『世界はシステムで動く―いま起きていることの本質をつかむ考え方』
(ドネラ・H・メドウズ/著)

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  • 著者プロフィール
  • 目次
 公共政策の世界に、『川で溺れる赤ん坊』という寓話がある。その概要は、旅人が川で溺れた赤ちゃんを発見し救出する。すると、再び赤ん坊が流れてくる。そして、次から次へと流れてくる赤ん坊を助けることに忙しくなり、実は川の上流で男が赤ん坊を次々と投げ込んでいることに気が付かない…というものだ。

 つまり、問題にはそれを生み出す「構造」があり、目の前の問題に対処しながら、「構造」に着手しなければ、根本的な問題解決はできないというものである。ここでいう「構造」は「システム」とも言い換えられる。

 本書では株価暴落、資源枯渇、価格競争など、システムから吐き出される「出来事」に惑わされることなく、物事の「大局」から問題解決を導く「システム思考」が基本から丁寧に解説されている。それは、システムの「ストック」「フロー」「フィードバック・ループ」といった挙動に着目し、観察することがスタートになる。

 著者のドネラ・メドウズ氏は、世界を複雑に相互依存した「システム」としてとらえ分析する「システム・ダイナミクス」研究の第一人者であり、『世界がもし100人の村だったら』や『成長の限界』を著し、いまなお世界中に影響を与え続ける思想家。


著者:ドネラ・H・メドウズ(Donella H. Meadows)
 1941年~2001年。化学と生物物理学(ハーバード大学で博士号を取得)を修め、その後マサチューセッツ工科大学(MIT)の特別研究員。1972年、『成長の限界』(ダイヤモンド社)の主執筆者として、地球が人間活動を支えられる力や人類の選択に関する論争を世界中で巻き起こす火付け役となった。その後、グローバル・モデリングと持続可能な開発に関する本を9冊書き、社会情勢や世界における複雑なつながりを考えるコラム『The Global Citizen(地球市民)』を15年間、毎週書き続けた。
1990年には『世界がもし100人の村だったら』の原案「村の現状報告(State of the Village Report)」を執筆。1991年、ピュー財団の保全・環境分野研究者として認められ、1994年、マッカーサーフェロー賞を受賞。1996年、サステナビリティ研究所を設立し、システム思考や組織学習を用いて、経済、環境、社会分野の課題に取り組む。1972年から2001年まで、ダートマス大学の環境研究プログラムで教鞭をとった。

翻訳:枝廣淳子(エダヒロジュンコ)
 イーズ代表。チェンジ・エージェント会長。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。心理学を活かし、「自分や人を変える」技術を構築。講演、研修、執筆、テレビ出演などのほか、企業の社会的責任などのテーマで企業の変革コンサルティングを実施。デニス・メドウズをはじめとする世界のシステム思考家とのネットワークを築き、システム・ダイナミクスを用いた『成長の限界 人類の選択』(ダイヤモンド社)、『システム思考』(東洋経済新報社)を翻訳、システム思考の入門書『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?』(東洋経済新報社)、『入門! システム思考』(講談社)を共同執筆。

解説:小田理一郎 (オダリイチロウ)
 チェンジ・エージェント代表取締役社長兼CEO。オレゴン大学経営学修士(MBA)修了。多国籍企業経営を専攻し、米国企業で10年間、製品責任者・経営企画室長として組織横断業務改革・組織変革に取り組む。2005年チェンジ・エージェント社を設立、人財・組織開発、CSR経営などのコンサルティングに従事し、システム横断で社会課題を解決するプロセスデザインやファシリテーションを展開。組織学習協会(SoL)ジャパン代表、グローバルSoL理事などを務め、システム思考、ダイアログ、「学習する組織」などを普及・推進。共著に『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?』(東洋経済新報社)、共訳書にピーター・M・センゲ著『学習する組織』(英治出版)。

はじめに システムを見るレンズ
第1部 システムの構造と挙動
第1章 基礎
第2章 〈システムの動物園〉にちょっと行ってみる
第2部 システムと私たち
第3章 なぜシステムはとてもよく機能するのか
第4章 なぜシステムは私たちをびっくりさせるのか
第5章 システムの落とし穴……とチャンス
第3部 システムと私たちの根底にある価値観に変化を創り出す
第6章 レバレッジポイント
第7章 システムの世界に生きる

要約ダイジェスト

システムを見るレンズ

 私たちは心理的にも政治的にも、問題の原因は「ここにある」というより、「あそこにある」と考えがちだ。「何か」や「だれか」のせいだと考え、問題を解決する制御ノブや製品、薬、技術的な解決策を探す。

 そのように外にある手段に焦点を当てることで、天然痘の予防、食糧の増産など、深刻な問題の解決がはかられてきた。しかし、そういった問題はより大きなシステムの中に埋め込まれているため、その”解決策”がざらなる問題を創り出すこともあった。

 そして、問題の中でも、複雑なシステムの内部構造に根深くつながっているものは消えようとはしない。例えば、飢餓、貧困、環境劣化、経済の不安定性、薬物中毒、戦争などは、それらを根絶する努力にもかかわらず、問題を望んでいる人がいるわけでもないのになくならないのだ。

 その理由は、こういった問題はシステムの問題(こういった問題を生み出すシステム構造の望ましくない挙動の特性)だからである。こういった問題が解決に向かうのは、私たちがシステムをそれ自体の問題の源であると見て、

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