『予想どおりに不合理』
(ダン・アリエリー/著)

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  • 著者プロフィール
  • 目次(主要)
 近年注目を集める「行動経済学」は、私たちがいかに「不合理」な存在かを明らかにしてくれる学問である。行動経済学の第一人者であり著者のダン・アリエリー教授は、意思決定における不合理性について認識することは、正しい意思決定の一助になると語る。なぜなら、私たちは不合理なだけでなく、「予想どおりに不合理」、つまり自由意思でものごとを決めたようでも、いつも同じように不合理な決定を繰り返してしまうからである。

 ではどのような場合に、私たちは不合理な行動をとってしまうのか、著者は身近な実験から「おとり効果」「アンカリング」「先延ばし」などの「不合理性の罠」を次々と明らかにしていく。伝統的な経済学の見方を実験によって覆していく様子は痛快で読みやすく、日常生活でのよりよい決断からビジネスへの応用までを考えるための行動経済学入門書として最適の一冊だ。

著者:ダン・アリエリー(Dan Ariely)
 行動経済学研究の第一人者。デューク大学教授。ノースカロライナ大学チャペルヒル校で認知心理学の修士号と博士号、デューク大学で経営学の博士号を取得。その後、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院とメディアラボの教授職を兼務。ユニークな実験研究によりイグ・ノーベル賞を受賞。2008年に刊行された本書『予想どおりに不合理』は、米国各メディアのベストセラーを席巻。他著書に『不合理だからすべてがうまくいく』『ずる——嘘とごまかしの行動経済学』(いずれも早川書房)。

翻訳:熊谷 淳子
 翻訳家。大阪教育大学卒、コロラド大学修士課程修了

1章 相対性の真相
2章 需要と供給の誤謬
3章 ゼロコストのコスト
4章 社会規範のコスト
5章 無料のクッキーの力
6章 性的興奮の影響
7章 先延ばしの問題と自制心
8章 高価な所有意識
9章 扉をあけておく
10章 予測の効果
11章 価格の力
12章 不信の輪
13章 私たちの品性について その1
14章 私たちの品性について その2
15章 ビールと無料のランチ
推薦者コメント
小笹芳央<株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役会長>
株式会社リクルートを経て、2000年、株式会社リンクアンドモチベーションを設立。2008年、東証一部に上場。2013年より、代表取締役会長就任。現在はグループ11社の会長を務める。(>>推薦書籍一覧

 人間は、「完全合理的な経済人」ではなく「限定合理的な感情人」であるという前提を提示する行動経済学。経済学の最先端では旧来の考え方を見直し、人間の感情面を考慮した分析が進んでいる。本書は、人材マネジメントや営業活動などに有益な行動経済学のフレームワークを分かりやすく説いた入門書としてお奨め。

推薦読者:
 マネジメントやリーダーシップに関して、人間の行動原理から紐解きたいと考えるビジネスパーソンが読者対象

要約ダイジェスト

行動経済学とはなにか

 行動経済学は心理学と経済学の両方の面を持っている。科学の領域では、私たちが完壁な理性を持っているという仮定があり、経済学では、まさにこの「合理性」という基本概念が理論や予測の基盤になっている。

「合理的な」経済モデルと言った場合、経済学者の大半と私たちの多くが信じている人間性についての基本的な仮定——私たちが自分について正しい決断をくだせるという考え方——を指す。ふつうの経済学では、私たちはみな日々の生活で直面するすべての選択肢について価値を計算し、最善の行動をとっていると予想する。

 もし、なにか不合理なことをしてしまったら、「市場原理の力」が私たちをただちに正しい合理的な道に押しもどす。この仮定のもと、アダム・スミス以後、何世代もの経済学者たちは、課税から健康保険制度、サービスの価格設定まで、さまざまなものに結論を与えてきた。

 ところが、私たちはふつうの経済理論が想定するより、はるかに合理性を欠いている。そのうえ、私たちは「予想どおりに不合理」である。不合理な行動はでたらめではなく、規則性があって、予想もできるのだ。

 だとすれば、ふつうの経済学を修正し、未検証の心理学という状態(実証的研究による検証に堪えないことが多い)から

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