『経済学を学ぶ』
(岩田規久男/著)

 

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  • 著者プロフィール
  • 目次

学習院大学教授(発刊当時)で、現日本銀行副総裁である経済学者、岩田規久男氏による経済学の入門編。経済学とは、私たちの社会において、さまざまな経済活動がどのように営まれ、その営まれた結果が私たちの生活にどのような影響を及ぼしているかといったことを研究する学問であると説く。
市場経済やミクロ経済、そしてマクロ経済とは何か?私たちの生活を改善するにはどうすればよいのか?といった疑問に対して、日常的な出来事を例に、経済学の考え方を分かりやすく解説している。

著者:岩田規久男
1942年生まれ。東京大学経済学部、同大学院卒業。学習院大学経済学部教授、同学部長などを経て2013年日本銀行副総裁に就任。深く確かな理論に裏づけられた、幅広く鋭い現状分析と政策提言はつねに各界の注目をあつめている。
出版:筑摩書房

第1章 経済学の考え方
第2章 市場経済とは何か
第3章 ミクロ経済学の基礎
第4章 現代企業の行動
第5章 市場と政府
第6章 マクロ経済学の基礎
第7章 マクロ経済の安定と変動
第8章 経済学の学び方
推薦者コメント
masumi sai崔 真淑< マクロエコノミスト/Good News and Companies代表>
大和証券SMBC金融証券研究所(当時)にて、資本市場分析に携わる。2012年に退職。現在は日経CNBC経済解説委員、東京証券取引所資本市場講師、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員として活躍。(>>推薦書籍一覧

経済学とは地を這う虫の目ではなく、空を舞う鳥の眼で世界を見させてくれる学門です。俯瞰した視野を持ちたい!経営を広い視点で見たい!というビジネスパーソンにおススメの一冊です。そもそも経済学とは?そもそもお金とは?そもそも為替とは?といった経済における根源的な部分から、ミクロ/マクロ経済学の基礎も学べる一冊です。

推奨読者:
経営に関する本は、沢山読んできた!!でも、いまいち世の中の大きな流れが見えてこない…経済の話も知らなきゃと思いつつも、見て見ぬふりをしてきた…なんて感じていたビジネスパーソンに読んでもらいたい一冊です。経済学初心者にも読みやすい流れになっています。読了後は視野の広がりを感じるはずでしょう。

要約ダイジェスト

経済学の考え方

ものにはなぜ価格がつくのか

経済学の重要な目的の一つに、ものやサービスの価格がどのように決まるかを明らかにすることがある。価格は、私たちの暮らしに大きな影響を及ぼすからである。では、そもそも、ものやサービスに価格がついているのはなぜだろうか。

高速道路の通行料金について考えてみると、通行料金は、支払う人にだけ高速道路の利用を限定するために存在しているといえる。同様に、鉄道の座席指定券も、座席の利用を指定券を買った人にだけ限定するために存在する。

このように、価格はものやサービスの利用を特定の人に限定するための手段の一つなのだある。

例えば、高速道路の通行料金値上げに対して「大渋滞でサービスが悪いのに通行料金を上げるのはけしからん」という意見がある。

ここで、価格がものやサービスを誰にどれだけ分配(限定)するかを決める手段の一つだということを理解していれば、大渋滞だからこそ高速道路の通行料金を引き上げる必要があることが理解できるだろう。

償還が済んだからといって高速道路を無料開放すれば、ドライバーは一層増えて、高速道路はますます渋滞するだろう。それに対して、高速道路の通行料金を引き上げれば引き上げるほど、利用者は減り、渋滞は緩和される。

他方で、一般道路は利用者を限定する機能を持たないためにますます渋滞する。このような犠牲を伴うことなく高速道路の渋滞を解決する方法のひとつは、値上げした高速道路の通行料金で、高速道路を拡幅したり、代替的な高速道路を建設することなのである。

経済学の考え方の特徴

経済学はある人の行動原理や組織・制度の存在理由を、利益の最大化に求める。この考え方を追求していくと、社会のさまざまな事象が経済学的に理解できる。

例えば、倫理や道徳も利益の最大化を追求する人々の行動の中から生まれたものとして捉えることができる。つまり、ある人がある行動をとったのは、そのような行動がその人の利益に適っていたからであり、社会は、利益に結びつく行動を倫理的にも望ましい行動だと評価するようになるのである。

また、消費者を一定の予算制約の下で効用を最大化しようとする主体ととらえると、消費者はあるものやサービスから得られる効用(利益の一種)が、それを得るための費用を上回る限り、あるものやサービスを消費しようとする存在であると表現できる。

企業の行動も同様だる。企業の目的を利潤最大化としてとらえると、企業は利潤(利益の一種)と必要な費用とを比較して、前者が後者を上回る限り、費用をかけてものやサービスを生産しようとすると表現することができる。

なお、企業の場合には、費用は、生産するために使用される資源の所有者に対する貨幣による支払いであり、貨幣価値で表現される。

このように経済主体が何であっても、利益と費用とを比較して、前者が後者を上回るように行動するというのが経済学の重要な考え方なのである。

鳥の目で見る

もう一つの経済学の考え方の重要な特徴に、地べたを這う虫の目でなく、大空を舞う烏の眼で世界を見るという点がある。

例えば、日本では200平方メートル以下の住宅地の固定資産税の評価額は、その200平方メートル以上の場合の半分に軽減されている。これは、地価が上昇しても小規模住宅地の所有者が、従来の低層住宅に住み続けられるようにするという政策的な考え方に基づく。

しかし、これは著者曰く、虫的なものの見方だ。それに対して経済学では、このような措置が採用されると、人々は固定資産税の負担を軽くしようとして、土地を200平方メートル以下に細分化して所有しようとすると考える。

そして、細分化された土地の高度利用は困難であるから、東京都のような住宅問題が厳しい都市でも二階建て程度の狭い住宅地が多くなる。その結果、後から移り住もうとする人は職場から遠く離れた所にしか住めなくなってしまうのだ。

このように経済学はある個人に有利な政策が、相互依存の網の目を通し、どのような結果を生み出すかを明らかにするための鳥瞰図的な理論を持つ。

だからこそ経済学は、虫的なものの見方になりがちな常識の誤りを正し、ある政策が誰の得になり誰の損になるかを明らかにしたり、より多くの人にとってより適切な政策を提言したりすることができるのである。

市場経済とはなにか

生産者と消費者の間で交換が行われる場(抽象的な場)が市場であり、生産物が交換される市場を生産物市場という。この市場では、「何が」「どれだけ」生産されるかが決定される。

例えば、日本では、国産の牛肉は同じタンパク質源である鶏肉や豚肉よりも高いため、消費者の国産牛肉に対する需要量は少ない。そのため、国産牛肉の生産量は鶏肉や豚肉の生産量に比べ少ない。

このように、日本でどれだけの牛肉や鶏肉や豚肉が生産されるかは、市場における生産者と消費者の交換を通じて決定される。また、生産者は同じ量の鶏肉を生産する場合に、なるべく安い費用で生産して、利益をできるだけ多くしようとするであろう。

従って、市場では、生産するための費用が最も安くなるような土地や労働サービス、飼料などの組み合わせが選択される。つまり、市場は「いかに」生産すべきかという、資源配分問題を解決する機能も持っているのである。

市場は、異なるものやサービスの価格の比率である相対価格の変化を通じて、人々や企業に希少性の相対的に高い資源を節約させ、その資源に代わり得る希少性の低い資源を利用して同じものやサービスを生産するように仕向けるのだ。

また、希少性の低い資源を新たに開発するように仕向けたりすることによって、さまざまな資源をさまざまなものとサービスの生産のために無駄なく配分する機能を持っている。

このように資源が無駄なく配分されることによって、消費者達の利益を最大にすることが可能になる。市場経済のメカニズムの重要な点は、個人や企業の自由で自発的な行為に委ねながら、資源の無駄使いを防ぐという点にもあるのだ。

ミクロ経済学とマクロ経済学

個々の経済主体や個々のものやサービスといったミクロの経済変数に着目する経済学を、ミクロ経済学という。それに対して、国民所得や労働雇用量や物価などの集計量(これをマクロ的経済変数という)の決定を扱うのがマクロ経済学である。

マクロ経済学においても、ミクロ経済学と同じように、個々の経済主体の行動の結果が集計されて、国民所得や雇用量などの集計的経済変数が導かれる。このような分析を、マクロ経済学をミクロ的に基礎づけるという。

現代の日本経済の仕組みを理解するには、ミクロ経済学とマクロ経済学の両方を理解する必要がある。

例えば、さまざまな労働サービスの賃金格差が存在するのはなぜかといった問題を考える場合には、個々の労働の質の差に注目して分析しなければならない。これはミクロ経済学的接近である。

それに対して、失業が生ずるのはなぜかといった問題を考えるためには、個々の労働の質の相違といったミクロ的側面だけでなく労働全体を集計して賃金と雇用の関係とを分析するマクロ経済学的な接近が必要である。

この意味で、ミクロ経済学とマクロ経済学とは経済の仕組みを理解する上で相互に補完し合っているのである。
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編集部コメント

このダイジェストでは特に経済学の考え方について、駆け足でご紹介させて頂いたが、本書ではミクロ経済学、マクロ経済学の基礎、市場経済、市場と政府、企業活動などが、それぞれ一章を割き、丁寧に解説されている。
200ページほどの新書版ながら非常に濃厚な内容となっており、普段なにげなく接している日常生活のほぼすべてが経済学の理論で裏付けられることに、改めて驚かれるのではないだろうか。ここではご紹介しきれなかった身近な事例とともにご一読頂ければ、教科書的な理解にとどまらない、活きた経済学が体得できるはずだ。

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