書評『マネジメントとは何か』
(スティーブン P. ロビンズ/著)

  • 目次
  • 著者プロフィール
第1部 採用
第2部 モチベーション
第3部 リーダーシップ
第4部 コミュニケーション
第5部 チーム作り
第6部 衝突の処理
第7部 職務設計
第8部 業績評価
第9部 変化への対応
著者:スティーブン P. ロビンズ、翻訳:清川 幸美 (翻訳)
元サンディエゴ州立大学教授。マネジメントと組織行動学の分野における世界一のベストセラー教科書作者。これまでの本の売上は600万冊を超え、アメリカでは1500校以上の大学やカレッジの学生に使われ、19言語に翻訳されている。特に『Organizational Behavior, Ninth Edition』は、北米をはじめ、中南米、オーストラリア、東南アジアなど、全世界的に広く紹介されている。
著書は他に『Managing Today』『Essentials of Organizational Behavior』(訳書『組織行動のマネジメント―入門から実践へ』ダイヤモンド社)など、共著に『Management』『Fundamentals of Management』などがある。シェルオイルとレイノルズ・メタルの経営陣に参加している。また、米国マスターズ陸上殿堂のメンバーであり、個人短距離走で11度の世界タイトルに輝き、米国と世界の年齢別記録を何度も塗り変えている。

書評レビュー

世界でいちばんわかりやすいマネジメントの教科書

本書は、累計600万部超の発行部数を誇る、マネジメントの教科書の著者、スティーブン・P・ロビンズによる、実践的なマネジメントの原理を示した一冊です。

マネジメント手法の何が正しく、何が間違っているのか、また、マネジメントについて何が有効で何が有効でないのか、端的にまとめた本は多くはありませんが、本書は「THE TRUTH ABOUT MANAGING PEOPLE」という洋書の新装版として新しいトピックを加えた内容で、王道的なタイトルですが、中身は非常に実践的な内容となっています。

マネジメント層が直面しやすい59の課題について、研究結果にもとづきながら、シンプルかつコンパクトに解説されているのが本書の特長です。著者は「研究成果を、専門用語を使わずに教える」というポリシーがあるらしく、まえがきではこのように書かれています。

部下の管理についての心理を学ぶのに、人事や組織行動の詳しい教科書を読みとおす必要はない、との思いからこの本を書いた。

端的に事実を知るのに、有名大学のエグゼクティブ研修コースを受ける必要もないはずだ。

具体的には、以下のような構成で、実務で遭遇するマネジメントの問題について過不足なく語られています。採用、モチベーション、リーダーシップ、コミュニケーション、チームビルディング、業績評価など多岐に渡る内容ですが、一章一章は丁度読みやすい長さで、折に触れ読み返すことができる内容となっています。

リーダーシップの本質とは何か

ここでは「リーダーシップの本質」についての章を紹介します。「リーダーシップの本質」について、本書では下記のように説明されています。

信頼はリーダーシップの本質だ。なぜなら、信頼してくれない人を導くことは不可能なのだから。

また、信頼が最も重要となる理由として、別の著者の言葉を引用して下記のようにも述べています。

部下から信頼されるかどうか、そしてリーダーが信頼に足る人物かどうかによって、リーダーが得られる情報と協力が左右されるのだ

つまり、信頼されないリーダーには情報が入ってこず、また協力も得られにくいので、必然的にリーダーとしての能力を発揮することができない、ということです。

また、著者は今日では、今まで以上に「部下の信頼を獲得する能力が、優れたマネジメント層の条件となる」と述べています。なぜなら、先行きが不確実な時代ほど、人間関係に指針を求める傾向が強まり、また権限委譲(エンパワーメント)など最新のマネジメント手法にも、信頼が前提条件となるからです。

リーダーが信頼されるための7つの行動指針

では、どうすればメンバーから信頼を得られるマネジャーになれるのでしょうか?本書では「正直さ」をベースとしながら、端的に7つの行動指針が説明されていますので、紹介します。

1.オープンであること
不信感は、知っていることからだけでなく、知らないことからも生じるため、情報をくまなく開示する必要がある。

2.公正であること
決定を下す、あるいは行動を起こす前に、客観性や公正さの観点からどう受け止められるかを検討すべき。特に報酬の配分。

3.気持ちを伝えること
事実しか伝えないマネージャーは、冷淡でよそよそしい印象を与えてしまう。

4.真実を告げること
真実を述べることは、誠実さの本質的な部分である。人は、マネジャーに嘘をつかれたことを後で知るよりは、「聞きたくない」ことも知っておくほうを望む。

5.一貫性を示すこと
人は予想通りに物事が進むことを望む。次に何が起こるかわからないと不信感が生じる。

6.約束を守ること
信頼されるには、人から頼りになると思われなければならない。

7.秘密を守ること
口が堅く頼りになる人は信頼される。自分の秘密を話したり、裏切ったりは絶対にしない、と相手に確信してもらう必要がある。

いかがでしょうか?倫理・道徳的なモットーに近いと感じるかもしれませんが、身近な信頼できるマネジメント層を思い浮かべても、多少の人情味やヌケモレがありつつも、上記の7項目は徹底されている方が多いのではないでしょうか。

本書の想定読者として、「現にマネジャーである人々、チームリーダーからCEOまで」と書かれていますが、メンバーである若い世代にもお薦めできる一冊だと思います。マネジメントについて、非常にコンパクトかつ具体的にまとまっている良書です。

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