書評『ウォートン・スクール ゲーミフィケーション集中講義』
(ケビン・ワーバックほか/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
監訳者まえがき――「遊び力」
なぜビジネスを楽しくできないのか?
Level. 01 ゲームを始めよう――ゲーミフィケーションの基本概念
Level. 02 ゲームシンキング――ゲームデザイナーの考え方を学ぶ
Level. 03 なぜゲームが有効なのか――モチベーションの原則を知る
Level. 04 ゲーミフィケーションのツールキット――ゲーム要素を理解する
Level. 05 ゲームをデザインする――ゲーミフィケーションへの6つのステップ
Level. 06 エピック・フェイル(大失敗)――失敗やリスクを避けるには
Endgame まとめ
著者:ケビン・ワーバック Kevin Werbach
 ペンシルベニア大学ウォートン・スクール法律学准教授、技術コンサルティング会社スーパーノヴァ・グループ創業者。ネットワーク時代の法律、ビジネス、公共政策に関する第一人者であり、オバマ大統領の政権移行チームのために連邦通信委員会(FCC)の審査を共同で統括、FCCと電気通信情報局へのブロードバンド問題の技術顧問を務めた。クリントン政権ではFCCの新技術政策顧問として、アメリカ政府のインターネットと電子商取引の政策策定を支援した。テクノロジー関連の幅広いテーマについて、学術向けや一般向けの記事を多数執筆し、CNN、NPR、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ワシントン・ポストなど、各メディアにも頻繁に登場する。カリフォルニア大学バークレー校およびハーバード・ロースクール卒業。

著者:ダン・ハンターDan Hunter
 ニューヨーク・ロースクール法律学教授、同校情報法政策研究所ディレクター、ペンシルベニア大学ウォートン・スクール法律学非常勤準教授。インターネット法、知的所有権、公共政策分野へのゲームの適用を専門とする。メルボルン大学やケンブリッジ大学法学部で教鞭をとったこともあり、ウォートン・スクールでは終身在職権を持つ。バーチャル世界やテレビゲームの規制、ハイテク技術の知的所有権をはじめとして、コンピュータと法律が交差する分野について、カリフォルニア・ロー・レビュー、ジャーナル・オブ・リーガル・エデュケーションなどの学術誌に寄稿している。MMOG(大規模多人数参加型オンラインゲーム)の社会的重要性に関する最初の研究者のひとりで、学究的なブログのテラ・ノヴァ(terranova.blogs.com)を共同で設立。本書のほかに3冊の著書がある。

書評レビュー

なぜいま「ゲーミフィケーション」が重要なのか?

本書は、MBAで有名な「ペンシルべニア大学ウォートン・スクール」で実際に講義されている「ゲーミフィケーション」講座の内容をまとめた一冊。

「ペンシルべニア大学ウォートン・スクール」といえば世界最古のビジネス・スクールであり、アメリカのビジネスウィーク誌による大学ランキングで10年連続ナンバーワンに輝いた世界トップクラスのビジネス・スクールです。

そんなウォートン・スクールで、ビジネス・スクールとして初めて体系化され、今世界で注目を浴びている講座が「ゲーミフィケーション」なのです。

「ゲーム」と聞くと、どのようなイメージを抱くでしょうか?おそらくTVゲームをまっさきに思い浮かべる方が多いのではないかと思います。

海外では、チェスやゴルフなども「ゲーム」と広く呼ばれているようですが、その本質は、ゲームの「楽しさ」に「モチベート」されて、「プレイ」を続けてしまう、という点にあるのではないでしょうか。

この「楽しさ」によるモチベーションの喚起は、ゲームだけでなく、ビジネス・シーンにおいても有効である、というのが筆者の考え方の中心となっています。

「出来の良いゲームは、モチベーションという人間心理の誘導ミサイルとなる。ゲームが教えてくれる教訓を使えば、ビジネスに革命をもたらす可能性もあるのだ。」

本書では、ゲームデザインやゲームシンキングを通じて、いかにゲームの要素をビジネスに落とし込んでいくのか、また、その結果どのような効果がうまれるのか等が、体系立てて解説されています。

「ゲーミフィケーション」の定義とは?

昨今耳にする機会の増えた「ゲーミフィケーション」ですが、その定義については、実は「一般化された定義は存在しない」と述べています。

そこで、筆者は、次の実用的な定義を用いて、「ゲーミフィケーション」を解説しています。

『ゲーミフィケーションとは、非ゲーム的文脈でゲーム要素やゲームデザイン技術を用いること』

これでは少し分かりづらいので、さらにこちらを3つの要素から説明します。

「ゲーミフィケーション」の3要素

ゲーミフィケーションの3要素は、「ゲーム要素」、「ゲームデザイン技術」、「非ゲーム的文脈」となっていますので、今回はそれぞれを簡単にご紹介します。

・「ゲーム要素」
ここでいうゲーム要素とは、例えば、将棋でいうところの「駒」や「駒の動きに関する決まり事」を指します。

将棋では、このゲーム要素をいじることはできませんが、ビジネス・シーンにおいて「ゲーミフィケーション」を活用するときは違います。

『ゲーミフィケーションでは、規則を曲げることが、まさにデザイナーのやるべきことなのだ。デザイナーはゲーム要素を微調整し、その経験の魅力を高め、特定のビジネス目的に合わせなくてはならない。重要な点は、ゲームではないアクティビティ(活動)にゲーム要素を組み込めることである。』

・ゲームデザイン技術

「ゲーミフィケーション」は、例えば、自社のWebページへのユーザーの誘導などにも使うことができるのですが、ただ単に上述のゲーム要素を入れればいいというわけではないとのことです。

『どのゲーム要素をどの部分にどんな形で付与すれば、全体的なゲーミフィケーション体験が各要素の合計を上回るようになるか、これはまさしくゲーム技術で問われる部分である。

ゲームデザインとは、科学が少し、アートが少し、それに、たくさんの苦労の末に得られる経験である。その点では、戦略的なリーダーシップ、チームマネジメント、決定的なマーケティングキャンペーンの策定となんら変わらない。』

何千万ドルも費やしたオンラインゲームが失敗するのは、この「ゲームデザイン」の難しさから来ていると解説されています。

・非ゲーム要素

そして、「ゲーミフィケーション」で重要なことは、ゲーム要素を現実の世界で効果的に用いることだと述べています。

『重要な要素として、現実のビジネスや社会的影響という目的が介在している。プレーヤーたちは、城を攻撃するのではなく、ウェブサイトの中を探索する。ゲーミフィケーションの仕組みをデザインする際には、このことを念頭に置くことが大切である。』

まとめと感想

本書は、世界で初めて「ゲーミフィケーション」をビジネスクールの講義として解説した一冊だけあって、今までの「ゲーミフィケーション」に関する類書と比較して若干難解な内容かもしれません。

ただし、「ゲーミフィケーション」がビジネスに役立つ理由を「関与」、「実験」、「結果」の観点から解説するなど、体系立てられた解説が特徴です。総論から各論まで把握ができる珍しい一冊だと思いますので、「ゲーミフィケーション」の参考書代わりに使ってみてはいかがでしょうか。

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