書評『MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体』
(田端信太郎/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1章 はじめに
第2章 一般ビジネスパーソンもメディアの知識が必要な時代
第3章 「メディア」とは何か?
第4章 そこにメディアが存在する意味――影響力の本質
第5章 「コンテンツ」の軸でメディアを読み解く
第6章 「メディア野郎」へのブートキャンプ
第7章 メディアとテクノロジー
第8章 劇的に変わるメディアとメディア・ビジネス
第9章 拡大する個人型メディアの影響力とこれから

著者:田端信太郎
 1975年生まれ。NTTデータに入社し、BS/CSデジタル関連の放送・通信融合の事業開発、JV設立に携わったのち、リクルートへ。フリーマガジン「R25」の源流となるプロジェクトを立ち上げ、R25創刊後は広告営業の責任者を務める。その後、2005年4月にライブドアに入社し、ライブドアニュースを統括。ライブドア事件後には執行役員 メディア事業部長に就任し経営再生をリード。さらに新規メディアとして、「BLOGOS」や「MarketHack」、「Techwave」などを立ち上げる。
 2010年春からコンデナスト・デジタル社へ。カントリーマネージャーとして、以前から運営されていた「VOGUE」のウェブサイトに加え、「GQ JAPAN」、「WIRED」のデジタルマガジンなどを新たに立ち上げながら、デジタル事業の成長と収益化を推進。2012年6月 NHN Japan株式会社 執行役員 広告事業グループ長に就任。「LINE」「NAVERまとめ」「livedoor」などの広告マネタイズ全般を統括する。

書評レビュー

「メディア野郎」によるメディア・ビジネス入門書

本書は、LINE、Livedoorニュースなどの仕掛け人である著者が、メディアビジネスの過去、現在、未来、そして影響力の正体を解説した一冊。ウェブサービスやメディアを志す方は必読の内容だと思います。

著者は、NTTデータ(BS放送)→リクルート(「R25」)→Livedoor(Livedoorニュース、BLOGOS、MarketHack、Techwave)→コンデナスト・デジタル(VOGUE、GQ JAPAN、WIRED、LINE、NAVERまとめ)など、一貫して「メディア野郎」としてキャリアを積んできた田端信太郎氏。

コンテンツの3類型、ペルソナ、メディアとテクノロジー、アンバンドリング(分割)とリワイヤリング(再編集)など、縦横無尽にメディアの在り方が語られ、ウェブメディア時代のメディア入門書ともいえる内容になっています。

詳細は本書に譲りますが、メディアにおけるコンテンツは、それこそ源氏物語からニコニコ動画まで、以下の3軸をもとに分類することができるといいます。

1.ストック/フロー(保存型なのか一過型なのか)
2.参加性/権威性(ユーザ参加型なのかキュレーション型なのか)
3.リニア/ノンリニア(1話完結なのか連続して読む必要があるのか)

そして、ネット普及のおかげでコンテンツの流通量が増え、メディアそのものの価値も以前と比べて下がってきています。それはそのまま広告費の減少につながってしまうのですが、ではメディア側はどのように対処すればよいのでしょうか?著者は以下の3つがポイントになると説いています。

安売りされないメディアをつくる3つの方法

1.「ペルソナ」の設定

ペルソナとは「実際のユーザーを、単なる定量的な属性データの共通項(性別、年齢、居住地など)からではなく、もっと感性的、心理的な情報も含めてイメージできるように、擬人化したもの」と定義されています。

このペルソナは紙媒体の時代から重視されていたのですが、ウェブ全盛の時代においてもますます重要であると述べられています。

なぜなら、このペルソナが設定しきれていない(読者の「顔」が思い浮かばない)メディアは、広告主も読者にもライターにとっても、非常に魅力のないメディアになるからです。それゆえ、ペルソナの設定が改めて重要性になってくることを、著者はこのように述べています。

広告主に向けて語られる「読者ペルソナ」の設定が、広告主の脳内に呼び起こす「ああ、このメディアはウチの製品のターゲットユーザーに近いな!」というシズル感が強ければ強いほど、広告メディアとして、単なる「クリックいくら?インプレッションいくら?」のコモディティ商売からの脱却も可能になりやすい

2.PVを軸にしたKPI構造の把握

そして、売れるメディアにしていくためには、メディア経営のエコノミクス(事業運営に関する計数構造)についての理解も必要不可欠です。

具体的には、ウェブメディアの共通指標である「PV(ページビュー)」を軸に、「追加で1PVを獲得するために、何円のコストをかけられるのか?」「PVを軸にした各種KPI(UUあたりPVなど)のロジックツリー構造の把握」が重要になると説かれています。

さらに「KPI間でのトレードオフ構造の把握」も必須です。KPI間のトレードオフとは具体的には以下のような状況です。

ツイッターやフェイスブックからの「ソーシャル流入」が大きく増えると、その代わりに「UUあたりPV」が減少する傾向が存在します。(中略)

ソーシャルでバズが起こる記事というのは、見出しや写真・動画などのインパクトが非常に強く、その吸引力に「つられて」やってきたユーザーを大量にサイトに引き込むのですが、その記事のみを読んで、さっさとユーザーは帰ってしまう(アクセス解析用に言うと、当該記事の直帰率が80%以上と非常に高い)状況になりがちです。

そして、こうした状況への対処として、例えば、記事下に関連記事のリンク紹介などをして、UUあたりPVを増やす、などの施策を打っていくのです。

3.ブランディング

ウェブメディアのPV至上主義からは、読者のウケを狙ってとれ、というプレッシャー生じます。そして読者の趣味に迎合した記事を量産することにより、そのメディアに対する読者からの「リスペクト」が毀損していきます。

その結果、「クリックいくら?」のたたき売りとなり、ビジネスとしてもやせ細っていくことになると語られています。ではそうならないためにメディアをどうブランディングしていけばいいのか?著者は端的にこのように説明します。

この悪循環から脱する道は、読者から尊敬されるような、べたに言えば「ナメられないような存在」に、メディア編集者がなっていくしかありません。「勘違い」や「傲慢」に陥らずに、ギリギリのバランスを取りながら「俺は、私は、こう思う」的な熱き思いを読者に問い、畏怖させつつも、共感させることがその出発点となるでしょう。

著者も述べているように、「メディアの知識は現代ビジネスパーソンに必須の一般教養」です。なぜなら、グローバルでの競争下で、これからのビジネスパーソンは、「複数分野における専門性のかけ算」が差別化ポイントになるからです。ウェブメディアを志す方にも、逆にメディア事業に詳しくない、という方にもおすすめできる内容です。

新刊ビジネス書を「要約」でチェックできるプレミアム版も人気です

book-smartとは