『カウントダウン・メルトダウン』
(船橋 洋一/著)

  • 本書の概要
  • 著者プロフィール
  • 目次
 まさに国家未曾有の危機であった福島原発事故では、何が起こっていたのか?膨大な数に上る関係者への緻密な取材と詳細なデータにもとづき、その実相を描いた一冊である。本書では東電、現場、保安院、官僚、政治家、被災地、そして米軍・米政府関係者の言動から、事故の発生から連鎖的危機の発生、そしていったんの収束に至るまでの経緯を、見事に整理し多面的に浮かび上がらせている。
 著者の船橋洋一氏は、元朝日新聞主筆にして原発事故の民間事故調査委員会「福島原発事故独立検証委員会」を設立した「日本再建イニシアティブ」の理事長を務める。本書は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。
著者:船橋 洋一
 日本を代表するジャーナリスト。歴史を動かした国際的な事件や合意の舞台裏とその歴史的意味を、各国の政権中枢にまで入り込んで描き出すという手法を得意とする。通貨交渉の舞台裏を追った『通貨烈烈』(1988年吉野作造賞)、90年代の日米同盟の質的転換を浮き彫りにした『同盟漂流』(1998年新潮学芸賞)、2000年代の朝鮮半島核危機をめぐる六カ国協議を多面的に描いた『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン』(2006年)などの著書がある。
プロローグ
序 章 全交流電源喪失
第1章 保安院検査官はなぜ逃げたか
第2章原子力緊急事態宣言
第3章 ベント
第4章 1号機水素爆発
第5章 住民避難
第6章 危機の霧
第7章 3号機水素爆発
第8章 運命の日
第9章 対策統合本部
第10章 自衛隊という「最後の砦」
第11章 放水
推薦者コメント
宮内義彦< オリックス株式会社 シニア・チェアマン>
1964年、オリエント・リース株式会社(当時)創業メンバーの一人として日綿實業(現双日)から移籍、2000年より取締役兼代表執行役会長・グループCEOに就任。2014年6月より現職。公職としては規制改革会議長等を歴任。オリックス・バファローズのオーナー。(>>推薦書籍一覧

 本書は、福島原発事故の生々しいルポルタージュである。未曾有の事故に直面して右往左往し司令塔のない中枢、縄張りにしばられ官僚的にしか動けない担当、懸命に奮闘する現場、そして結果的にはとても評価できない事故現場が残される。その後遺症は大きく、今に至るも適切な対応がとられているとは思えない。ここから覗かれるのは日本の社会システムの不安定さと大きな欠陥である。

推奨読者:
 日本の社会システムについて考えをめぐらす知識人、指導者そして学生の方々に読んでいただきたい。見えてくるのは第二次世界大戦に至る過程と変わらない日本型統治制度の問題ではないか。これをどのように変えていくのか、これからの人々の双肩にかかっている。(宮内義彦)

要約ダイジェスト紹介
 東日本大震災が引き起こした二波の津波によって、原発は全交流電源を喪失(SBO)し、炉心溶融から、1号機の水素爆発に至った。政府と各自治体の避難計画をめぐる葛藤、3号機の水素爆発がに端を発した2号機の格納容器破損、「撤退」を求める東電首脳部と「まだがんばれる」という現場とのかい離、自衛隊・機動隊・消防隊の参加…。

 本書上巻では特に有事の際の混乱や指揮命令系統の乱れ、そして意思決定に至る関係者の思惑が興味深く描かれている。本ダイジェストでは、そのいくつかをご紹介したい。(※役職は当時)

ベントはなぜ、遅れたのか

 1号機のベント(格納容器から蒸気を逃がす作業)は成功したが、決断から14時間半、政府のベント命令を受けてから7時間半、ベント作戦を始めてから4時間以上、それぞれ経っていた。ベントはなぜ、遅れたのか。

 この点を聞かれた清水正孝(東京電力社長)は、

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