『スイスの凄い競争力』
(R・ジェイムズ・ブライディング/著)

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 スイスは特殊な国である。人口は約800万人と日本の1/15、天然資源も少なく、狭い土地は山と強国に囲まれている。しかし、ネスレ(食品)、ロレックス(時計)、ノバルティス(製薬)、クレディ・スイス(金融)などグローバル企業を多数輩出し、国民一人当たりGDPは日本の2倍近い。

 また、グーグルがエンジニア・オフィスを進出させるなど、多国籍企業の拠点としても注目されている。特筆すべきは移民の多さとその成功事例である。ネスレ創業者や、スウォッチの立役者は移民出身だという。歴史的に移民を受け入れ、起業家精神を生み出す土壌が存在するのだ。本書ではそんなイノベーション大国とも呼べる、スイスの競争力の全貌が明らかにされている。

 著者はチューリッヒの投資会社創業者にして、エコノミスト誌スイス特派員などジャーナリストとしても活躍。本書では、ネスレ、スウォッチから知られざる優良企業の歴史まで丁寧に紐解き、70年代のスイス時計産業の危機的状況(3人に2人が失業)など、成功の陰にある多数の失敗も余さず描かれている。スイス同様に資源に乏しく、ホスピタリティや職人技を尊び、国内市場も頭打ちを迎える日本の経済や企業への示唆が多数詰まった一冊である。

著者:R・ジェイムズ・ブライディング(R・James Breiding)
スイス・チューリッヒの投資会社ナイサンス・キャピタルの創業者。大手監査法人プライスウォーターハウス・クーパース、テンプルトン・インベストメント、ロスチャイルド・コーポレートファナンスの幹部を歴任。
ハーバード・ケネディスクールとIMD(ローザンヌ)で修士号。英エコノミスト誌にスイス関連の記事を寄稿。ゲアハルト・シュワルツ博士との共著に『The Swiss Economic Wonder』がある。スイスと米国の国籍を持っている。

著者:北川知子
翻訳家。奈良女子大学大学院修士課程修了。国立国会図書館勤務を経て翻訳家。訳書にモリス『人類5万年 文明の興亡』(筑摩書房)、ムン『ビジネスで一番。大切なこと』(ダイヤモンド社)、アダム・スミス『道徳感情論』(共訳)、『科学者が「起業」で成功する方法』(以上日経BP社)がある

第1章 すべてはミルクから始まった
第2章 時計製造——好期をつかむ
第3章 スイスの観光産業-雪や空気を売る
第4章 スイスの静かな商人たち
第5章 ナンバー・アカウント-莫大な利益
第6章 利益を紡ぎ織る
第7章 小さな奇跡-医療技術の驚異
第8章 スイスの強力な産業機械
第9章 医薬品-売るための知識
第10章 スイスの輸送-移動を実現する
第11章 レンガとモルタル
第12章 スーパーコンピュータからマウスまで
第13章 美のビジネス-芸術と建築
第14章 スイス流-なぜ多国籍企業はスイスを好むのか
第15章 結論-スイスになる

要約ダイジェスト

スイスの成功の特徴

 スイスを語ることは成功を語るに等しい。中世のスイスは山間の貧しい社会であり、主な輸出品は傭兵だった。現代のスイスはきわめて豊かで、外部からの衝撃にも近隣諸国より回復力がある。1970年代の経済危機でも深刻な打撃は受けず、2007年以降の失業率はEU平均の二分の一以下である。

 スイスのイノベーションは、繊維、観光、食品、エンジニアリング、医療技術、化学・薬品、貿易、保険、銀行、建築、建設、時計と幅広い。これらの傑出したアイデアや製品を生んだ起業家精神は、地形によってもたらされた。スイスでは山間の孤立した地域が多く、それぞれが独自の社会構造や特性を備え、宗派も異なる。その結果、様々な地域が独自の製品を介して交易を行うことになったのだ。

 また、スイスは、数多くの家族経営企業の発展からも恩恵を得てきた。事業の継承や遺産をめぐる争いに悩まされながらも、

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