書評『部下を持ったら必ず読む 「任せ方」の教科書』
(出口 治明/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
1章 上司になったら「任せるしくみ」をつくりなさい
2章 デキるリーダーは常に「いい任せ方」をしている
3章 「プレーイング・マネージャー」になってはいけない
4章 この上司力で「チームの実力」を一気に上げる
5章 「時間を殖やす」「成果を殖やす」人材マネジメント
著者:出口 治明
1948年、三重県生まれ。ライフネット生命保険株式会社・代表取締役会長兼CEO。京都大学法学部を卒業後、1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立(のちのライフネット生命保険株式会社)、代表取締役社長に就任。

書評レビュー

本書は、岩瀬大輔氏とともに60歳でライフネット生命を創業し現在はCEOの出口治明氏のマネジメントの教科書的一冊。

特にサブタイトルにあるように、プレイングマネジャーではなく、「任せる」マネジャーになるための考え方から実際の業務の振り方まで、具体的に書かれています。「丸投げ」ではないところがポイントです。

ユニークな経営手法や言動でも知られる著者ですが、ところどころにその柔軟な発想が感じられ、マネジメントクラスの方以外にも参考になる内容ではないでしょうか。

「任せる」ための基本的な考え方

そもそも、なぜ仕事を部下に「上手に任せる」必要があるのでしょうか。その基本的な理由が、以下のように書かれています。

「その理由の一つを端的に言えば、『人間の能力は、それほど高くない』からです。ここでいう『人間』とは、部下のことではありません。上司の側のことです」

また、部下の仕事ひとつひとつを細かく確認するスタイルでは、目をかけられるのは2~3人であり、それ以上の人数を見ようとすると「茶坊主(権威者におもねる人)」ばかりの組織になってしまうとも指摘しています。

「権限」を明確にする

では、どうやって任せていけばいいのでしょうか?多くの実例とアドバイスが書かれていますが、特に重要なものとして、「権限」をはっきりさせることが挙げられています。

具体的には「誰に」「何を」「どこまで(いくらまで)」というルールになります。企業は責任の所在を明らかにするためにも、また意思決定のスピードを早くするためにも、『権限の範囲』を社員に周知すべきだと説かれています。

「『誰が、何を、どこまで(いくらまで)決定できるのか』『自分が追うべき責任は、どこまでなのか』といった『物事を決める時のルール』をはっきりさせておかないと、仕事を任せる側も、任される側も業務に注力できません。

『100万円未満は課長が決めていい』と範囲がわかっているから、課長は50万円のコピー機を自分の権限で購入できるのです。」

誰に任せるのかを決める

また本書ではマネジャーの悩みの種である「どの業務を誰に任せるか」(適材適所)についても、投資運用ファンドマネジャーの育成の例えを挙げながら、次のように説いています。

「人の性格は、そう簡単には変わりません。弱気な人に『もっと強くなってこい』と修練を積ませても、時間をかけたわりには大きな変化は期待できません。だとしたら、その人に向いている仕事を任せたほうが成果は望めます。上げ相場の時には、強気のファンドマネジャーを起用する。下げ相場の時には、弱気のファンドマネジャーを起用する。」

つまり、得手不得手に合わせ、一人のファンドマネジャーに、上げ相場も、下げ相場も任せるのではなく、二人を組み合わせながら、任せるという合理的な考え方です。

それゆえ著者は、「いまがどういう局面なのか(上げ相場なのか、下げ相場なのか)を察知し、局面に応じて『任せる担当者を変えていく』のが社長(上司)の仕事」と語っています。

まとめと感想

本書ではほかにも「的確な指示を出すための4条件」、ダイバーシティ(多様性)、「人間の特性の2パターン(鉄タイプと瓦タイプ)」など、任せるマネジメントに必要十分な内容が端的にまとめられています。

一読して、60歳を超えた出口氏の考え方が非常に柔軟な点に驚きます。その源泉は「人から学ぶ」「本から学ぶ」「旅から学ぶ」経験とのこと。

特に、「一冊の古典は10冊のビジネス書に勝る」ということでお薦めの古典書なども挙げられていますので、ぜひご一読ください。

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