『エピジェネティクス―新しい生命像をえがく』
(仲野 徹/著)

 

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
近年、生命科学の分野で急速に進展する「エピジェネティクス」の最新の研究成果が明らかにされた一冊。20世紀の終わり、ヒトゲノムが解明されれば、人体についてすべてのことがわかるのではないかと期待されていた。そして2000年6月、ヒトゲノムが遂に解読される。しかし、研究が進むにつれて、生命現象の理解にはゲノム情報だけでは不十分であることがわかってきた。

ではそれ以上何を知るべきなのか。その問いに答えるための必修科目が、エピジェネティクスである。エピジェネティクスの概念とは何か、発生や病気といった生命現象の研究にどう役立つのか。従来の生命観を変えるような最新の研究成果を、専門外の人にもとっつきやすく読めるよう丁寧にひもといた良書である。

著者:仲野 徹
1957年大阪生まれ。1981年大阪大学医学部卒業、内科医としての勤務、大阪大学医学部助手、ヨーロッパ分子生物学研究所研究員、京都大学医学部講師、大阪大学微生物病研究所教授を経て、大阪大学大学院医学系研究科・生命機能研究科教授。専攻、エピジェネティクス、幹細胞学
序章 ヘップバーンと球根
第1章 巨人の肩から遠眼鏡で
第2章 エピジェネティクスの分子基盤
第3章 さまざまな生命現象とエピジェネティクス
第4章 病気とエピジェネティクス
第5章 エピジェネティクスを考える
終章 新しい生命像をえがく
推薦者コメント
haruaki deguchi出口治明< ライフネット生命保険 代表取締役会長兼CEO>
日本生命保険相互会社にてロンドン現地法人社長、国際業務部長等を歴任後、ライフネット生命保険株式会社を設立。2012年に東証マザーズへ上場。2013年より、同社代表取締役会長兼CEOに就任。(>>推薦書籍一覧

僕は、人間は何よりもまず動物だと思っているので、生物学や人間の活動を司る脳科学にとても興味がある。一昔前は、「利己的な遺伝子が全てを決めている」と言われていたが、現在では、ゲノム中心の生命観を変える生物科学の新しい概念「エピジェネティクス(後成説と遺伝学の合成語)」が最先端分野である。

つまり、遺伝の影響でもない、DNAの突然変異でもない、分子レベルのごくわずかな化学的変化が、目をみはる不可思議な現象を引き起こすのである。まさに自然の妙技と生命の神秘。

世界中のサイエンティストが熱い視線を注ぐ、いま一番ホットな話題を、本書は楽しく語ってくれる。読まない手はない。ところで、エピジェネティクスとはそもそもどういうことか。それは、本書を読んでからのお楽しみ。(出口治明)

Check Point

  • 「DNAの突然変異を伴わず、染色体の変化によって生ずる、安定的に受け継がれうる性質」が、エピジェネティクスの定義である
  • エピジェネティクスの働きは、ほ乳類のみならず、昆虫や植物はおろか、酵母など単細胞生物などにも存在する
  • 「がん」(悪性腫瘍)も、「エピジェネティック」な状態を変化させることで治療するという「エピゲノム創薬」についての研究も進み、脚光を浴びている

要約ダイジェスト

第二次世界大戦末期のオランダで

第二次世界大戦末期、オランダでは深刻な食糧不足に見舞われた。その飢餓のさなかには、妊娠している女性もたくさんいた。胎生後期に飢餓を経験した赤ちゃんは未熟児が多く、成長してからも病弱な子が多かった。

一方、胎生前期に飢餓を経験した赤ちゃんは、中・後期に成長が追いつき、概ね正常な体重で生まれてきた。しかし、飢餓から50年後の疫学的解析で、驚くべきことがわかった。

胎生前期に飢餓を経験した人は、高血圧や心筋梗塞、糖尿病などの罹患率が高かったのである。英国のある疫学者も、

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