- 本書の概要
- 著者プロフィール
本書は、氏がその半生を自身の手で初めて綴った自叙伝2部作の第1部目であり、氏の生い立ちから、研究者としての試行錯誤、「利己的な遺伝子」の刊行に至る前半生が描かれ、当代一流の科学者の問題意識を育んだ背景が明らかにされる。
一般の読者にもインパクトを与えた著作の真意や、今なお尽きない氏の探究心の源である豊かな教養や宗教的思索について。そして古き良き英国アカデミズムの薫陶などが、当時の世相とともに活写され、科学や思想に対する知的好奇心やインスピレーションを大いに刺激してくれる内容となっている。続編の刊行が待たれる一冊である。
著者:リチャード・ドーキンス
1941年、ナイロビ生まれ。オックスフォード大学にてノーベル賞学者ニコ・ティンバーゲンのもとで学ぶ。その後、カリフォルニア大学バークレー校を経てオックスフォード大学レクチャラー。動物行動研究グループのリーダーの一人として活躍。2008年まで「科学的精神普及のための寄付講座」初代教授をつとめた。王立協会(ロイヤル・ソサエティー)フェロー、王立文学協会フェロー
翻訳:垂水 雄二
出版:早川書房
・遺伝子と探検帽
・ケニアでの従軍生活
・湖の国
・山のなかのイーグル校
・さらばアフリカ
・ソールズベリーの尖塔の下で
・「おまえたちのイギリスの夏はもう終わったのだ」
・ネーン川沿いの学校
・夢みる尖塔
・仕事のやり方を学ぶ
・西海岸のドリームタイム
・コンピューター中毒
・行動の文法
・不滅の遺伝子
・来し方を振り返る

日本生命保険相互会社にてロンドン現地法人社長、国際業務部長等を歴任後、ライフネット生命保険株式会社を設立。2012年に東証マザーズへ上場。2013年より、同社代表取締役会長兼CEOに就任。(>>推薦書籍一覧)
全ての生物は遺伝子の乗り物にすぎない。ドーキンスの「利己的な遺伝子」を初めて読んだ時の鮮烈な印象は忘れることができない。ダーウィンの理論をこんなに上手く説明できる人が世の中にいるとは。そのドーキンスが自伝を書いた。面白くないはずがない。アフリカで生まれた少年が、いかにして科学者になったのか、読者の興味はつきないだろう。
人間は何よりも先ず動物である。ビジネスはそもそも人間を相手にするものなので、大前提として、人間がどういう動物であるかを知らねばならない。そのためには生物学や進化論が欠かせないが、本書は、それが学べると同時に極めて個性的で優秀な人間の半生を解き明かしてくれるまたとない書物だ。(出口治明)
要約ダイジェスト
幼少期からパブリックスクール時代
私は1941年3月にナイロビの産科病院で誕生した。父は第一次大戦の戦地に赴いていたため、母とナイロビ近郊のバガシにあったグレイズブルックの小さな家で過ごした。家主の孫息子とは一緒に農場でよく遊んだが、サファリ用の車に乗って見学できるライオンの群れにはまったく興味を示さず、動物学的な好奇心は欠如していたようだ。
母によれば私は例外的に人付き合いがよく、見知らぬ人をまったく怖れなかった。言葉が好きでおしゃべりで、けれど早くから疑い深い人間だったという。ただ音楽は別問題で、いつも自分に向かって意味不明だが調子のいいリズムで話しかけたり歌ったりしていたようだ。
両親曰く私は豊富な歌のレパートリーをもっていて、それらをいつも正しい音程で繰り返し歌っていたという。1946年、戦争が終わっていたためイギリスに一時帰国したが、父方の祖父母の躾はスパルタ式で、