『データの見えざる手—ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』(矢野和男/著)

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  • 著者プロフィール
  • 目次
 人間の行動は自由意思に基づくものだと長く信じられてきた。しかし、身体活動というヒューマン・ビッグデータが明らかにしたのは、自然現象にみられる物理の法則や方程式は、人間の行動にも適応されるという新事実であった。

 著者の矢野和男氏は、日立製作所中央研究所の主管研究長を務め、人間行動研究の第一人者として世界的に知られる人物。著者は「ビッグデータ」という言葉のなかった約10年前からウェアラブルセンサによる身体活動の研究を続け、数多くの実験によって人間、社会、組織を貫く法則性を導き出した。

 扱われるテーマは、本書の内容の普遍性を示すように、時間の使い方から、個人のハピネス(幸福度)や人間関係のネットワーク、職場の生産性、科学的な「運」の掴み方まで、多岐に渡っている。科学の最先端知識がわかりやすく説明され、人間観や常識を見事に覆してくれる良書である。


著者:矢野 和男
 株式会社日立製作所中央研究所、主管研究長。1984年早稲田大学物理修士卒。日立製作所入社。1993年単一電子メモリの室温動作に世界で初めて成功。2004年から先行してウエアラブル技術とビッグデータ収集・活用で世界を牽引。論文被引用件数は2500件。特許出願350件。のべ100万日を超えるデータを使った企業業績向上の研究と心理学や人工知能からナノテクまでの専門性の広さと深さで知られる。博士(工学)。IEEE Fellow。日立返仁会総務理事。東京工業大学大学院連携教授。文科省情報学技術委員
出版:草思社
第1章 時間は自由に使えるか
第2章 ハピネスを測る
第3章 「人間行動の方程式」を求めて
第4章 運とまじめに向き合う
第5章 経済を動かす新しい「見えざる手」
第6章 社会と人生の科学がもたらすもの

要約ダイジェスト

人間行動に法則性はあるか

腕の動きを数えるとわかる驚くべき法則性

 近年、人間や社会の行動に関する大量のデータが得られるようになり、人間に関する新たな科学法則が見つかる可能性が大きくなってきた。しかし、一方でそれを否定したくなる衝動にも駆られる。人は、自由な意思と思いで、どんな行動でも自由になしうるのではないだろうか。

 我々はセンサ技術を使って、人間の時間の使い方に関するデータを大量に得て、この問いに一つの答えを得た。科学には物理現象を表す多くの方程式があるが、実は、これらは全て、エネルギーや電荷などが保存されるという「エネルギーの保存則」から派生するものである。

 このエネルギーの概念が、あなたの今日の時間の使い方と関係がある。あなたが1日に使えるエネルギーの総量とその配分の仕方は、

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