書評『トップは志(ひと)をつくりなさい』
(西田芳明/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
序章  人をつくる建設会社の「社長」とは?
第1章 人をつくる建設会社の「経営」とは? 
第2章 人をつくる建設会社の「理念」とは?
第3章 人をつくる建設会社の「教育」とは?    
第4章 人をつくる建設会社の「生き方」とは?
著者:西田 芳明
 1951年大阪府堺市生まれ。1987年4月に2代目進和建設工業代表取締役に就任。
「地域密着」で建設事業と資産コンサルティング事業を展開し、これまでに280棟以上の賃貸マンションなどを建築。現在でも入居率95%以上を維持するとともに、さらなるマンションの開発、技術の向上、低コスト化などにも力を注いでいる。
その一方で、自らの使命は「人づくり」にあると感得。経営理念を見直すなど、社員の価値観を高める教育にも積極的に取り組み、世の中に役立つ人づくりを目指している。さらに、その熱い想いは社内だけに留まらず、業界はもちろん、就活学生といった外部の人々を対象にするものへと進化している。
著書に『行列ができるマンション経営』(しののめ出版)がある。

書評レビュー

建設業界のカリスマの「人づくり」

本書は「進和建設工業」の代表であり、「建設業界のカリスマ」といわれる西田芳明氏が、自身の経営哲学とその手法を解説した一冊。著者は大阪の地域密着型経営で、マンション建築、資産コンサルティング事業などで業績を伸ばし、またその「人づくり」をミッションにした経営が注目を浴びている人物。

本書でも、無借金経営、コストダウンなど、経営手法についてももちろん書かれていますが、何よりミッション、ビジョンや理念など「人を育てる仕組み」について書かれた内容が特長となります。

著者は、会社という組織を動かすエンジンとして「利益・戦略」は大前提としながらも、「人づくり=世の中に役立つ人間をつくる」を経営の最重要課題として掲げる意味を次のように語っています。

「利益を上げるには、人づくりが大事です。利益を出すのは人です。会社がいくら『社員を幸せにするために』といろいろなシステムをつくっても、実際に働くのは人です。だから、人づくりこそが経営ビジョンの根幹になるのです。」

経営理念の重要性

進和建設工業は、2000年代の不況下でも業績を伸ばし、著者はその頃、自社の経営ノウハウが少しでも他社の経営のヒントになればという思いから、全国を飛び回り講演活動にも注力していたそうです。

しかしその結果、社内では派閥ができ、社員定着率も下がるなど、社内の結束力やモチベーションが低下し、ついには売上がピーク時の1/3になるなど非常な苦境に立たされます。

そこで、社員と想いをひとつにするため、「経営理念」の見直しに取り組みます。そもそもの背景は、中途採用社員が定着しなかったことだといいますが、「経営理念」を見直した結果、「水が合わない」と判断した半分の社員がやめてしまいました。

中堅規模の会社にとって、従業員の数は死活問題ですが、それでも会社の方向性が明確となり、理念に共感する社員が残り、再び社内は活気を取り戻したといいます。詳細は本書に譲りますが、経営理念の見直しの際の産みの苦しみのエピソードは必読だと思います。

ローコストマンション実現のためのコストダウン

また、進和建設工業が業績を伸ばしたのは「ローコストマンション」(企画・設計・施工過程の徹底したコスト管理によって低価格化したマンション)の自社開発がきっかけでした。

「高品質・高付加価値」と「低コスト」を両立させるため、著者はまずお客様発想で、ローコストかつハイグレード(デザイン性の高いマンション)をつくるため、ヨーロッパ、アメリカなど海外へ訪問し、省力化の方法論を学びます。

そしてコストダウンのために、「数量×単価」ではなく、「数量×単価×作業性」という方針を取り入れます。つまり、50人でつくるところを40人でつくり、創意工夫により時間当たり生産性をあげるということです。「下請けを叩いてコストを下げる」ということではありません。

また、流通ルートの短縮などの施策で3割のコストダウン、価格20%ダウン、グレード10%アップを実現し、実際に入居率は95%を超えるなど好評を得ているそうです。

ローコストマンションの自社開発の成功後、多くの業者から見学が殺到したそうですが、みなコストダウンのノウハウや単価だけ聞いて、協力会社を泣かせることでコストダウンを実現しようとしてしまうそうです。

しかし著者は、協力業者へいかに利益を残すかという「三方よし」、さらには「顧客の三方よし」(マンション開発であれば、オーナーの顧客である入居者や管理会社)の観点こそ、企業の公共性や人づくりの原点となると説いています。

まとめと感想

本書ではほかにも理念、ビジョン・ミッション、人づくり、地域密着型経営など、著者も師事しているという稲盛和夫氏の経営哲学にも通ずる、経営の原理原則がシンプルに書かれています。

社員育成の3・3戦略、適材適所の考え方、「大企業化」ではなく「分社化」など、「人を育てる」具体的な手法も紹介されていますので、経営者の方はもちろん、これから経営者を目指すマネジメント層にもヒントとなる内容です、ぜひご一読ください。

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