『団塊の秋』
(堺屋 太一 /著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 主要目次
 本書は、戦後のベビーブームで誕生した世代を「団塊の世代」と名付け、ベストセラーとなった『団塊の世代』(堺屋太一/著 1976年)の続編としての位置づけを担う一冊だ。著者は『団塊の世代』にておいて、人口の多いこの世代の成長が日本経済を揺るがし、政治のあり方を変えていくという状況を予測した。

 本作では今後の日本社会全般について生活から政治的事象までを、各章の冒頭に貼付された未来の新聞記事という形で表し、7人の団塊世代の主人公たちの悲喜こもごもな未来を描いていく。「衰退」から「希望」へ至るストーリーは、超高齢化社会などへの根本的な改革を先送りしてきた日本社会への問いかけでもあり、あらゆる世代が考えるべきメッセージが盛り込まれている。

著者:堺屋 太一
 1935年大阪府生まれ。東京大学経済学部卒業後、通産省入省。日本万国博覧会や沖縄海洋博を企画し実現。在職中の75年『油断!』でデビュー。翌年発表した『団塊の世代』はミリオンセラーとなり「団塊の世代」の語を世に送り出し、また予測小説の分野を拓いた。’98年~’00年まで経済企画庁長官。その後も予測小説、歴史小説、経済評論など多岐にわたる分野で活躍。
第一話 さまよえる活力―2015年
第二話 年金プラス十万円——2017年
第三話 孫に会いたい! ——2020年
第四話 孫の進路——2022年
第五話 養護センターまで二千三百十六歩——2025年
第六話 電気守——2028年
推薦者コメント
宮内義彦< オリックス株式会社 シニア・チェアマン>
1964年、オリエント・リース株式会社(当時)創業メンバーの一人として日綿實業(現双日)から移籍、2000年より取締役兼代表執行役会長・グループCEOに就任。2014年6月より現職。公職としては規制改革会議長等を歴任。オリックス・バファローズのオーナー。(>>推薦書籍一覧

 1971年大学卒の同期生の男女が同じ海外旅行ツアーで偶然一緒となり、その後40余年にわたり同期会をもち、今や秋風しみる団塊の世代。これまでの浮き沈みの各々の人生が、とても淋しいかたちで終盤を迎えている。この世代の悲哀が、ずっしり伝わる。(宮内義彦)

Check Point

  • 2015年、円安は進んだが原材料や電力料金、最低賃金上昇、関税面などで不利となり、日本の輸出は伸びなかった。
  • 2020年、子や孫世代との断絶は一層大きくなる。特に、次世代に引き継ぐべきノウハウや人脈をあまり持たないサラリーマン家庭ではその傾向は強い。
  • 2025年、医療と介護と学校は猛烈な業界再編の嵐にあるが、唯一マスコミ業界だけは戦後体制を維持している。

要約ダイジェスト

 本書では一章ごと、2015年、2017年、2020年、2022年、2025年、2028年という近未来を舞台に、同じ「団塊の世代」として長い付き合いがあり、銀行、経営者、新聞記者など異なる職業についた7名の男女の生活が描かれる。

 それぞれ一見すると社会的成功をおさめているように見えるが、やがて日本社会と団塊の世代に訪れるさまざまな苦難に直面する。ここではいくつかのエピソードをダイジェストしたい。

さまよえる活力…2015年

 2015年3月、東京都心の厚生福祉会館の一室にて。1971年の大学卒業時、アメリカに旅行した際に知り合い、その後もつきあいが続く6名が集まった。

 当時、年1回は集まろうと決められたこの「加米(カナダ・アメリカ)の会」だったが、会う頻度はやがて減り、結婚や海外駐在もあって80年代には2度しか開けなかった。しかし21世紀に入り退職も間近になるにつれ、幹事に熱が戻り2,3年に1回と復活したのだった。

 談笑の中、近況報告を促すかけ声に、この歳になって、2,3年で報告するような変化もないだろうとの声があがる。メンバーの福島正男は今の日本経済の話に話題が逸れたことを確認し、ほっとした思いでいた。

 福島は3年前のこの会で、三友銀行を経て4年勤めた三友不動産管理会社を卒業し、知人の投資コンサルタント会社に常勤顧問として就職することを報告していた。同社からは銀行時代に培った人脈を期待されていた。

 しかし、長引く不況や超金融緩和で銀行の「顔」も利かず、常勤顧問になってから1年余り、結局1件の新規案件も獲れなかった。そして一昨年9月、福島は20歳程年下の社長から事務業務の担当を勧められた。年棒は約半分、通勤手当も電車の定期代のみである。

「金融緩和でインフレは進んだが、景気への波及は遅れてるよね」古田重明が一同を見回していった。古田は2013年の会合では毎朝新聞編集委員だったが、今は毎朝系の雑誌や電子版に時たまコラムを書く、といった立場だ。それでも経済に関する質問に応じる顔は輝いていた。

 福島の会社の経営者兼チーフエコノミストは、3年前から「金融緩和で物価が上昇し、円安効果で輸出が伸びる。だから早目の設備投資で確実に利益が出る」と勧めていた。福島も同じ考えだったが、必ずしもそうはなっていない。

 確かに円安は進み、3年前の最高時に比べると5割以上も円の対ドルレートは下がった。しかし

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