- 本書の概要
- 著者プロフィール
いまの日本では、大学生、大学の先生・企業の採用担当者、それぞれが自分の利益を最大化した結果、「勉強しない大学生」が量産されている。その結果、日本の大学は国際的な競争力を失い、ひいては国力の低下につながっている。著者は優秀なビジネスパーソンを育てるために、大学教育の構造を変えるべきだと主張。本書では大学生が勉強する「システム」を作るための現実的な解決策を提言している。
NPO法人DSS代表。1959年生まれ。京都大学工学部卒業。(株)リクルートで全国採用責任者として活躍後、99年(株)アイジャストを創業。2006年(株)リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。採用コンサルタントとして延べ数百社の企業を担当。数多くの大学で講演、面接トレーニングの実績をもつ。
10年、大学教育と企業採用の連携を支援することを目的に(株)グロウスアイを設立し、11年には、NPO法人「大学教育と就職活動のねじれを直し、大学生の就業力を向上させる会(略称DSS)」を設立
第2章 大学生・大学・企業 永続する「負のスパイラル」
第3章 「考える力」こそが日本を救う
第4章 「正のスパイラル」はこうして回す

一橋大学大学院商学研究科にて博士号を取得後、2002年より横浜市立大学商学部専任講師に就任。2004年より一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)助教授を経て、2007年より現職。(>>推薦書籍一覧)
日本の大学生は勉強しない、とまことしやかに語られる。私は2004年にビジネススクールで教鞭をとるようになって以来、学部生を教えた経験がないものの、学生が目の色を変えて取り組む授業やゼミを知っている。
その意味で本書の問いはややステレオタイプであるものの、重要なテーマである。企業、大学、大学生の三者が負のスパイラルに陥っているという本書の結論は納得感があると同時に、教育改革に示唆を与えてくれる。推薦読者
大学教育に関心のある企業の採用担当者、大学生、大学教員に読んで欲しい。巻末の主要大学の授業ミシュランは、特に大学生にとって有用である。
Check Point
- 海外の大学生は入学後とにかく勉強するが、日本の大学生は小学生よりも勉強しなくなる。その結果「知的能力」に大きな差がついている。
- アジア各国でも大学教育の整備が進み、今のままでは日本の大学生は現地の優秀な大学生に太刀打ちできない。いずれ海外に進出している日系の企業からも必要とされなくなってしまうだろう。
- 日本の大学生が勉強をしない原因は、大学生・大学(教授)・企業の3者が、お互いにマイナスの影響を与え合っている「負のスパイラル」の存在にある。大学の授業をベースとした「考える力」の育成こそがこの「負」を壊すことができる。
要約ダイジェスト
日本と海外との違いは、大学教育の違い
「海外の大学生は、優秀だ」これが25年間ずっと企業の採用活動にかかわってきた私の、偽らざる本音である。私の見るかぎり、海外の大学生は、次のような点で秀でている。
- すでにある知識を組み合わせて新しいことを生み出す力
- 問題を分解・分析して解決策を導く力
- さまざまな新しい情報を既知の知識と組み合わせて状況判断する力
では日本の大学生はどうだろうか?巷には「最近の大学生は……」という意見(批判?)が溢れているが、採用活動の現場から見ると、最近の大学生が「知的能力」において、以前に比べて見劣りするということはない。
私は、日本と海外の大学生の違いは、ひとえに大学教育の違いだと思っている。日本の大学生は、大学に入った途端、本当に勉強しなくなる。総務省の調査によると、日本の大学生は小学生よりも勉強していないというデータすらある。
しかし、海外の大学生は大学に入ってから、とにかく勉強をする。授業の前には分厚い課題図書を読み、知識を蓄えたうえで教授とディスカッションをする。テストも基礎知識を持ったうえで自らの頭で考えて論述しなければならない。
このような環境でみっちりと鍛えられてきた大学生と、小学生よりも勉強しない大学生。そんな状態が