- 本書の概要
- 著者プロフィール
大きくは哲学的思想の起源、西洋の近現代哲学、日本の思想、現代の倫理的課題(科学技術と生命倫理、環境問題、グローバル化、貧困・人権問題など)の4章で構成され、思想史を概観し、大きな流れをつかむことができるだろう。
コラムなど読み物も充実し、教養としても興味深く読めるが、本来哲学とは「生きるとはなにか」「働くとはなにか」といった「問い」に答えるものである。その意味で本書は、人類の英知ともいえる「問い」が網羅された、「知」のカタログともいえる有用な内容となっている。
序章 現代社会と自己への道
第1章 思索の源流
第2章 西洋の近代思想
第3章 日本の思想
第4章 現代の倫理的課題

米国にてMBAを取得後、2010年、株式会社ブルームコンセプトを設立。新商品・新規事業コンサルティング、ワークショップを行う。『ビジネスモデル・ジェネレーション』(訳)、“IDEA HACKS!”等ハックシリーズなど著書多数。(>>推薦書籍一覧)
これまでの常識が非常識になったり、これまで非常識だったことが常識にかわっていく。そうした時代の変化に対応するには、その変化の歴史をストックとして蓄積することが必要だろう。先人たちが積み重ねてきた思考を振り返ることによって、今の常識を疑い、新しい常識を受け入れることができるのだ。本書はそうしたストックを積み上げるための最適な入門書のひとつだ。
推奨読者:
世の中の常識にどうしても納得できない。けれどもそこに反論できないモヤモヤを抱えている人に読んで欲しい。その「常識」がたかだか100年程度の歴史しかないことを知って、スッキリするだろう。
Check Point
- 「倫」とは「仲間」を、「理」とは「筋道」をさし、倫理とは人が他者とともに生きるための道筋を示す。そして、哲学は科学的に客観的な知識ではなく、一人ひとりが思索しながら人生の真理を明らかにしようとする行為に真理がある。
- 古代ギリシャのソフィスト(職業教師)たちは、相対主義(絶対的な真理は存在しない)を広めたが、プラトンは、哲学とは普遍的な真理を求めるものであると考えて、人が理性によって思い描く、物事の本質をイデア(idea)と名付けた。
- 古代中国では孔子が「仁」(相手を思いやること)を重視し、徳治主義を唱えた。儒教はやがて学問で国家有為の人材を目指す宋学として大成され、朝鮮・日本などにも伝わって道徳観念の基礎となった。
要約ダイジェスト
社会と自己への道
自我の目覚め
私たちは青年期の頃から、自分で自分をみつめることを通して、自分の存在を意識する自我意識に目覚める。自分を意識し始めることは、自分という一人の人間の個性を見つけることでもある。
エリクソン<1902~94>は、自分がつねに同一の自分であるという、自分についての一貫した自覚をもつことをアイデンティティ(自我同一性)と呼んでいる。「自分とは何者か」という問いに答え、「自分とはこのような人間なのだ」という自己のアイデンティティを確立することが、人生の大きな課題である。
しかし、ときには自分がわからなくなり、毎日が空虚に感じられ、生きることへの不安や無力感に悩むこともある。このような危機を乗り越えるためには、今を意義づけてくれる目標や使命を持ち、他者との関係の中で一定の役割や使命を