『日中韓を振り回すナショナリズムの正体』
(半藤一利、保阪正康/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 近年、日本のみならず中韓でも盛んに喧伝されつつある「ナショナリズム」。誰がどのような意図でナショナリズムを語り、国家をどこに導こうとしているのか。本書はそれを冷静に見極める視点を与えてくれる対談集である。著者はともにノンフィクション作家として日本の近代を追ってきた半藤一利氏と保坂正康氏。

 著者らは「ナショナリズム」の意味を正しく理解することがナショナリズムと対峙する第一歩であると説く。そのためには、ナショナリズムを上部構造(国策の基準)と、下部構造(民衆の基準)に分けて考える必要があるといいう。そして、政治家や軍人のための上部構造が、民衆の道徳観念や倫理観といった下部構造を利用してきた実態を明らかにして、現在のヘイトスピーチや反日デモなどの問題を読み解いていく。

 本書ではエピソードを交え、歴史家ならではの視点から日中韓のナショナリズムの歴史についても解説され、政治思想や近現代史に詳しくない方にも読みやすくまとめられている。著者らが語るように、経済がグローバル化するなかで、ナショナリズムを持つこと自体は悪くはない。その中で健全なナショナリズムとは何かを考え続けることが重要なのだ。その土台となる歴史認識を養う一冊としてぜひご一読頂きたい。


著者:半藤一利(はんどう・かずとし)
 作家。昭和5年(1930)、東京生まれ。東京大学文学部卒業後、文藝春秋入社。「週刊文春」「文藝春秋」編集長、専務取締役などを経て作家。「歴史探偵」を自称。『漱石先生ぞな、もし』(正・続、新田次郎文学賞)『ノモンハンの夏』(山本七平賞)『日本のいちばん長い日』『昭和史 1926-1945』『昭和史 戦後編』(毎日出版文化賞特別賞)『幕末史』『山本五十六』『日露戦争史』(1、2、3)など著書多数。

著者:保阪正康(ほさか・まさやす)
 ノンフィクション作家。昭和14年(1939)、札幌市生まれ。同志社大学文学部卒業後、出版社勤務を経て、ノンフィクション作家。昭和史の実証的研究を志し、のべ4,000人もの関係者たちを取材して肉声を記録してきた。個人誌「昭和史講座」を主宰。2004年、一連の昭和史研究で菊池寛賞を受賞。『昭和陸軍の研究』『東條英機と天皇の時代』『昭和史 七つの謎』『あの戦争は何だったのか』『風来記』など著書多数。半藤一利との共著(対談)に『そして、メディアは日本を戦争に導いた』(東洋経済新報社)などがある。

出版:東洋経済新報社


はじめに 今こそ、歴史の教訓に学ぶ 半藤一利
プロローグ 「国家ナショナリズム」が「庶民ナショナリズム」を駆逐する
第一章 現代日本のナショナリズムが歪んだ理由
第二章 近代史が教える日本のナショナリズムの実体
第三章 中国と韓国の「反日感情」の歴史的背景
第四章 現代の中国および韓国のナショナリズム
第五章 将来に向けての日本のナショナリズム
おわりに 憂うべき端境期にある日本社会 保阪正康

要約ダイジェスト

「国家ナショナリズム」が「庶民ナショナリズム」を駆逐する

 ナショナリズムをきちんと理解するのは難しい。民族主義、国民主義、国家主義、また、本来、パトリオティズムと呼ぶべき愛国主義の意味もナショナリズムという言葉には込められることがある。戦後日本におけるナショナリズムが厄介になっているのは、定義の暖昧さ、評価の難しさもさることながら、ジャーナリズムの態度にも原因がある。

 私たちは、昭和20年以降、ナショナリズムという言葉を、恐ろしいほど神経質に、使わないようにして暮らしてきたが、

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