- 本書の概要
- 著者プロフィール
緻密な分析や理路整然としたプレゼンのイメージがある外資系のコンサルタントだが、実は最も必要とされ、また実力に差がつきやすいのは、「聞く」スキルだという。だが、「聞く力」は「話す力」と比べると意識されづらく、解説書も多くない。
著者によればこれは、成果が出ないのが「聞き方」にあることが表面化しにくいこと、そして「聞き方」の得手不得手は個人の資質によるものだという思い込みが原因だ。
多くのコンサルタントは、キャリアの駆け出しの頃、自説や知ったばかりのフレームワークの説明に気をとられて「聞く」をおろそかにし、先輩や上司、さらにはクライアントを怒らせてしまうこともあるという。そうした失敗から学び、「聞く」スキルを高めているのだ。
本書では、「聞く」力を「聞く(Hearing)」「聴く(Listening)」「訊く(Asking)」に分け、それぞれのステップや具体的な質問ワードを丁寧に解説し、プロフェッショナルなコンサルタント達が駆使する技術を明らかにした実践的な聞き方の教科書である。
著者:清水 久三子
&create(アンド・クリエイト)代表。大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社後、企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、新規事業戦略立案・展開支援、コンサルタント育成強化、プロフェッショナル人材制度設計・導入、人材開発戦略・実行支援などのプロジェクトをリード。2005年より、コンサルティングサービス&SI事業部門の人材開発部門リーダーとしてコンサルタント・エンジニアの人材育成を担い、2013年に独立。
プロジェクトマネジメント研修、リーダー研修など社内外の研修講師をつとめ、延べ2000人のコンサルタント、マーケターの指導育成経験を持つ「プロを育てるプロ」として知られている。
出版:東洋経済新報社
1 なぜ今「聞き方」なのか?―ますます重要になる仕事の最重要スキル
2 相手に「話したい」と思わせる技術―「聞く力」を鍛える
3 必要な情報を収集し、検証する技術―「聴く力」を鍛える
4 シーン別「聞き方」のおさらい
5 人や組織を「動かす」「変える」チェンジクエスチョン「訊く力」を鍛える
Check Point
- 優秀なコンサルタントほど「聞き方」を磨いている。「聞く」行為は、プロジェクトの最上流工程であり、ここで失敗すれば下流の分析やプレゼンのスキルがいくら高くても、リカバリーすることはできないからだ。
- 「聞く技術」は、「聞く」(Hearing=相手が話したくなる/相手から信頼される)と、「聴く」(Listening=必要な情報が正確に得られる/仮説検証ができる)の2つの力に分けられる。
- 「聴く」技術には、「セカンダリー情報の読み込み」「仮説を立てる」「論理的に質問を組み立て検証する」などのコンサルタント特有のテクニックがある。
要約ダイジェスト
仕事は「聞き方」で決まる
コンサルタントの優劣に一番差が出るスキルは、実は「聞く」スキルである。実際に優秀なコンサルタントほど「聞く」ことを大切にし、時間と労力をかけ「聞き方」の工夫をしている。
この「聞く」という行為は、間違いなく、仕事やプロジェクトの一番上流に位置する。クライアントが何を求めているのか。どうしたいのか。いつまでに。これらを聞くことがすべてのスタート地点であり、分析やプレゼンからプロジェクトが始まることはない。
当然、上流がまずいと、下流の工程から生まれる成果もすべてまずいものとなり、下流に位置する分析やプレゼンのスキルがいくら高くても、リカバリーすることはできないのだ。
最近では、情報収集というとインターネットがすぐに想起されるが、今も昔も、ビジネスで決定的な差を生むのは人から聞いた情報である。インターネットにアップされている情報では他者と差別化できないうえ、「人に聞く」という行為は、聞き方、聞く人によって、大きな差が出るからだ。インターネットとは違い、相手が話したいという気持ちにならなければ、なかなか情報が出てこないのである。
コンサルタントが駆使している「聞く技術」は、具体的には「聞く」(Hearing=相手が話したくなる/相手から信頼される)、「聴く」(Listening=必要な情報が正確に得られる/仮説検証ができる)の2つの力に分けられる。この2つの力を伸ばすことで、誰からも「話そう」と思われ、かつ必要な情報を効率よく