書評『なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?』
(フィリップ・デルヴス・ブロートン/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
序章 世界を動かしているのはセールスだ!
第1章 拒絶と失敗を受け入れる
第2章 ストーリーと共感力で売り込む
第3章 生まれつきか、経験か
第4章 教祖と信者
第5章 誰にでもチャンスはある
第6章 芸術作品を売るということ
第7章 仕事と自我を切り離す
第8章 複合的な才能
終章 ものを売る力と生きる力
著者:フィリップ・デルヴス・ブロートン Philip Delves Broughton
 バングラデシュに生まれ、イギリスで育つ。1994年、オックスフォード大学ニューカレッジを卒業後、デイリー・テレグラフの記者として25カ国以上で報道に携わる。同紙パリ支局長を経て、2006年にハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得。その後、アップル、カウフマン財団でライターとして勤務し、現在はフリーのジャーナリスト。
 最初の本である『ハーバード ビジネススクール――不幸な人間の製造工場』はニューヨーク・タイムズのベストセラーとなり、フィナンシャル・タイムズとUSAトゥデイの「ビジネスブック・オブ・ザ・イヤー」に選ばれる。妻、二人の息子とともにアメリカ在住。

書評レビュー

「セールス」は生きていくために必要なスキル

 本書は、ハーバード大学MBA取得者でもあるジャーナリストが、「なぜビジネススクールでは営業を教えないのか?」という切り口で、世界中のトップ・セールスパーソンを直接訪ね、その成功事例と、彼らが大事にしているノウハウとスタンスをまとめた一冊。

 営業・セールスに携わっている方、または、営業や売り込みに苦手意識のある方にお薦めできる内容です。著者は、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得のジャーナリスト。いわゆるノウハウ本ではなく、営業を巡るストーリーを解説していますが、様々なタイプの「営業マン」からスキルとスタンスを学ぶことができ、飽きさせない内容になっています。

 取り上げられる人物は、モロッコの絨毯売りから第一生命で年収数億円のトップを走り続けるセイホ(生保)レディ、元広告代理店のプルデンシャル生命の日本人トップセールスマン、テレビ通販のカリスマ営業マン、不動産営業、ニューヨークの絵画商、宝石商…など多岐にわたります。

 著者が「セールスを文化や産業に固有の問題としてではなく、どんな人種にも産業にも共通する人間の営みとして考えてみようと思った」「セールスに欠かせない資質(忍耐力、自信、粘り強さ、感じのよさ)は、人生においても必要なものだ」と述べてるように、本書の趣旨は、世界を動かしているのはセールスであり、「営業力」はビジネスのみならず、「生きてゆく上で必要なスキル」であるというもの。

 この書評では、いくつかの事例から売れる営業マンのスタンスをご紹介します。

売れる営業マンから学ぶ4つのスタンス

1.営業とは「ものを買ってもらうこと」ではない

 こちらは、著者のハーバードMBAの同級生でもある、ライフネット生命社長、岩瀬大輔氏の解説からとったものですが、本書の内容と成果をあげている営業マンの考え方をよく表していると思います。

 営業とは、つまるところ何なのか。狭義では特定の商品を金銭の対価をもらって買ってもらうことだが、ノンプロフィットの団体が寄付を集めることも営業である。物は買ってもらわなくても、お金をだしてもらうとか、お金はだしてもらわなくても手伝いをしてもらうためにする行動も営業だ。(中略)つまり営業とは「自分の想いを相手に伝えて相手の心を動かして行動を起こしてもらうこと」なのだ。

2.断られた回数がいちばん多かった人ほど売上金額が多い

 また、著者は、断られてからがスタートである、としてフランス人心理学者のクロテール・ラバイユの研究を引用しています。「ノー」と言われた回数の多いセールスマンほど、顧客への訪問回数が多く、新たなことを試し、失敗も重ねていたことがわかったそうです。

 『優秀なセールスマンを「ハッピーな負け犬」と呼ぶ。彼らは拒絶を勝利への第一歩と受け止めるからだ。英雄伝説の主人公のように、拒絶を自己変革のバネにするのである。(中略)

 ラバイユは、数企業で毎週セールスマンたちとミーティングを持ち、その週に受けた「ノー」の数を訪ねていた。すると、受け取った「ノー」の数が多いほど、売上の金額も多いことがわかった。それらの「ノー」は彼らの努力と創意工夫の表れだったのだ。

3.営業は紹介につきる

 また、第一生命のトップ生保レディ・柴田さんの事例から、下記のような考え方を抽出しています。「営業は紹介につきる」というエピソードです。

 自分のお客様たちに大企業を紹介してほしいと頼んだ。断られると、小さな会社でも紹介してほしいと食い下がった。そうした紹介客の多くが契約につながった。「簡単なことじゃないですよ、全然」と彼女は言う。「でも、紹介が紹介を呼ぶようになると、どんどんお客様に会えるようになるし、いろいろと教えて頂けて、売上があがるようになってくるんです

4.「お客様、何かお探しですか?」は禁句

 そして、百貨店売り場スタッフを変える優秀なトレーナーの教えから、具体的なスキルについても言及されています。

「デパートの店員には、顧客に笑いかけ、ノーと言われない質問をするよう心掛けさせる。お客様に『何かお探しですか?』は禁句だ。その場でイエスかノーかがはっきりしてしまうからだ。最悪なのは、「別に」と言われることだ。(中略)

『百貨店の店員は、自分を抑えていかなければなりません。もしあなたが店にはいったとたん、店員がいらっしゃいませといって近づいてきたら、ちょっと警戒してしまうでしょう。自分を抑えて一歩引き、顧客の行動をじっと観察してから動くというのは、自然にできることじゃないんです』」

 本書では他にも、営業の効率化をはかるウェブサービスである、のSalesforce.com(セールスフォース)が泥臭い営業でシェアを増やしていったエピソードなど、興味深いエピソードが数多く紹介されています。「営業」に苦手意識をもっている方こそお薦めしたい一冊です。自分の状況にあったセールスのモデル、そしてスタンスを学べるはずです。

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