『流れとかたち―万物のデザインを決める新たな物理法則』
(エイドリアン・ベジャン/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次(主要)
 熱力学分野の第一人者である著者が、16年かけて発見した「万物のデザインを支配する物理法則」である「コンストラクタル法則」について解説した科学書。「コンストラクタル法則」とは、簡単にいえば川の流れから稲妻の形状、工業製品、社会制度、情報、教育に至るまで、生物/無生物を問わず、すべては「流動系」であり、その進化には一定の法則があるというものである。本書ではこの法則が、生命や地球、そして人間社会の未来予測にまで応用されており、ビジネスパーソンにとっても示唆の多い一冊となっている。
著者:エイドリアン・ベジャン(Adrian Bejan)
 1948年ルーマニア生まれ。デューク大学特別教授。マサチューセッツ工科大学(MIT)にて博士号工学取得後、コロラド大学准教授などを経て、1984年からデューク大学教授。24冊の専門書と540以上の論文を発表し「世界の最も論文が引用されている工学系の学者100名(故人を含む)」に入っている。1999年に「マックス・ヤコブ賞」、2006年には「ルイコフメダル」を受賞。これらは熱工学分野のノーベル賞とも言われるもので、2つとも受賞している研究者は究めて希少である。

著者:J.ペダー・ゼイン(J. Peder Zane)
ジャーナリスト。セントオーガスティン・カレッジ准教授(ジャーナリズム)。

翻訳:柴田裕之(シバタ ヤスシ)

第一章 流れの誕生
第二章 デザインの誕生
第三章 動物の移動
第四章 進化を目撃する
第五章 樹木や森林の背後を見通す
第六章 階層制が支配力を揮う理由
第七章「遠距離を高速で」と「近距離を低速で」
第八章 学究の世界のデザイン
第九章 黄金比、視覚、認識作用、文化
第十章 歴史のデザイン

要約ダイジェスト

コンストラクタル法則とは何か

デザインと進化の物理法則

 本書は、自然界のデザインを科学の一分野として扱う。その核を成すのが、デザインと進化の物理法則である「コンストラクタル法則(constructal law)」だ。

 この法則は、血管組織や移動、社会組織などを含め、生命を持たない河川から生き物のデザインまで、自然というモザイク全体に及ぶ。1995年9月下旬、ベルギーのノーベル化学賞受賞者イリヤ・プリゴジンによる晩餐会前の講演によって、私の仕事は運命的な転換を遂げた。

 この高名な人物は科学界の定説に倣い、河川の流域や三角州、肺の気道、稲妻など、白然界に豊富に見られる樹状構造は「アレアトワール(サイコロを振った結果)」だと断言した。つまり、すべては単に壮大な偶然の一致だというのだ。

 しかし、こうした樹状構造のものどうしの類似は、肉眼でもはっきり見て取れる。私は一瞬にして悟った。世界は偶然や巡り合わせや運によって形作られているのではなく、

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