この特集ではビジネスに活かせる東洋思想、東洋哲学に触れたいとき、最初に読むならどんな本がよいのか?そんな観点でオススメの5冊をご紹介しています。(特集一覧はこちら)
東洋哲学といえば、孔子と孟子(孔孟)に代表される儒教的思想と、老子と荘子(老荘)に代表される道教的思想、それらを含んだ「諸子百家」、菜根譚、十八史略など歴史書から処世訓まで幅広いのが、魅力でもあります。
中国古典は、漢文だけでは現代人には意味がわかりづらく、様々な先達の解釈や解説が役に立ちます。例えば、戦前戦後にかけて活躍し、政財界で支持者の多かった安岡正篤氏の著作は、東洋思想全般をわかりやすく、かつ深い本質まで解説してくれています。同じ古典に対しても、様々な解釈をも読み比べると、より理解が進むはずです。
さらに、広義の東洋思想には、インド哲学や仏教思想も含まれます。インド・中国・日本を結ぶ「東洋思想」は、その起源からして、狭い視野ではなく、中央アジアを舞台とした世界的な広がりをもっています。そうした広い視野と自己への深い洞察は、豊かな国際性が必要とされる今後の世界を生き抜くためのビジネスパーソンの強い武器となるはずです。
(1)『経世の書 「呂氏春秋」を読む』(安岡正篤/著):
東洋思想の研究に尽力し、政界・財界・皇室に絶大な影響力を持っていた安岡正篤氏の講義のエッセンスをまとめた一冊です。本書の目的は、古典中の古典である「呂氏春秋」を読み解くことで東洋人間学の原理、経世の要諦を理解すること。
安岡氏は膨大な書である「呂氏春秋」の中から名言・佳句を選び、某企業の幹部研修のため講義を続けていました。その内容を書籍化した本書は、出版から40年以上の時が経つ今でも、著者の軽妙な解説、漢文に慣れていない人にも読みやすい内容が支持され続けています。全5講の平易な内容から、中国古典の魅力とエッセンスを存分に学ぶことができるはずです。>>要約を読む
(2)『史上最強の哲学入門―東洋の哲人たち』(飲茶/著):
本書は哲学書の中で異例のヒット作となった『史上最強の哲学入門』の第二弾で、東洋哲学を学ぶための入門書といえる一冊。古代インド哲学から釈迦、竜樹、孔子、孟子、老子、荘子、そして日本の禅まで、その成り立ちから本質までをわかりやすく説いています。
著者の「飲茶」氏は元ブロガーで、少年向け人気格闘漫画『バキ』の激烈なファン。哲学初心者でも非常に読みやすい構成で、まるで格闘漫画のようなリズムで進んでいきますが、東洋哲学の本質まで踏み込んで解説されています。>>要約を読む
(3)『ハーバードの人生が変わる東洋哲学』(マイケル・ピュエットほか/著):
いま、ハーバードの若きエリートたちが「東洋哲学」に注目しており、著者の一人、ピュエット教授の古代中国思想の講義は、絶大な人気を誇っているといいます。本書では講義を再現しながら、孔子や孟子、老子らの思想の本質を解説しています。
「自分探しをするな」「ポジティブ思考も有害になりうる」「強くなるためには弱くなれ」など、その主張は一見、矛盾したものに思えるかもしれません。しかし、読み進めていけば、西洋哲学と異なる観点から「より良い生き方」を説く、東洋哲学の奥深さに驚かされるでしょう。>>要約を読む
(4)『リーダーの究極の教科書 論語』(皆木和義/著):
東洋哲学といえばまず名前があがる『論語』。儒家の祖である孔子が遺した同書は、2,000年以上にわたり、東アジア全域で読み継がれてきました。日本でも、聖徳太子が十七条憲法の冒頭で『論語』を引用したのを皮切りに、上杉謙信、徳川家康、渋沢栄一など多くの歴史上のリーダーたちが自らの行動規範としてきました。
現代でも同書を愛読書に挙げる経営者は少なくありません。『論語』で理想とされる「君子」とは、「徳の高い立派なリーダー」のこと。それゆえ、『論語』はリーダーのあるべき姿が記された「究極の教科書」と言えるのです。
本書は、そんな『論語』のエッセンスを、25の要素に分け、原文と現代語訳、ビジネスへ活かす視点を加えてわかりやすく解説。一読すれば、『論語』が人生訓としてだけでなく、今なおビジネスやリーダーの指針として大いに役立つことに気付かされるはずです。>>要約を読む
(5)『世界最高の処世術 菜根譚』(守屋 洋/著):
『菜根譚』は中国・明代末期にに洪自誠(応明)によって書かれ、処世訓の名著として、また経営者の必読書として多くのビジネスリーダーの座右の書としても挙げられています。菜根(菜っ葉などの粗食)は、かみしめれば味わい深いという故事に由来する書名の通り、短い文章のなかに本質的な人間洞察を見つけることができる中国古典の傑作といえます。
そんな菜根譚のエッセンスを、中国古典学の大家である守屋洋氏がわかりやすく解説しているのが本書です。人間的魅力や信頼関係の高め方、組織での身の振り方やバランス感覚など、現代のビジネスパーソンにも通じるアドバイスの数々が掲載されています。儒教・道教・仏教の東洋思想に基づき、時には厳しく、時には軽やかに処世の極意を説いた一冊です。>>要約を読む
ご紹介した書籍でさらに東洋思想に興味を抱かれたら、『論語』『老子』『孟子』『大学』『中庸』などの原典にもぜひ挑戦してみてください。岩波文庫や講談社学術文庫などで安価に手に入れることができ、様々な出版社からシリーズでそろえることもできます。さらには書物だけでなく、「ヨガ」「マインドフルネス瞑想」「坐禅」といった実践や体験を通じて、東洋哲学を「体感」することオススメです。