- 本書の概要
- 著者プロフィール
取り上げられる事例は、ヤマト運輸、トヨタ自動車、吉野家、セブンイレブン、スターバックスとドトール、グラミン銀行など多岐に渡り、事業創造の過程を丹念に追いつつも、実践的なフレームワークも多数提示されている。経営やビジネスモデル、イノベーションとは何かを考えたい方、起業を志す方の視野を広げてくれる良書である。
早稲田大学 商学学術院 教授。1997年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了、博士(経営学)。広島大学社会人大学院マネジメント専攻助教授、早稲田大学商学部助教授(大学院商学研究科夜間MBAコース兼務)などを経て、2008年より現職。2011年9月より独立行政法人経済産業研究所(RIETI)ファカルティフェロー、2012年4月よりペンシルベニア大学ウォートンスクール・シニア・リサーチフェローを兼務。2003年経営情報学会論文賞受賞。専門分野は、競争戦略とビジネスシステム(ビジネスモデル)。著書多数。新刊『ブラックスワンの経営学』(日経BP社・2014年7月刊)も好評を博している
第2章「インドの露天商」模倣すべき本質をモデリングする
第3章「クロネコの革命」4つの要素と5つのステップ
第4章「2つのカフェ」模倣の創造性
第5章「4人の教師」誰をどのように模倣するのか
第6章「守破離」手本と現実のギャップを越える
第7章「反転」逆発想のモデリング
第8章「わな」模倣できそうで模倣できない会社
第9章「作法」倣い方を倣う

三菱総合研究所にて主に自動車メーカーや国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院博士号を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタント・プロフェッサーに就任。2013年より現職。専門は経営戦略論および国際経営論。(>>推薦書籍一覧)
日本の経営学は、海外の経営学とは状況が異なっていると以前述べたが、それは勿論、日本の経営学が駄目だということでは全くない。日本の素晴らしい経営学者の代表が著者の井上氏である。著者の主張は、大半の経営やビジネスモデルは「模倣」から生まれるというものであり、この考えは、海外の経営学でいう「知の探索」の考えに通ずるものがある。
「離れている分野から自身のビジネスに使えるものを取ってくる」という「知の探索」の考えは、言い方を換えれば「模倣をする」ということだ。 著者は「模倣の経営学」という言い方をしているが、イノベーションの原点のような話がとても上手にまとめられている。また、日本国内の企業事例が豊富であることもおもしろい。
推奨読者:
「イノベーション」というものを考えたい方に、そのヒントとして是非使って欲しい。著者は本来の専門がビジネスモデル研究であることもあり、ビジネスモデルを考える際にも大きな参考になるのではないかと思う。
Check Point
- 他社が模倣できない仕組みも、大半が模倣の組み合わせによって築かれている(模倣のパラドクス)。それゆえ、独自性の追求には、逆に模倣の力が大切となる。
- 模倣のためのビジネスモデル分析では、単純化したときに見えてくる、業種を超えた共通性が重要である。P-VAR(Position、Value、Activities、Resources)というフレームワークを利用する。
- 「理想の教師」だけでなく「反面教師」も模倣のお手本となる。ビジネスモデル構築あたっては、守破離、あるいは弁証法的アプローチで、お手本との矛盾を解消していく。
要約ダイジェスト
模倣は創造の母
「模倣は独創の母である」と言われる。モーツァルトは、他人の音楽を模倣することから始めて、ついには独創的な音楽を生み出した。ビジネスの世界で常識を覆して新しい事業を立ち上げた名だたる経営者も、模倣や参照のしかたがとてもうまい。
クロネコヤマトの宅急便のアイデアが、牛丼の吉野家から生まれたという事実をご存知だろうか。宅急便を立ち上げた小倉昌男氏は、当時、牛丼一筋に絞り込んで成長してきた吉野家を見て、「取り扱う荷物の絞り込み」というアイデアを思いついた。
宅急便を進める上で、モデルとなったのは吉野家だけではない。ニューヨークに業務指導と視察に行ったとき、「四つ角に立ってふと見ると、交差点を中心に