書評『リーダーにカリスマ性はいらない 』
(赤井 誠/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
1.リーダーはデスクで待つな、オフィスを歩け
2.リーダーは話を聞き、話を「つくれ」
3.リーダーはクレームを「処理」するな
4.リーダーは「イシュー」からはじめるな
5.リーダーは「共通言語」を使え
6.リーダーは自分で考えるな、他人の仕事をコピーしろ
7.リーダーは「わからない」ではなく、「覚えていない」と答えろ
8.リーダーはブレークスルーを狙うな
9.リーダーは自席に部下を呼びつけるな
10.リーダーは部下の仕事に優先順位をつけるな
11.リーダーは部下の数だけ「時間軸」を持て
12.リーダーは自分で誉めるな、重役を使え、ほか計24章
著者:赤井 誠
MKTインターナショナル株式会社 代表取締役社長。1966年、和歌山市生まれ。京都大学工学部卒業。神戸大学大学院修了(経営学修士)。米国テキサス州立大学ビジネススクール留学。日本キャリア開発協会認定 キャリア・デベロップメント・アドバイザー。

1991年、日本ヒューレット・パッカード社入社後、ソフトウェア開発エンジニアを経て、経営企画、マーケティングを担当。Linuxビジネスを国内トップの規模にまで成長させ、さらにはHPグローバルでも1位を達成。

2011年、起業。現在、マーケティング、事業開発、人材開発を事業の柱としている。

書評レビュー

不振事業立て直しから学んだリーダーの本当の仕事

本書は「シリコンバレーの父」と呼ばれる「ヒューレット・パッカード」の日本法人で、リーダー経験が全くないながらも300億円規模の事業を成功させたプロジェクトマネージャーの仕事術を紹介した一冊です。

著者はHP(ヒューレット・パッカード)で「伝説のマネジャー」と呼ばれ、現在は独立してITを中心に人材開発や事業開発を手掛ける赤井誠氏。HPに入社し、約10年間エンジニア業務に従事した後、異動により、マーケティング部門に配属されました。

マーケティング部門に配属されてそれほど日も経っていないことや、エンジニア業務とは畑違いのであることなどもあり、先輩社員の後について仕事をしていたため、自分からチームをリードすることはまったく考えていなかったようです。

そんな「リーダー」とは縁遠い経歴だった著者の運命が変わったのは、トップから直々に、不振だったLinux(OS)事業のリーダーに任命された時でした。

当時のHP日本法人のLinux事業は業界シェア最下位であり、全世界のHPグループ内でも出遅れていたため、至急テコ入れをする必要がありました。

そんな逆境下で、リーダー経験のない著者は、どのようにして数千万円規模のプロジェクトを300億円事業まで成長させることができたのか。その秘訣は、MBAなどのビジネススクールで解説されているものとは異なる、新しいリーダーシップにあったといいます。

本書では、事業のスタートから成功までのストーリーに沿って、様々なシーンで実際に必要とされた新しいリーダーシップ(リーダーとしての仕事術・思考術)が紹介されていますが、この書評では特に印象に残った”リーダーは「イシュー」からはじめるな”という内容を紹介していきます。

リーダーは「イシュー」からはじめるな

不振事業のテコ入れを行うプロジェクトリーダーに任命された場合、一般的には、不振の原因である大きな課題に目を向けて、それを解決しようとすることが多いのではないでしょうか。

ビジネススクールなどでも『新プロジェクトをはじめるときは、まず「イシュー」を特定して、その解決に取り掛かるべきだ』と解説されることがしばしばです。

しかし、Linux事業でもそうだったように、現実的にはトップの判断待ちであったり、多大な工数がかかるなどで「イシュー」がの解決から手を付けるのが得策ではないも多いのです。

このことを著者は以下のように説明します。

『いきなり「本質的な課題」に取り組むリーダーは愚かだ。まずは小さな成果を積み重ねて、短期間で一気に信頼を獲得しなければならない。(中略)

まずは短期間で目に見える成果を出す。そうすれば、その成果を社内・社外のステークホルダー(利害関係者)にアピールし、彼らの信頼を獲得できる。これこそがリーダーがまず最初にやるべき仕事なのだ。』

つまり、まずは「小さくて面倒な仕事」を引き受けることで、「短期間」の成果を生み出すと同時に、「長期的」かつ大きな成果を生み出すために必要な信頼関係を構築することに務めたのです。

その結果、いろいろなトラブルが著者のところに持ち込まれることになり、様々なステークホルダーとの関係基盤は強固なものになりました。

そして、さまざまな部署の協力を得ることができるようになり、懸案だった「イシュー」は解決されるに至ったのです。

上述の通り、本書では「リーダー経験なし」「カリスマなし」の状況でプロジェクトリーダーという重責を担い、苦しみながらもプロジェクトを成功に導いた仕事術と思考術が、豊富なエピソードを交え紹介されています。

単純なプロジェクトマネジメントではなく、現実的なリーダーシップが語られた一冊として、著者同様エンジニア出身の方はもちろん、マネジメントに苦手意識がある方の入門書としてもお薦めできる内容です。

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