著者インタビュー|『やり過ぎる力』(朝比奈一郎[著])

経済産業省時代に、霞が関構造改革を目指す”プロジェクトK”を立ち上げ、現在は青山社中株式会社CEOとして「青山社中リーダー塾」などで「世界に誇れ、世界で戦える日本」を目指す人材・政策・組織づくりを行う朝比奈一郎氏。同氏の著書「やり過ぎる力」について、今回は特別編として、著者インタビューを行いました。「やり過ぎる」という言葉に込めた意図や本当のリーダーシップとは?ぜひ本書とあわせてご覧ください。(聞き手:BOOK-SMART編集部)
やりすぎる力

『やり過ぎる力』朝比奈一郎/ディスカヴァー・トゥエンティワン
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――本書「やり過ぎる力」ですが、どのような内容の本でしょうか?

ひと言でいえば、リーダーシップに関する本で、リーダーシップを持って人生を切り開いていこうという内容です。日本ではリーダーシップというと、10人、100人とかある程度の人数を率いていく「指導力」だと思われていますが、僕は「自ら始めて動く力」、つまり「始動力」だと考えています。そのようなリーダーシップの本質について書いた本です。

――この本はどのようなきっかけで書かれたのでしょうか?

きっかけとしては二段階あって、まず問題意識を持ったきっかけは、経済産業省の時の経験からです。霞が関では、いわゆる優秀な人が集まって、少子高齢化、財政問題といった日本全体の問題に立ち向かうため、みな朝から晩まで働いて頑張っていますが、実はいいソリューションが生まれているわけではありません。

なぜかと考えたときに、僕は自分自身の経験や反省も踏まえて、霞が関の官僚はゲームのルールが決まっている中で、高得点をとったりはうまくできるが、本質的な問題を自分で見つけて立ち向かう、というような力では優秀ではないのではないか?さらに言えば日本全体でもそういう傾向があるのではないか?と考えたのです。

そこで、これ以上業務時間を増やすのではなく、やり方や政策自体を変えれないだろうかと考えて、僕は役所の中で「プロジェクトK」という、霞が関の構造改革をゼロベースで若手から考えようという活動を行っていました。それが第一の問題意識です。

そして霞が関の改革を進めるなかで、それを日本全体でやりたい、霞が関だけでなく、そういう人材が日本全体で増えていかないと日本全体が活性化しないと考えるようになりました。

それで青山社中を立ち上げ、リーダー塾を始めて自分の考えるリーダーシップというのを直接僕が教える活動を始めました。そこで教えていることの、理論編のエッセンスをまとめておきたいと考えたのが、第二のきっかけ、直接の執筆のきっかけですね。

朝比奈 一郎 1997年、通商産業省(現・経済産業省)入省。2001年にハーバード大行政大学院において修士号を取得。2003年に「新しい霞ヶ関を創る若手の会(プロジェクトK)」を立ち上げ、代表に就任。2010年より現職。(>>推薦書籍一覧)

朝比奈 一郎
< 青山社中株式会社 筆頭代表CEO/中央大学大学院(公共政策)客員教授>

1997年、通商産業省(現・経済産業省)入省。2001年にハーバード大行政大学院において修士号を取得。2003年「新しい霞ヶ関を創る若手の会(プロジェクトK)」立ち上げ。2010年青山社中株式会社を設立、筆頭代表・CEO就任。
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――リーダーシップという観点で、特に本書でこだわった点などはありますか?

特に問題意識としては、ケネディスクールなどでリーダーシップについて学ぶ機会がありましたが、そのまま日本に持ってきて通じるかというと、日本ではやはり東洋的なカルチャーとか商業道徳とか、土壌が違うとも感じていました。

そこで、西洋流と東洋流のリーダーシップを融合できないか?とずっと考えていました。ですので内容としては、それまで日本にあった日本的思想やその根幹にある東洋思想と、西洋のリーダーシップ思想を日本流に融合したものになっています。

たとえば、スティーブ・ジョブスの伝記などを読むと、東洋思想的な一面と、アメリカンドリームを体現したアメリカ人としての生き方が混ざり合っているわけです。これからの時代は、東洋・西洋の考え方の融合がさらに進むはずです。そういうものを公式化、見える化できないかと考えてまとめた意識が強いですね。

――「やり過ぎる力」というタイトルにインパクトがありますが、このタイトルにこめた想いや、そもそもこの言葉が出てきた背景などを教えてください。

「やり過ぎる力」という言葉にはネガティブなイメージ(あいつはやり過ぎだ、など)もありますが、あえてこの言葉を使ったのは、やはり日本のリーダーシップへの理解には、大きな誤解があると思っているのが出発点です。

日本でリーダーシップといえば、ついていきたくなる、とか慕われる、といった認識が強いですが、実はリーダーシップの本質には、嫌われてもやる、とか反対されてもやる、ということがあります。それを一言であらわすと「やり過ぎる力」と表現できるのではないかと考えてのことです。

また、日本人は前例とか、ルールとかを調べるのは得意だが、その枠にとどまってしまう。その枠を超えるというのも「やり過ぎる力」であって、それぐらいやらないとだめだ、という意味も込めています。

――やはりポジティブにもネガティブに受け止められている可能性も踏まえたうえで、あえてこの強い言葉を選ばれたのですね

実はタイトルで悩んだ部分もあります。僕の時代認識としては、潜在的にリーダーシップがあると思われていながら発揮しきれていないない人には、後述の通り2つのタイプがあるように思えますが、特に前者向けにタイトルを決めました。

1つめはリーダーとして国や社会を良くしようと考えている人。それらの人は国や社会のあり方、自らの使命等についてよく考えているが、自分の所属組織の掟や仕事のやり方などの既存の枠組みから脱しきれない、という傾向がある。もっと変革に向けてアクションをとっても、「やり過ぎても」いいのでは、と思うことがあります。

もうひとつは、変革に向けてアクションをし続けている人。それらの人は逆に、国や社会を全体としてどうしていきたい、という観点が少し薄いというか、単視眼的になっている傾向があるのではないでしょうか。「税率が低いから外国に会社を移す」とか「ゴミがここに落ちているから拾う」と言った具合に。どうしてゴミがここに流れ着くのか、それを取り除くにはどうすれば良いか、までは考えない。

たとえば松下幸之助氏、盛田昭夫氏など、本当にグローバルなリーダーは、その両方ができている、つまりアクションもできるし、国や社会についても全体感をもって考えていることがわかります。本書の中では思い切った変革も、巨視的な視野も両方とも大事だというメッセージを書いていますが、タイトルとしては、どちらかというと動けない人に向けて「もっとやり過ぎよう」というタイトルにしています。

色々見すぎてしまうと動けないという部分もありますが、それを見たうえで、それでもやるんだという迫力をつけてほしい、そしていまアクションできている人にも、大局観をもって国や社会全体を考えてやり過ぎてほしい、というのが本当の狙いともいえます。

◎IMGP7557――特に初めて読者が読まれたときに、本書からこういうところを読み取ってほしい、という部分はありますか?

それは3つあって、1つ目は「現状認識」です。世界はいま、大きな構造でいうと政治も経済も激変していて、私たちは激動の時代に生まれたんです。その現状認識をデータとファクトで理解できるように示しています。

2つ目は、その現状認識のなかで、「感動の隣には『やり過ぎ』がある」とも書きましたが、自分の人生をどう輝かせていくか、場合によっては大きくアクションをとってほしいと思っていて、そのためにはどうすればいいかを書いた部分。

3つめ目は、近年では手軽にリーダーシップを身に付けるというようなノウハウに走りがちだが、手軽に学ぶというのは甘い、というメッセージです。手軽にリーダーシップが身に付く、ということではなくて、100のアウトプットが出したければ、200も300もインプットしなければならない、ということでしょうか。

――出版されて約1年、いまの日本社会(アベノミクスがあったりなど)におけるリーダーシップや、「やり過ぎる力」をめぐる状況はどのように変化されたと思いますか?

社会全体から少し危機感が薄れてきているのではないか、という印象は持っています。出版当時は安倍総理の就任直後で、少し前には震災もあったり、日本はこれからどうなるのか、という危機感が強かったと思います。そこから見ると、現在は景気もプチバブルを迎え、震災もやや風化しつつあるような状況です。

ただ、この本で言っているような世界的な構造の変化や、少子高齢化とか地域社会の衰退などの構造上の問題は完治したわけではありません。端的にいえば表面上の安定をしているだけなので、特に若い世代中心に、20年30年というスパンで考えて、もっと危機感を持ってやっていかなければならないことは変わりません。

ただ、リーダーシップという言葉や、リーダーシップの本質は何なのか、ということは以前より浸透してきた感覚はあります。自分で考えてリーダーシップを持って動かなければいけないという認識は広まってきているので、実践という次の段階はありますが、第一段階としては良いと思っています。

――特にこういう方に手にとってほしい、というのがありましたら教えてください。

日本とか自分の人生に漠然とした不安を抱えている方、でもポジティブに生きていきたい人にとっては、多くの気づきがある一冊だと自負しているので、ぜひ手に取って頂きたいですね。

◎IMGP7544――お忙しい中で、どのように読書時間を確保したり、読む本を選ばれているのか教えてください。

特に最近はまとまった時間をとることが難しいので、僕は深夜などに毎日、1時間程度、まとまった時間に読みます。また、僕は好きだから読む、というのが大切ではないかと思っています。義務になってしまうと頭に入ってこないので、好きでなかったら無理しなくてよいのは?という立場です。

僕にとっての本の位置づけは、自分が本当に好きな分野の知見を増したりするときに読むことが多い。「読書百遍(ひゃっぺん)、意(い)自(おの)ずから通ず」というように、気に入った本を何度も読むことが大事だと思っています。

現状でいえば、本もかなり多く出版されているし、量を追いかけると右から左ということにもなりかねないので、むしろじっくり好きな作家や好きなジャンルをじっくりと味わったほうがいいのではないでしょうか。

僕はリアルタイムに動く情報(政治・経済)などはウェブや新聞で読むことが多く、新聞の書評欄などを見て大体どのような本が出ているかを把握しています。Facebook、Twitterなどもそうですし、雑誌もかなり多量に読んでいるので、その中で気になる本があれば買うという選び方ですね。

――BOOK-SMARTについてお気づきの点があれば教えてください。

自分がなりたい人やシンパシーを感じている人が読んでいる本、というように深掘っていったり、要約ダイジェストを読んで、ここから深掘りする、精読するためのものとしては非常によいのではないでしょうか。(了)

 

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国や社会に思いを馳せつつ、リスクをとって社会や組織の変革に挑戦する人材の輩出を掲げ「魂に火をつける教育」を目指す。松下村塾や札幌農学校からヒントを得て、若手が若手を教えることで押し付けではなく、個性を引き出し、自らの考えを発信する場を重視。リーダーシップ理論だけではなく、偉人の生き様に思いを馳せる伝記教育、文明・歴史の行方を考える教育なども実施。>>詳しく