金言集

 本書はAmazonの創業者ジェフ・ベゾスの「言葉」から、その経営姿勢や戦略に迫った一冊。Amazonやジェフベゾスの伝記や自伝は多く出版されていますが、「名言集」のような形で90個以上の彼の言葉が解説されているのが、類書にない特長といえます。

 取り上げられる言葉の中には「当たり前ではないか」と思うものもあります。しかし、本書から学ぶべきは本文中にもあるように「当たり前のことを徹底してやり続ける」「やり続ける」というベゾスの粘り強い経営者ぶりだと思います。

 少し前に話題になりましたが、アマゾンは1兆5,000億円を超える売上高と成長率を見せながら、利益は上場以来(創業以来ですが)赤字か赤字すれすれを推移しています。参考:http://newclassic.jp/archives/2439

 つまり、ひたすら収益を再投資に回しているのですが、投資家の圧力を受けつつこの決算が市場に受け入れられているのは、相当ビジョナリーな経営者だと思います。この書評ではそれらの言葉の中からいくつか印象に残ったものを紹介します。

1:アマゾンは準備が完璧に終わらない限り、事業を開始しない。

 ネットビジネスといえば、リーン開発など、「拙速」が重視されますが、実はAmazonは以外にも細部まで準備のうえ、新サービスなどをリリースします。キンドル日本版のサービス開始時のエピソードについて、以下のように触れられています。

 2012年、日本でアマゾンのキンドルストアがスタートした際、「開始すると予告してから4カ月が経っています」と時間がかかったことを指摘されたジェフ・ベゾスは、こう答えたといいます。

「アマゾンは準備が完壁に終わらない限り、事業を開始しない」

 出版社との契約の遅れではなく、いかに日本語を美しく表示するかといったユーザビリティにこだわった結果であるというのがベゾスの言い分でした。このような考え方(「急げ。しかし、いい加減な製品を出すことは許さない」)というのはスティーブ・ジョブズやベゾスといったカリスマ経営者に共通する考えといえるのではないでしょうか。

2:私たちが注意を払う相手は顧客であって、競争相手ではありません

 「顧客志向」という言葉に、アマゾンほど徹底して取り組んでいるところはないのではないでしょうか。書店に限らず、家電などアマゾンによって競争の構図を変えられた業界は少なくありません。では、アマゾン自身はこうした競争相手をどのように見ていたのでしょうか。

「私たちが注意を払う相手は顧客であって、競争相手ではありません」

 アマゾンが神経を使うのは「他社」の動きではなく、品ぞろえや価格、配達スピードといった顧客サービスをどれだけ充実させることができるかにこそ神経を使っているのです。

3:社員たちに、毎朝、恐れを抱いて目覚めるようにいっています。

 今や小売りの巨人となったAmazonですが、ベゾス自身は常に社員に健全な「危機意識」を持つように説いているそうです。

『「社員たちに、毎朝、恐れを抱いて目覚めるように言っています。すべてを失う可能性があるんです。それは恐怖ではなく、事実なんです」

 アマゾン設立後約20年が経ち、書店を取り巻く環境も出版社を取り巻く環境も大きく変わってしまったが、同様のことがアマゾンにも起こる可能性は充分にあります。革命を起こしたべゾスだからこそ、革命によってすべてが変わる怖さもよくわかっていると言えそうです。

4:ビジョンには頑固ですが、ディティールには柔軟です。

 Googleの創業時、ほぼ事業計画がなかったのは有名ですが、ベゾスはきちんとした2パターンの事業計画を作成していました。しかし、いずれもすぐに意味がなくなり、「ただの数字の羅列となった」といいます。

 では計画に意味がないのかというとそうではなく、「ビジョン」だけはぶらさない姿勢こそが重要であるとして、次のように語りました。

「どんどん進んでいくと、新たにやるべきことが次から次へと出てきます。過去に立てた計画に奴隷のように従うなんて、実にばかげたことです」

 ベゾスは過去の計画に引っ張られ続けることはありませんでしたが、打ち立てたビジョンである、①常に顧客中心に考えること。②発明を続けること。③我慢強くあること(発明には長い時間がかかるので)の3つはしっかりと守り続けると断言しています。

 本書では上記のようなベゾスの言葉が「挑戦」「顧客志向」「変化」「組織」「創造」といった章立てで、解説とあわせて見開き1ページずつおさめられています。90以上もあるので、必ずいくつかは日々の仕事や、経営のヒントになる言葉が見つかるはずです。ウェブビジネスに携わる方はもちろん、対カスタマー向けのビジネスに携わっている方にも、使える内容が詰まった本です。

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