『ハイエクの政治思想―市場秩序にひそむ人間の苦境』
(山中 優/著)

 

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次(主要)
社会主義や福祉国家など、20世紀は、市場を自由放任するのではなく、政治が経済に介入して調整を図る時代であった。しかし、20世紀後半になってそれらの政治体制が行き詰まるにつれて、市場原理への信頼を説くネオ・リベラリズムが脚光を浴びるようになっていった。その中でも重要な位置を占めたのがハイエクの思想である。

ハイエクは人間の理性には限界があるとしながらも、市場の秩序は自然に形成されるとした。しかし、彼は人間の本質が市場に適合するものだとも考えておらず、むしろ、晩年のハイエクの人間観は悲観的ですらあったという。彼の思想はどのように形成され、変化していったのか。21世紀の現在、学ぶことの多いハイエクの思想の深淵を探る一冊である。


著者:著者:山中 優
1969年大阪府に生まれる。1997年京都大学大学院法学研究科博士課程研究指導認定退学(政治学)。皇學館大学社会福祉学部助教授。

出版:勁草書房


序 章 なぜ今ハイエクか?
第一章 全体主義批判 市場さもなくば隷従
第二章 自由論 義務論と帰結主義の間で
第三章 文化的進化論と議会制改革論 市場秩序を脅かす反市場的な自然感情
第四章 自生的秩序と政治権力 その現代的含意
終 章 市場原理復権の理想と現実 とくに日本の場合

補論1 ハイエクにおけるマルクスの軽視をめぐって
補論2 文化的進化論の批判的継承をめぐって その近年の動向についての素描

推薦者コメント
norio murakami村上憲郎< 村上憲郎事務所 代表>
2003年、Google米国本社副社長 兼Google Japan 代表取締役社長に就任。2009年よりGoogle Japan名誉会長職を務めた後、2011年より村上憲郎事務所を設立し代表を務める。(>>推薦書籍一覧

ハイエク思想の本格的な解明を目指した労作。特に、グローバル化に象徴される21世紀の新しい現実の中にハイエクを位置づけなおす事によって、ハイエク思想の現在的な意義を提示している。初期の著作のみが注目・議論されがちなハイエクの中期、後期の膨大な著作に分け入り、その重層的な思考の解明に成功した好著。

推奨読者:
ハイエク思想を本格的に学びたい人。特に、ハイエク全集の膨大な分量を前に、何処から手を付けていいか途方に暮れている人。(村上憲郎)

Check Point

  • ハイエクの思想は市場を無条件に礼賛する単純なものではない。特に、グローバル化した現代において重要なのは、人間への悲観性を増し、政府権力の必要性も強調した彼の晩年の思想である。
  • ハイエクによれば、過去の試行錯誤から自生的に発生したルール(秩序)が、文化的伝統として根付き、他の社会へと普及する。この「自生的」な市場秩序こそが、自由・繁栄・平和を実現する。
  • 自生的な市場への政治的介入は避けなければならないが、ハイエクが否定したのは、あくまで特定の利益のみを実現する権力行使であって、自生的秩序を守るための権力行使はむしろ肯定していた。

要約ダイジェスト

なぜ今ハイエクか?

 市場原理に信頼をおく思想が復権するにつれ、注目度を飛躍的に増大させたハイエク。「人間の理性の限界」と「社会における知識の分散」こそが人間や社会の現実である、という醒めた認識から出発するハイエクの議論は、政治が経済に介入することに疑問符を投げかけ、市場原理復権の潮流に重要な役割を果たしてきた。

 特にインパクトを持ったのが、「自生的秩序」の概念だ。個人の自由な行動を認め、政治権力の発動を抑えつつも、

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