『量子力学が語る世界像 ―重なり合う複数の過去と未来』
(和田純夫/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 量子力学は、原子、電子などのミクロの世界を研究に端を発した力学分野である。そこで発見されたそれまでの物理常識とは異なる物質のふるまいは、相対性理論とともに現代物理学の重要な基礎となっている。本書で解説される「多世界解釈」は複数存在する量子力学の解釈論の一つである。

 多世界解釈によれば、驚くべきことにこの世界には、いまも文字通り多数の世界が共存しているという。しかもそれはマクロの宇宙の自然現象すべてに当てはまり、それでいて我々はSFのように異世界に迷いこむことなく成り立っている。

 本書では、そのおうな古典物理学の常識を覆す量子力学の考え方と応用的思考を、多世界解釈をベースに、他の解釈論、「波」について、「確率論」などを含めて、なるべく数式を用いずわかりやすく解説されている。

 量子力学は、量子コンピュータやマーケティングなど、現実のビジネスへの応用も始まっている。科学に興味がある方だけでなく、世界観や思想哲学にも大いに示唆がある内容として、ビジネスパーソンとしてより一段高い視座を得るために文系理系問わずぜひご一読いただきたい。

著者:和田純夫
 1949年千葉県生まれ。東京大学物理学科卒業。理学博士。文部省研究奨励員、ケンブリッジ大学キャベンディッシュ研究所研究員、ボローニャ大学国立原子物理学研究所研究員を経て、現在、東京大学総合文化研究科専任講師。専門は素粒子論、量子論、科学論。特に宇宙の誕生と量子力学との関連について考え、多くの啓蒙的な本、雑誌記事を書く。1986年から87年にかけては、ケンブリッジ大学のホーキング教授のグループで研究。著書多数
第1章 原子の世界
第2章 量子力学の誕生
第3章 確率解釈と収縮
第4章 量子力学の多世界解釈
第5章 同時進行する複数の世界
第6章 干渉するミクロの世界・干渉しないマクロの世界
第7章 シュレディンガーの猫は死んだのか
第8章 分離分可能性と不確定性原理
第9章 「確率解釈」をみちびく
第10章 光の量子力学
第11章 宇宙から見た量子力学
第12章 多世界解釈の世界像
推薦者コメント
norio murakami村上憲郎< 村上憲郎事務所 代表>
2003年、Google米国本社副社長 兼Google Japan 代表取締役社長に就任。2009年よりGoogle Japan名誉会長職を務めた後、2011年より村上憲郎事務所を設立し代表を務める。(>>推薦書籍一覧

量子力学の数式が紡ぎだす自然像は、我々人間の常識を超えており、従って、日常語では記述不能である。そこには幾つかの「解釈」ということのみが許される。この本は、「多世界解釈」という立場を解りやすく説明した名著。いよいよ量子コンピュータの登場が現実のものとなってきた今こそ、量子コンピュータの根拠としての多世界解釈を理解する時である。

推奨読者:
量子力学が紡ぎだす自然像の手掛かりを得たいと思っている人。量子コンピュータの成立根拠を知りたい人。

要約ダイジェスト

量子力学における「多世界解釈」

「量子力学」とは、今世紀初頭、原子のふるまいをつかさどる自然法則として発見された理論である。ボーア、シュレディンガー、ハイゼンベルグ、ボルン、アインシュタインなど、多くの研究者の貢献があった。

 当時、実験技術が発達し、原子、電子、原子核といったミクロの世界の様子がわかってきたが、それは従来の目で見える物体(マクロの世界)に対する常識とは、まったく異なるものであった。そのため、新しい学問「量子力学」が登場したのである。

 しかし登場といっても完全な形ではなかった。計算の手順を与えてくれるという点では問題はないが、

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