『櫛挽道守(くしひきちもり)』
(木内 昇/著)

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  • 著者プロフィール
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 幕末の木曽山中の藪原(やぶはら)宿を舞台に、櫛職人の家に生まれた長女・登瀬の人生を描いた作品である。登瀬は名工と呼ばれる父の櫛挽(ひ)きの技に幼い頃から魅せられ、跡取りであった弟の早世、家族との確執など、様々な苦労を重ねながら、父の背を追い、ひたすら櫛挽きの道に励む。

 結婚して子どもを産むことが女の幸せだと信じられ、櫛挽は男の仕事だといわれていた時代。そこに生きる一人の女性の細やかな心情を通して、幸せな人生とは何か、仕事とは、そして家族とは何かを丁寧に描き、第 9回中央公論文芸賞、第 27回柴田錬三郎賞、第 8回親鸞賞を受賞。

著者:木内 昇(きうち・のぼり)
 1967年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業。2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。2009年、第2回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。2011年『漂砂のうたう』で第144回直木三十五賞を受賞。2014年『櫛挽道守』で第9回中央公論文芸賞、第8回親鸞賞を受賞。他の著書に『新選組裏表録 地虫鳴く』『茗荷谷の猫』『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』などがある。
第一章 父の背
第二章 弟の手
第三章 妹の声
第四章 母の眼
第五章 夫の才
第六章 源次の夢
第七章 家の拍子
推薦者コメント
宮内義彦< オリックス株式会社 シニア・チェアマン>
1964年、オリエント・リース株式会社(当時)創業メンバーの一人として日綿實業(現双日)から移籍、2000年より取締役兼代表執行役会長・グループCEOに就任。2014年6月より現職。公職としては規制改革会議長等を歴任。オリックス・バファローズのオーナー。(>>推薦書籍一覧

 時は急をつげる幕末。ここ木曽路に住む少女・登瀬は、毎日ひたすら櫛作りに励む。父の背を追い、ライバルの夫と共に年を経て老いていく。静かな感動が伝わる長編小説。(宮内義彦)

要約ダイジェスト

父の背

 藪原宿は、中山道の宿場町である。木曽十一宿のひとつで、険路の多い木曽路の中でもとりわけ高地で、旅人からは難所として恐れられていた。他国から訪れた者は、どこを見ても山に阻まれているようだと息苦しさを口にしたが、ここに生まれ育った登瀬には、山々がなにかを「阻んでいる」とは見えなかった。

 街道筋には至る所に掲げられた「元祖お六櫛」の幟がはためき、家々からは木を削る音が立ち上っている。藪原宿は「お六櫛」の名産地であり、父の吾助は有名な櫛挽であった。櫛挽というのは朝飯前から板ノ間にこもって仕事するものだ――登瀬は幼い頃から身に染みて感じながら育った。職人町である藪原下町の櫛挽たちの暮らしぶりに、そう教えられてきたのである。

 下町ではまだ暗いうちから板ノ間(作業場)に灯がともった。しかしその中にあっても、

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