- 本書の概要
- 著者プロフィール
「里山資本主義」とは、”お金に依存しない”経済のあり方だ。その一例として、木材加工の廃材を活かしたバイオマス発電や「エコストーブ」、地域の資源を循環させたコミュニティづくりなど、過疎地で進む”世界最先端”の取り組みが紹介されている。それらは、少子高齢化、限界集落といった今後の日本が抱える課題への大きなヒントとなるはずだ。
また、本書で紹介されるオーストリアのエネルギー事情からも、原発などのエネルギー問題に悩む日本のこれからを考えるための多くの示唆が得られる。同国は少資源国にもかかわらず、原発を廃止して林業をフル活用、化石燃料に頼らないエネルギー自給を確立した。ユーロ危機からも無縁だった同国のあり方には学ぶべきところが多い。
こうした「里山資本主義」は、現代の日本が直面する巨額国債やエネルギー問題、孤独死などの社会課題をも解決する可能性を持つ。ぜひご一読頂き、その社会的インパクトを感じていただきたい。著者の一人、藻谷浩介氏は、平成合併前の約3,200市町村のすべて、海外59ヶ国を踏破し、多くの著述や講演を行う地方創生分野のキーパーソン。
著者:藻谷浩介
1964年、山口県生まれ。株式会社日本総合研究所調査部主席研究員。株式会社日本政策投資銀行特任顧問。88年東京大学法学部卒、同年日本開発銀行(現、日本政策投資銀行)入行。米国コロンビア大学ビジネススクール留学、日本経済研究所出向などを経ながら、2000年頃より地域振興の各分野で精力的に研究や著述、講演を行う。平成合併前の約3200市町村のすべて、海外59ヶ国を概ね私費で訪問した経験を持つ。
著者:NHK広島取材班(日本放送協会広島放送局)
藻谷浩介とタッグを組んで「里山資本主義」という言葉を作り、1年半にわたって取材・制作を展開。<井上恭介>報道番組チーフ・プロデューサー。リーマンショック前からモンスター化する世界経済の最前線を取材指揮。<夜久恭裕>報道番組ディレクター。医療・教育・戦争まで幅広く調査報道を手がける。著書に『原爆投下黙殺された極秘情報」(NHK出版)。
はじめに 「里山資本主義」のススメ
第1章 世界経済の最先端、中国山地―原価ゼロ円からの経済再生、地域復活
第2章 二一世紀先進国はオーストリア―ユーロ危機と無縁だった国の秘密
中国総括 「里山資本主義」の極意―マネーに依存しないサブシステム
第3章 グローバル経済からの奴隷解放―費用と人手をかけた田舎の商売の成功
第4章 “無縁社会”の克服―福祉先進国も学ぶ“過疎の町”の知恵
第5章 「マッチョな20世紀」から「しなやかな21世紀」へ―課題先進国を救う里山モデル
最終総括 「里山資本主義」で不安・不満・不信に訣別を―日本の本当の危機・少子化への解決策
おわりに 里山資本主義の爽やかな風が吹き抜ける、2060年の日本

東京大学在学中、当時最年少となる七大陸最高峰制覇を実現。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、株式会社フィールド&マウンテンを設立。東洋経済オンライン「新世代リーダー50人」選出。(>>推薦書籍一覧)
かつての常識だった「マネー資本主義」の限界を読み解き、本当の「豊かさ」とは何かを追求している。皆が感じている現在の経済原理のひずみを読み解き、これからの向かう方向性に一石を投じている。
大枠で、これまで続いてきた「マネー資本主義」の限界を感じている方は多いのではないでしょうか。かといって、一気に自給自足に戻るとも思えない。そんな中、これからの世界を作り出していこうとしている人、その中でも特に、地方から、日本を元気にしたいと考えている人にぜひ読んでもらいたい本。(山田淳)
Check Point
- 「里山資本主義」とはお金に依存しないサブシステムであり、「お金で買えるものは買えばいい、お金で買えないものも大事にする」という考え方である。
- 里山資本主義は「マネー資本主義」の下では不利とされてきた人口当たりの自然エネルギー量が大きい過疎地域にこそ、大きな可能性がある。
- 里山資本主義は「貨幣換算できない物々交換」「規模の利益への抵抗」「分業の原理への異議申し立て」といった”マネー資本主義”へのアンチテーゼを内包する。
要約ダイジェスト
サブシステムとしての「里山資本主義」のススメ
世界が豊かさを追い求め、先進国は息切れを起こす
現在の先進国では、どんどんエネルギーを使って利益を大きくすることが「豊か」とされている。しかし、世界中が同じ豊かさを追求し始めた瞬間、先進国が息切れを始めた。
こうした現状においては発想の転換、すなわち、