『サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ』
(下條信輔/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次

「人間は自由意志で決断して行動する」という考えは、近代的社会の大前提となっている。しかし、本書では、知覚心理学、社会心理学、行動科学などの多分野にわたる実験結果から、「人は自分で思っているほど自分の心の動きを分かっていない」という人間科学のセントラル・ドグマ(中心教義)を解き明かしていく。

認知的不協和やサブリミナル効果など、近年行動経済学などでも取り上げられる事例から、あまり知られていない実験までを取り上げ、個人の意識や認知といった話題だけでなく、科学的推論に基づく未来の「人間観」までを提示した、骨太の一冊である。

著者の下條信輔氏はカリフォルニア工科大学で教鞭をとる認知心理学の第一人者。氏の大学での心理学講義に基づき編纂されているが、知的好奇心を満足させるだけではなく、自省や他者とのコミュニケーション、マーケティングなどのビジネス活動を考えるうえで気づきの多い内容となっている。


著者:下條信輔
カリフォルニア工科大学生物学部 教授。1955年東京生まれ。東京大学文学部心理学科卒、同大学人文科学科大学院博士課程修了。マサチューセッツ工科大学大学院修了、同Ph.Dl。現カリフォルニア工科大学教授。2012年4月より京都大学こころの未来研究センター特任教授。専門は知覚心理学、視覚科学、認知神経科学。『サブリミナル・マインド』(中公新書)、『<意識>とは何だろうか』(講談社現代新書)、『サブリミナル・インパクト』(ちくま新書)など著書多数。サントリー学芸賞、時実記念賞、日本認知科学会独創賞、中山賞大賞など受賞多数。

出版:中央公論新社(中公新書)


序   私の中の見知らぬ私―講義に先立って
第1講 自分はもうひとりの他人である―自己と他者の社会認知心理学
第2講 悲しいのはどうしてか?―情動と帰属理論
第3講 もうひとりの私―分割脳と「自己」
第4講 否認する患者たち―脳損傷の症例から
第5講 忘れたが覚えている―記憶障害と潜在記憶
第6講 見えないのに見えている―いき下知覚と前注意過程
第7講 操られる「好み」と「自由」―サブリミナル・コマーシャリズム
第8講 無自覚の「意志」―運動制御の生理学と哲学
第9講 私の中の悪魔―自由意志と「罪」をめぐって

Check Point

  • 人間はしばしば知覚や行動の本当の理由に気づくことができず、しかも無意識的な心の働きにより強く依存することが、様々な実験から明らかになっている。
  • ジェームズとランゲは、人は悲しいから泣くのではなく、無意識的要因によって泣いた結果、悲しくなることを発見した。つまり意識的な経験は後づけの「解釈」に過ぎない。
  • 「自ら意志決定する個人」という近代的自我の前提が揺らぎ始めている。例えば、少子化には生物学的制御が働いていると考えられるが、本人にとっては自由意志に基づく行動である。

要約ダイジェスト

私の中の見知らぬ私

自分のことは自分が一番よく知っている―私たちはそう信じて暮らしているが、現代の人間科学の様々な研究は、無自覚的な心の働きの証拠をつきつけている。すなわち「人は自分で思っているほど、自分の心の動きをわかってはいない」のだ。

そして、最前線の人間科学が明らかにするこの潜在的認知過程の考え方は、人間の自由意志の尊厳と、それに則った社会の約束ごとを、根底から覆しかねない。とりわけ倫理的に困難な問題を、

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